実はアナログオーディオ関連で重大なニュースがありました。1986年のPCOCC発表のしばらく後(1987年頃?)から、シェルリード線の世界で35年近くにわたって定番商品であり続けたaudio-technica AT6101がついに生産完了となってしまったのです。
恐らくシェルリード線をグレードアップするという行為の経験がある人であれば、まず一度はこの定番商品を使ったことがあるはずです。実売価格が3桁価格という良心的な設定でありながら、普及価格帯のカートリッジやヘッドシェルに添付されている標準品と交換すればそれなりに音質の向上が見込めるという、実力の確かさが幅広く支持を集めていました。
しかし使われている素材のPCOCCが2013年で製造を打ち切られ、その後はその時点で確保していた素材を使い製造を続けていたようですが、ついにそれも限界が来てしまったということでしょう。約35年にわたって値上げすること無く最後まで供給し続けてくれたオーディオテクニカさんには深く敬意を表しますが、現実問題としてこれでシェルリード線は最低でも実売価格3千円台というジャンルの製品となってしまったということになります。
当のオーディオテクニカ製シェルリード線としては、2018年に発売された6N-OFC採用のAT6108が現在も製品ラインナップ上には残されていますが、これも実売価格は4千円台となります。
さて、私自身はまだAT6101またはその相当品は未使用で何セットか残していますが、近年はもう少し上のグレードの製品を使うようになってきていました。シェルリード線を専門に扱うKS-Remasta製品が中心ですが…。
しかしオーディオテクニカの現行製品であるAT6108はこれまで使ったことが無く、今後はこれがスタンダードクラスとなるということで、実力を確かめたいと思っていました。そこでたまたま見かけた未使用品3個セットがなかなか割安であったため、これを購入してみたわけです。
オーソドックスな高純度無酸素銅である6N-OFCを採用していて、素材としてだけ見ればPCOCCよりも落ちるように見えてしまいますが、芯線の数や絶縁体の素材など随所に進歩が見られる内容ではあります。
AT6101よりは確実に進歩しているが…
今回は今までAT6101を組み合わせていたMCカートリッジ、YAMAHA MC-4のシェルリード線をAT6108に入れ替え、その前後で音質の差を比べてみることにします。
KS-Remasta製のシェルリード線よりは全長が短いのですが、単にクロス結線するだけでは持て余す長さはあるため、軽く輪を作るように結線しています。リードチップのスムーズさなどはさすがに大手老舗らしいところで、取り付けの容易さはトップレベルでしょう。
AT6101と比較すると、楽器のタッチした瞬間の部分がクッキリと描写されていることが判り、音場の見通しもなかなか良好です。もっとも標準価格で約5倍の価格差があることを考えれば、当然その程度無ければ困るという程度の差です。低域の力感もAT6108の方が数段上で、ベースラインの躍動感などもある程度しっかりと描写されています。レンジ感もワンランク程度は差が付いているでしょうか。
ただ、実売価格4千円台のシェルリード線として、AT6108を手放しに評価できるかといわれれば、そうとも言い切れません。
カートリッジがYAMAHA MC-4ということもあるのですが、どうにも気になるのはヴォーカルものの表現であり、歌が少々淡泊に感じられてしまうのです。アナログらしい生気がやや不足しているというべきでしょうか。私がアナログに求めるのはこの部分であり、オーディオ的に整っているとはいえ少々不満はどうしても感じられました。
今となってはシェルリード線の実売価格は3千円台が下限ですから、それを踏まえた上で実売価格4千円台として満たすべき水準は十分にクリアしています。しかし、AT6101比で約5倍の価格が付いているとなると、どうしても評価はやや辛くならざるを得ません。
まだ手元には未開封のAT6108は2つ残っているわけですが、先日東京に出向いた際にKS-Remasta KS-LW-9500EVO.IIをもう1セット買い足してしまいました。比較的低価格なカートリッジと組み合わせるのであればAT6108も悪くは無いのですが、ある程度良いカートリッジを使うのであれば少々厳しいかなという印象を受けました。
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購入金額
1,833円
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購入日
2021年12月12日
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購入場所
HARD OFF
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