本書のタイトルは「やっぱレコードもろオモロい: ヴィニジャンが知りたかった山ほどのこと」ですが、内容としては月刊「Stereo」誌上で、オーディオ/音楽ライターの田中伊佐資氏が連載している「ヴィニジャン」(ヴィニール・ジャンキーズの略)というコーナーの内容をまとめたものとなります。ヴィニールとは簡単に言えばレコードのこと。要はレコードに関する事柄であればソフト・ハードを問わず何でも取り上げていくという趣旨の連載となっています。
私はたまにStereo誌は読んでいて、このような連載があることも知ってはいましたが、正直言ってしまえばこの本を買うつもりは元々ありませんでした。では何故買ったのかといえば、5月に開催されたイベント「JICO Spring Party」が関係しています。
このイベントは機材提供を行ったTechnicsの上松氏と、JICOの「MORITA」シリーズ(木製カンチレバー採用交換針)の開発にアドバイザー的に関わっていた田中氏との対談(というか掛け合い)形式で行われたのですが、参加人数が少なかったことに加え業界人など顔なじみが多かった関係で、お互いの距離が近く、割合ざっくばらんに会話できる感じでした。
そのイベントの中でこの本が刊行されたことにも触れられ、「著者サインも希望者にはその場で入れるので是非買って下さい」とのことだったのですが、買っていく人がそれほど多くなかったこともあり、TVの取材へのコメントなどをしていて会場に遅くまで残っていた私が何となく買った方が良い感じの空気だったということで買ってきたわけです。
なお、特にサインは希望しませんでしたので入っていません。
情報量はさすが
内容としてはレコードショップ巡りもあれば、レコード盤そのものの話(プレスの違いなど)もあれば、カートリッジのマニアックな追求やターンテーブルの深掘りなど、レコードに関することはとにかく幅広く網羅されています。
ちなみに、このVMカートリッジの試聴記については、過去発売された機種の内のかなりのものを所有されている、私も普段よくお世話になっているシェルリード専門工房KS-Remastaの柄沢氏の提供により書かれているもので、試聴も柄沢氏の自宅で行っているそうです。
この記事でも明らかなのですが、田中氏とStereo編集長の吉野氏は低音がガツンとくるタイプの音が好きということで、高く評価するカートリッジが、どちらかというと透明感のある音が好みという柄沢氏とはまるで違っています。
実はJICO Spring Partyでレコード針の試聴をした際にも、田中氏が良いと評価する針と私が気に入る針が全く一致しなかったのです。その理由がこの記事を読んでよく理解できました。私にとっては田中氏が高く評価した針はどうも力押し一辺倒というイメージでしっくり来なかったのですが、根本的な嗜好がまるで違っているということなのでしょう。私はレコードであっても緻密さを重視するためMCカートリッジ好きなのですが、田中氏は力感重視でMCカートリッジよりはSHUREのMMという主義で、レコードに求めるものがまず違うのでしょう。
巻末にはレコード評のようなコーナーもありますが、ジャズがホームグラウンドの田中氏らしいセレクトです。
著者プロフィールに書かれている通り、元々音楽雑誌の編集者ということで音楽方面からオーディオに範囲を広げたという方ですので、オーディオと音楽が半々という立ち位置でスタートした私とは価値観がかなり違っていることはわかります。ただ、違った価値観の方の見方を知るというのも楽しいものですし、読み物として十分楽しめました。
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購入金額
2,500円
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購入日
2023年05月27日
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購入場所
JICO Spring Party会場
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