レビューメディア「ジグソー」

いわゆる「パンフレット」を期待すると....

宮﨑駿監督の(2023年夏)最新作「君たちはどう生きるか」。

 

徹底的な情報統制で、サギのくちばしから覗いている目が見えるポスターだけの露出で、事前のあらすじ公開なし、出演キャスト紹介無し、主題歌担当公表無しで、映画公開を迎えた作品(いやそもそも公開そのものも大々的なプロモーションがなく「ひっそり公開」だった)。

 

でもさすが宮﨑監督の10年ぶりの監督作品、高い関心を集め、初動からジブリアニメとしては最高の動員を得た。

 

ただ、ストーリーは難解で、一回観ただけでは全てを飲み込むのは不可能(と思う)。

 

こういった「難しい」映画の場合、パンフレットの解説などを見て、「なるほど~」となることも多いのだが、本作はその点も徹底しており、公開当初はパンフさえ販売されず、後日発売となるという情報漏洩防止対応(2023年7月14日映画公開、同年8月11日パンフ発売開始)。

 

...ただ、その公開4週後に発売された、君たちはどう生きるか パンフレットを見ても、あまり事態は解決しなかったのよ...

そもそも主人公でもないサギ男を前面に押し出した広告もミスリーディングを誘っている?
そもそも主人公でもないサギ男を前面に押し出したポスターもミスリーディングを誘っている?

 

表紙を含んで40ページのパンフにほとんど文字がない...

 

内容的には

・1P:表紙

・2~3P:概略&セールストーク?

・4~5P:見開き1カット絵

・6P:作品解説

・7~9P:1ページ1カット絵

・10~11P:長編企画覚書 劇場長編を造るか?

・12~13P:設定画4つ

・14~17P:1ページ1カット絵

・18~25P:見開き1カット絵

・26~31P:1ページ1カット絵

・32~35P:見開き1カット絵

・36~37P:主題歌「地球儀/米津玄師」歌詞

・38~39P:クレジット

・40P:裏表紙

という感じ(赤字部分が文字があるページ)。

 

最初の見開きの“概略&セールストーク?”の部分で、主人公眞人(マヒト)が迷い込んだあの世界のことや、サギ男の本質、大伯父の立ち位置などが語られ、映画を読み解く多少のヒントにはなる。

 

1ページ分しかない“作品解説”は、「解説」というより、ほとんどが映画の前半(つか1/3くらい?)のあらすじで、解説として「内容を説いている」部分はわずか1/4ページ分くらい。世のパンフの解説やあらすじでも、映画未鑑賞勢の興味を削がないように?「結末まで全ては語らない」というのが常套手法ではあるのだが、それにしても少なすぎる。

 

“長編企画覚書”の部分は、一度引退宣言をした宮﨑監督が復帰するにあたっての葛藤というか言い訳というかで、ごくごく初期の案についてのことと(トトロⅡのようなものも案としてはあったらしい)、後は...グチ?であって、本作に関してはほとんど語られていない。

※ただし、これを書いた2016年に、3年後(当初は3年後の2019年に公開する予定だったらしい)には戦争や大災害が起こっていて世界が変わっているかも...と考察しているのは、宮﨑監督の世の中へのアンテナ強度や時流を観る力を感じる。

 

主題歌の歌詞を除けば、あと文字がある部分はクレジットくらいで、そのクレジットもキャストに関しては、映画のエンドロールと同じく名前の列記だけであり、「牧眞人:山時聡真」というように、役名とキャスト名が結びつけられてはいないので、不親切。印象的な登場人物の場合、「あぁ、あの役は声担当が○○だったんだ」と想い出されても、あまり出番がない役や、自分にとってよく知らない役者の声は結びつかない。

 

あとの文字がない部分も、見開き分の4つの設定画以外は、映画のワンシーンの大写し(1ページ分か見開きか)だけなので、「映像資料」と考えてもわずか20カットしかない(「地球儀」の歌詞とクレジットの背景のカットを入れても22カット)。

※また、そのうち14カットは、パンフ発売の1週間後にスタジオジブリの公式ホームページで公開されたカットと同じなので、この「パンフならではのカット」は、収録カット数の1/3しかない。

主人公眞人と狂言回し役のサギ男
主人公眞人と狂言回し役のサギ男

 

当初このパンフが売り出された時に、「内容が薄い」とSNS界隈が荒れたが、それも仕方ないかという感じ。

 

いままでの宮﨑作品は、時代背景や裏の主張などを深読みすることはいくらでも出来たが、少なくとも表層のストーリーはわかりやすく、ある意味単純明快だったが、今回のは一度観たくらいでは到底ワカラン(cybercatも2回観たが、まだ消化しきれていない)。

今までのなら、ヒミとの交流はもっと深く、わかりやすい少年期との決別として描かれたと...
今までの宮﨑作品なら、ヒミとの交流は、わかりやすい少年期との決別として描かれたと...

 

そういう意味では、「君たちはどう生きるか」は、このパンフ含めて、宮﨑監督から未来へと遺す挑戦状なのかも、知れません。

そしてこの謎の物体...
そしてこの謎の物体...

 

【商品仕様】
仕様:オールカラー40P
サイズ:A4

更新: 2023/08/31
有用性

映画を「読み解く」ためには、ほぼ使えない

ただ、なんの前情報も入れずに封切り翌日に鑑賞したときに比べれば、このパンフがあれば、ごくわずかの「読み解くのに繋がるヒント」は得られる(かも)。

  • 購入金額

    820円

  • 購入日

    2023年08月16日

  • 購入場所

    イオンシネマ

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