本の蟲。
実は結構読書家で、特に若い頃は乱読しました。
ジャンル的にはSF~ファンタジー~ミステリなどからコミックまでイロイロ。
3桁では収まらない蔵書の中からトピックをご紹介していきます。
最近コミックスの買い方が変わってきている。
以前は、なにかの待合室や書店の試読冊子などで読んで好きになった漫画家を追って、深く深く掘っていき、一度も読んだこともない作品まで含めて購入し、その作家の作品フルコンプリート...というパターン(漫画家軸)が多かったが、最近は昼休みの休憩時や、顧客訪問時の駐車場到着後のアポまでの時間調整などに、いろいろなマンガ配信サイトの無料マンガを眺めていて、そこで興味を持って購入してその作品を手元に置く...という感じのものも増えてきている(作品軸)。これもそんな経緯。
「帝の至宝」。少女漫画家仲野えみこの2008~2014年の作品(特別編は2020~2021年上梓)。
いわゆる「身分違いもの」「成長系」「双方向片思い系」「片方は気づいていない系」のお話で、簡単に言うと、それと知らず若き第一皇子(後の帝)の命を救った農民の娘が、彼が帝と識った後も親交を結び、何年もかけて、幾多の困難を乗り越え、結ばれるという形の物語。
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古代の中国をイメージしたような国「晶」。その晶王朝のとある村に香蘭という娘がいた。香蘭は、税も払えない貧しい村を救うため、重税を課す国からお金になる宝物を盗みだそうと、王宮に忍びこんだが、そこである青年にであう。人目を避けるように消えた青年。王宮からは盗みをする前にたたき出された香蘭だが、翌日「忍び込んだ賊によって第一皇子が殺害された」と聞く。思い当たる節がある香蘭。山で、あのときの青年が倒れているのを見て、通報しようと考えた香蘭だが、青年が怪我をしているのを見て、看病する。
そんなとき、村に第二皇子(林哨)が来て「税を納めない村は見せしめに焼き捨てる」という。村につけられた火を、必死に消火する香蘭や村の民。そこに、香蘭が助けた青年(志季)が「自分の運命から逃げるつもりでいたけど」と出てきて、香蘭に別れを告げる。
村人の話から、第一皇子が亡くなって得をするのは林哨だけだと聞いた香蘭は、村に火をつけるような林哨なら、第一皇子を殺害するよう命じるだろうと、侵入して捕らえられた王宮でそう叫ぶ。そこに志季が出てきて、林哨を告発する。彼こそ第一皇子宗雲であった。志季は、反体制者を一掃し、帝位に就いた。
帝である志季(宗雲)と農民の娘香蘭。本来なら立場も大きく違い、交わるはずのない人生。しかし、香蘭はその後も志季と交流を続けた。
もっとも、身分を識らなかった頃とは違い、身分の差があることは自覚している。でも志季への想いが募っていく香蘭。実は背が高い志季だが、香蘭より年下。志季の方は香蘭を友人としては大切にしつつも、見た目が小さくて幼い感じで、十八歳とは見えない香蘭には恋愛感情は抱いていない(気づいてない、ともいう)模様。
その後、志季の側近で文官の円夏、武官の雨帖(うじょう)、志季にあわよくば見初められればと婚活に励む?金持ちの双子の姉妹夸白(こはく)と夸紅(ここう)、元義賊団のお頭叔豹(しゅくひょう)、占い師で香蘭を憎からず思っているらしい吏元(りげん)、隣国録の皇子で晶に留学している春玉、彼の従姉妹で皇太后(志季の母)が決めた志季の婚約者華名などが絡みつつ、微速前進で志季と香蘭の関係は進んでいく。
香蘭は妃になることは高望みだと思っているが、せめて志季の近くで役立つ存在になりたいと勉強を始めた。
なかなか自分の気持ちを整理できなかった志季だが、側近になろうと必死に勉強する香蘭に、留学を終えて録に帰る春玉を送る会で、好きだと告げ、妃になってくれないかと乞う。
ようやく収まるべきところに収まりかけたときに、隣国録が戦を仕掛けてくる。これはかつて志季を亡きものとしようとした第二皇子林哨が、晶の一部の兵を連れて寝返り、志季には攻撃しづらい春玉を旗頭にして現録王(東春)が仕掛けてきたもの。
かつて自分が林哨の助命を願ったため、回り回って志季にとって仇なすことになってしまったと感じた香蘭は、直前に再会した自分を捨てた母親から聞かされた占いの結果もあって(母親は香蘭が生まれた直後、「大きくなったこの子は きっとこの国を滅ぼすだろう」と易者に告げられ、香蘭を捨てた)、「自分は妃にふさわしくない」と考え、「お妃さまになんてなれない」と告げて去ってしまう。香蘭を巻き込まないため、それを受け入れて戦いに臨む志季だが、準備不足で劣勢は否めない。その後、香蘭が戻って元気が出た?志季は林哨と東春の間隙を突き、香蘭が春玉を説得し、講和の座を設けるところまでこぎ着けた。
ただ、その講和の場で東春の出した停戦の条件とは、互いに人質を出し合うこと。そして、晶の内情を識る録側は香蘭を人質に指名してきた。
元々戦には強い志季なので、本気で戦うと勝てはするだろうが、兵は損耗し、国土は荒廃し、他国につけいる隙を与えることになる。それを案じた円夏から、人質に立ってくれないかと懇願された香蘭は、自らいつ帰れるとも、生きて帰れるともしれぬ人質に立つことを申し出る...
「あたしはずっと待っていたんだ 胸を張って志季の役に立てる時を」
「だって なんかこんなのって」
「志季のお妃さまみたいでしょ」
香蘭の想いは通じるのか、志季と香蘭の愛の行方は...
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という感じのストーリー。香蘭のけなげさに打たれる物語。
もともとこのマンガ、本編の方は電子で全話無料公開されているもの(無料で1日に読める話数には制限あり)。ただ、中古とは言うものの、手元に紙で置きたいと思ったのは、円夏から、人質に立つことを乞われた香蘭が、「人質になったら いつくらいに帰ってこられるの・・・?」「志季とか じっちゃんにまた会える?」と問うた問いに、円夏が伏したまま無言で応えられずにいると、察した香蘭が、「・・・・だめかぁ」というカットが、あまりに切なく、愛しくて。
数年おいて描かれた特別編は、後日譚。
王道かつ定番の?志季と香蘭の主役カプの「その後」以外も、互いに素直になれない叔豹と夸白、カップルと言うより従者??と主人の関係の吏元と夸紅、そして収まるべきところに収まった春玉×華名と、全てのメインキャラ~準メインキャラたちのその後を描ききっているのは収まりが良い感じ(1話まるまるつかって後日譚を描いているのは、叔豹×夸白だけだが)。
夸白と夸紅は、単なるザコライバルキャラかと思ったが、それぞれの決着まで描ききられている
叔豹と夸白は「仮面夫婦」なんて言っているが、なんだかんだいいカップルだな
特別編は、話によっては、執筆が本編からみると結構後なので、少々絵が変わっている部分もあるけれど...
意外性はあまりない、王道ストーリーだけど、収まりが良いので安心して読める作品。本編の方は無料で読めるので、ぜひ。
王道ストーリー。収まるべきところに収まる。
特別編でサブキャラたちも、そうだったことが判る安心感。
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購入金額
1,250円
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購入日
2022年頃
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購入場所
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