レビューメディア「ジグソー」

EVO.IIハンダらしい鮮度の高さ

前回取り上げたKS-Stage221EVO.Iから、鏡面加工のレベルも含めて全く同じで、リードチップと接合するハンダだけをKS-RemastaオリジナルハンダEVO.IからEVO.IIへと変更したモデルです。これも以前Goldring ELITEとの組み合わせで試聴機を聴かせていただきましたが、今回はaudio-technica AT-OC9ML/IIとの組み合わせになりますので、以前とは印象が異なる可能性があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回のKS-Stage221EVO.Iとの違いは前述の通り、使われているハンダの差だけですし、その差もグレード差というわけでは無く音の傾向の差が出るだけですから、価格は27,500円(税込)で同じとなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この辺りは時間が無くあまり見栄えを整える余裕はありませんでしたが、装着作業自体はスムーズに進むようになっています。

更新: 2023/10/15
総評

ありのままを聴かせるか、美味しいところを聴かせるか

試聴楽曲は全モデル共通で以下の3曲です。

 

 

・Together We Run / Journey (LP「FREEDOM」収録)

 

 

 

 

 

 

・Like Someone In Love / Diana Krall(LP「Turn Up The Quiet」収録)

 

 

 

 

 

 

 

 

・Born For This Moment / Chicago (LP「Born For This Moment」収録)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず「Together We Run」を聴きましたが、音を聴いてKS-Stage221EVO.Iとハンダ以外は全く同じ素材や加工で作られていると言い当てるのは困難と思われる程度に音は違います。

 

アーネル・ピネダのヴォーカルの美味しいところにスポットを当てて良さを全面的に引き出すのがEVO.Iだとすれば、弱点も含めてありのままさらけ出させるのがEVO.IIといえば良いでしょうか。ブレスや擦過音など、ノイズとみるべき成分に至るまで、より緻密に描写して見せたのはKS-Stage221EVO.IIの方でした。声の良い部分を引き出しているKS-Stage221EVO.Iと比較すると、KS-Stage221EVO.Iの方が歌は上手く聞こえます。KS-Stage221EVO.IIの方の音はマイクを通じて入ってきた音は、必要ない部分までも克明に描写して見せているような感覚です。オーディオとして正確さを求めるのであればKS-Stage221EVO.IIの方が優れていると評すことは出来るでしょう。

 

サビ部分で間接音も含めて豊かに再現されるのはKS-Stage221EVO.Iで、全ての楽器やコーラスに至るまで、直接音重視で微細に描きだしたのはKS-Stage221EVO.IIです。これはどちらが良いとか悪いとか、そう単純に決められる違いでは無く、人によってどちらを好ましいと思うかはクッキリ割れるでしょう。

 

次に「Like Someone In Love」ですが、これはダイアナ・クラールの声やベースの音の違いが特にわかりやすいでしょう。KS-Stage221EVO.IIでは、KS-Stage221EVO.I比で声がハスキーになり、子音が強く表現されます。ただ、ベースは弦を弾くタッチと弦の震え、胴鳴りとそれぞれの部分が完全には溶け合わず、それぞれが存在していることが聴き取れます。間奏部分のアコースティックギターに至っては、弦と胴鳴りの出所が明確に違って聞こえるほどに誤魔化しがありません。素晴らしい描写力ではありますが、音楽として楽しむには少し描写が緻密すぎるのかも知れません。ゆったりと歌に浸れるのはKS-Stage221EVO.Iの方だと思います。音楽と対峙するのか、音楽に浸るのかという違いです。

 

「Born For This Moment」はニール・ドネルの声がKS-Stage221EVO.Iよりは細身に感じられます。バックのホーンやストリングス風のシンセ音はKS-Stage221EVO.IIの方が鮮明に描かれ、一瞬そちらを見てしまうようなリアリティがあります。ただ、リード・ヴォーカルが細身になってしまうことで、この曲の曲調とは少しミスマッチ感があります。この曲に関してはKS-Stage221EVO.Iの音の方に魅力を感じました。

 

 

以前も書きましたが、私は第一世代のStageシリーズで使う限り、ハンダはEVO.IIの方が一枚上手という印象を受けていたのです。しかし第二世代Stageシリーズになってからは完全に方向性の違いだけであることが判りました。ポータブルオーディオユーザーのいう高音質はEVO.IIの方の傾向が多いのですが、この方向性は行き過ぎてしまうと木を見て森を見ずといえば良いのか、音楽を1つの曲として楽しむにはあまりに緻密すぎる場合もあるようです。少なくとも今回の試聴楽曲では少し行き過ぎた細かさかなと感じた部分もあります。

 

恐らく海外製の少し緩めのカートリッジと組み合わせたときに、この描写の緻密さとのバランスが取れるのかも知れませんが、元々の音が緻密なAT-OC9ML/IIでは持ち味が被ってしまい行き過ぎた描写となってしまった可能性があります。

 

結論としては以前の試聴と変わらず。KS-Stage221シリーズであれば、普段はEVO.II派の私でもEVO.Iを買ってしまいそうです。

  • 購入金額

    27,500円

  • 購入日

    2023年10月13日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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