前々回に掲載したKS-Stage221EVO.Iの上位仕様となる製品です。
使われている素材はKS-RemastaオリジナルのEVO.Iハンダも含めて全く同一で、鏡面加工のランクがStage2→Stage3となることだけが違いとなります。
KS-Stage221EVO.Iのレビューを掲載した後、KS-Remasta主宰の柄沢さんから連絡をいただいたのですが、従来のKS-Stageシリーズでは、例えばStage1の鏡面度をより上げていけば、上位ランクであるStage2の製品が出来ていたのだそうです。しかし、第2世代のStageシリーズでは、そもそも鏡面加工のスタートの段階から違いがあるため、下位製品の仕上げをより高めても上位製品とイコールにはならないのだそうです。
そしてこのスタート段階の違いによって、前世代のStageシリーズよりも明確に音の違いを表現することが出来るようになったとのことでした。実際に同じStage1同士で比較しても、第1世代のKS-Stage101EVO.Iと、第2世代のKS-Stage121EVO.1との間には、同ランクとは思えないほど明らかな差があります。
それを踏まえた上で、これまで取り上げた製品よりも上位に位置付けられている、KS-Stage321EVO.Iを聴いてみることにしましょう。
私が現在audio-technica AT-ART7に組み合わせている、前世代のKS-Stage301EVO.IIと同じく、ヘッドシェル側のリードピンの皮膜が赤くなっています。
今回の試聴では、カートリッジはGoldring Elite、ヘッドシェルはaudio-technica AT-LH18/OCCで固定されるので、その組み合わせに装着してみましょう。
例によって少々手こずりながら(あくまで感覚的に手こずっているだけで、時間は10分もかかっていないと思います)装着しました。この組み合わせはピッチに余裕がない状態での上下左右クロス結線ですので、ピンが折れないかヒヤヒヤしながらの作業となりますので…。
第1世代よりも洗練された感が
それでは音質を確認してみましょう。当然ながらTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200の組み合わせで聴きます。ソースもこれまで通り「Babylon Sisters / Steely Dan」「Runaway Dancer / Champlin Williams Friestedt」「10 Miles / Champlin Williams Friestedt」を使います。
まずは「Babylon Sisters / Steely Dan」からです。冒頭のバスドラムやベースの音で、低域の量はKS-Stage221EVO.Iとさほど変わらないものの、より沈み込みが深くなり、ベースの質感が向上していることがわかります。
先代のKS-Stage301EVO.IIでも低域方向の表現は充実していたのですが、強いて言えば音場の見通しが少しだけ曇る印象がありました。あくまで強いて言えばというレベルでしかありませんが。しかし、KS-Stage321EVO.Iでは見通しはスッキリして間接音も豊かに表現されます。
高域方向は純度が上がり付帯音が取れたのでしょう。ハイハットの音色の濁りが減りました。ただ、付帯音がある程度取れた弊害なのでしょうか。少しだけ高域方向が地味に感じられるようになりました。
ドナルド・フェイゲンのヴォーカルはやや柔らかめで張りが少なく感じられますが、低音部を歌っているときの生っぽさが出てくるのはなかなか魅力的です。
次に「Runaway Dancer / Champlin Williams Friestedt」ですが、これを聴くと「Babylon Sisters」で感じられた高域方向の変化がわかりやすく実感できます。透明度というか純度は向上している代わりに量が少し減ったように感じられると言うことです。ビル・チャンプリンの声はKS-Stage221EVO.Iよりももう一歩生っぽさが出てきます。
「10 Miles / Champlin Williams Friestedt」では、低域~中低域にかけてのふくよかさが良い方向に作用して、濃厚な音場を構築してくれます。ベースラインはより明瞭となる一方、やはり高域方向は少しだけおとなしめに感じられます。この曲の雰囲気にはKS-Stage221EVO.Iよりも明らかにKS-Stage321EVO.Iの方が合っています。
先代のKS-Stage301EVO.IIも基本的な傾向は近いのですが、少し甘さが出る部分があり、ヴォーカルの口が少し大きかったりしたのですが、KS-Stage321EVO.Iではその傾向は押さえられています。より上位と比較すればまだ多少その傾向は残っているかも知れませんが、先代よりは進化が見られると言うことです。
結論として、基本的な傾向そのものは先代のKS-Stage301シリーズに近い傾向は示すものの、オーディオ的な性能が1ランク向上しているのでしょう。結果として先代の弱点がかなり解消されたという印象を持ちました。
当然組み合わせるカートリッジ次第ではありますが、アナログ的な芳醇さを感じさせつつオーディオ的な性能も保たれているということで、アナログのオールドファンにもあまり抵抗が感じられない音にまとめられているのではないかと思います。
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購入金額
38,500円
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購入日
2022年05月03日
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購入場所
KS-Remasta
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