実は少し前に、英国Goldring製MCカートリッジ、Eliteを入手していました。勿論中古ですが。
購入時点ではMy Sonic Lab製のヘッドシェル、SH-1Rhと、この製品の標準添付品であるシェルリード線MR-1Rhが組み合わされていたのですが、中高域の癖が気になりレンジも狭めで、クラシックファンを中心に絶賛されているGoldring製カートリッジにしてはあまり優美さのような要素が感じられませんでした。
そこでシェルリード線を丁度使っていなかったKS-Remasta製KS-LW-1500EVO.IIへと交換してみたところ、レンジの狭さは解消されたのですが、妙にテンションが高い派手な音となってしまい、これも組み合わせとしてはあまり良くなさそうということで、新たにシェルリード線を仕入れようと考えました。
Goldring Eliteは純銀コイルを採用したカートリッジ、フォノケーブル代わりに使っているRCAケーブルのaudioquest Cheetahも純銀線ということで、音色の統一を図るには銀線が良いかと考え、以前試聴したことがあるKS-Stage102EVO.II辺りを試してみようと思い、KS-Remastaさんに試聴機をお借りすることにしました。
その際に他に聴いた方が良さそうなものがあればいくつか同梱しておいて欲しいとリクエストしたところ、正式発売前の製品を含んだ試聴機が一気に送られてきました。
今回はKS-Stage102EVO.IIと同等グレードとなる新製品、KS-Stage121EVO.Iを試してみることにしましょう。
以前も取り上げましたが、この型番の意味を改めて読み取ってみましょう。
KS=Karasawa Shingo
Stage=導体表面を鏡面仕上げ
100=鏡面仕上げのランク
20=鏡面加工手法の世代。20は第二世代を意味する
1=海外製高純度OFC(無酸素銅 0.6㎟単線)
EVO.I =KS-Remasta 特製半田の1つ
つまり、以前試聴したKS-Stage101EVO.IIと比べると、導体部分は全く同じ(鏡面加工無しのKS-LW-1800EVO.IIとも全く同じ)で、鏡面加工の技術とハンダの性格だけが異なるということになります。
試聴に際して、着脱のしやすさを考慮してEliteと組み合わせるヘッドシェルをaudio-technica AT-LH18/OCCに交換しています。
なお、Eliteはターミナルピンの配列の都合で、ヘッドシェルに対してシェルリード線の結線が上下左右でクロスするという、最も面倒なものとなります。何とか取り付けてはいますが、かなり難易度は高い作業になってしまいます。
磨き方だけで明確に音が変わるという奥深さを実感する
それではいつも通りのTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200という環境で試聴します。
なお、今回の試聴では、ソースは「Babylon Sisters / Steely Dan」(LP「Gaucho」収録)と、LP「CWF II / Champlin Williams Friestedt」収録の「Runaway Dancer」「10Miles」に固定します。
また、基準として私がリクエストしたKS-Stage102EVO.IIの再生音を用います。
まず、「Babylon Sisters」で聴き比べると、印象的なのは音場の上下方向の広さが変わるということでした。KS-Stage102EVO.IIはKS-Stage121EVO.Iよりも平面的に感じられ、KS-Stage121EVO.Iではエコー成分が空間の上の方まで拡がっていくことが感じられるようになります。
冒頭のバスドラムについても、KS-Stage121EVO.Iの方が叩いた瞬間の部分でより低い方まで再現されていることがわかりますし、ハイハットも少し丸まって感じられるKS-Stage102EVO.IIに対して、きちんと金属的な質が表現されます。
KS-Remasta独自のハンダの性質上、KS-Stage102EVO.IIに使われているEVO.IIハンダの方が、KS-Stage121EVO.Iに使われているEVO.Iハンダよりも音の立ち上がり部分の再現性に優れているはずなのですが、EVO.IハンダのKS-Stage121EVO.Iがそれらの要素で上回ってきたというのは興味深い結果です。導体そのものの差は意外と大きく付いているのかも知れないと思わされます。当然KS-Stage102EVO.IIの銀線は、KS-Stage121EVO.IのOFC単線よりは硬質な表現はしにくい部分はあるのですが。
こう書いているとKS-Stage102EVO.IIの性能が不足しているように感じられてしまうかもしれませんが、KS-Stage102EVO.IIは価格に対しては十分に優秀な製品ですし、初めて使ったときにはその良さにむしろ感心した程でした。それだけに、磨き処理の改良だけでそのKS-Stage102EVO.IIを確実に上回ってきたKS-Stage121EVO.Iには驚かざるを得ないわけです。
Goldring Eliteとの組み合わせという観点では、事前に予想していた通り銀線で統一することによる音色の良さはやはり感じられたのですが、オーディオ的な性能でKS-Stage121EVO.Iが優位に立ちました。KS-Stage121EVO.Iでは、PC-Triple C単線を採用するKS-LW-1500EVO.IIのような妙なテンションの高さもなくこれで十分良いのでは、と思ってしまうだけの音を聴かせてくれました。
とはいえ、より上位の製品を聴いてしまうと、その考えはもろくも崩れ去るわけですが…。
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購入金額
16,500円
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購入日
2022年05月03日
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購入場所
KS-Remasta
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