所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。永い活動歴を持ち、現状では高い支持をうけるアーティストも、デビューした瞬間から爆発的な人気を獲得するとは限りません。活動中に、一気に人気が爆発するポイントがあり、その後のポジションを獲得していくことの方が多いはずです。その「人気のバロメーター」、以前はCD(やレコード)の売り上げ枚数で測られましたが、現在のような動画サイト全盛の時期には、動画の再生回数でもあったりもします。公開後数日で「殿堂入り」を果たし、あるアーティストにとって、現在の人気を確立する出発点となった作品をご紹介します。
GYARI(ココアシガレットP)。2008年から活動するボカロP。長い活動歴の中では何度か路線変更しているが、ボーカロイド関係のオリジナルストーリーをバックボーンとした、オリジナル楽曲路線への変更が、前作“月光ステージ”
だとすると、今作“Moonlight Stage - JAZZ SAMBA REMIX -”は、よりジャズ寄りの楽曲への路線変更。それまでの「ジャズテイストのポップス」という感じの作風から、このあと当面続く「ボカロジャズ」へと明確に変化した作品(少々ロック調リズムなどの遊びはあるがw)。
曲としては前作“月光ステージ”と同じものなのだが、全く風合いが違う。
「NicoNico Jiho Jazz」は、ドラムのキメから始まる1分ほどの長さの小品だが、ハイスピードユニゾンも挟まれた気合いの入ったジャズアレンジのニコニコ時報(いや、最後の部分でやっとそうだとわかるにすぎないほど崩されているのだけれど)。かなりキメキメのプレイで、ジャズ!というのが前面に押し出されていて、期待を高める。
「Moonlight Stage - JAZZ SAMBA REMIX -」は、元曲「月光ステージ」の3倍ほどに引き延ばされている。曲名は「SAMBA」となっているが、前半はむしろ「Bossa Nova」というイメージ。導入部はフリーリズムで、流麗でジャジィなピアノが聴ける。全体的に緩やかなテンポになっていて、ピアノソロもなが~い!!1コーラス目のAメロ途中からベースが、サビからドラムスが加わるが、スリーツーのリズムでクローズドリムショットが刻まれる小粋な曲調。全体の1/3程終わったあたり、ピアノソロが激してくると、KAITOアニィもやる気になり?バックビートが強めのリズムアレンジになるが、それでもハイハットクローズで2、4を踏み続けるなど、ジャズの範疇にとどまっている。高速ランニングベースが気持ちよい。途中で突然エレピソロが入るが、これも小粋。♪ウルトラソウル♪でキメたあとは、ベースソロと、ドラムスソロ。最後1コーラスだけ8ビートのロック調になって原曲っぼくなるのずるい。
「Moonlight Stage - PIANO DUO -」はサビを中心とした、ピアノオンリーの小曲だが、連弾風にしてあるのがポイント。リンとレンが弾いている設定だろうが、生ピとエレピの「合わせ」ではなくて、音域的に並んで弾いている感じにしているのが「来る」なー。これがなぜ「来る」かが動画を観ないと完全には理解できないのが、少々ストーリーとしては...だけれども。
実は、GYARIの人気に火が点いたのはこの曲(「Moonlight Stage - JAZZ SAMBA REMIX -」=投稿名「ボーカロイドたちがオリジナル曲をセッションしたようです」)から。カバー曲(「夏影」や「YOU」など)ではソコソコの再生数があったものの、オリジナルの「evening glow」や、前作「月光ステージ」ではランク外だったGYARI。それが、前作にジャズ「リ」アリンジを施すことで、数日で殿堂入り、つられて以前発表した数曲も殿堂入りを果たすという快挙を成し遂げた。
つまり、このあとずっと続くGYARIの作風、「ジャズ系ボカロ曲」「長い曲でシカケが多い」「前半と後半では結構曲調が違う」というあたりの「GYARIの作風方程式」はこの作品でできたと言っても過言ではない。
そういう意味では、人気ボカロPの「その後」を決定づける重要な作品だったと感じます。
【収録曲】
1. NicoNico Jiho Jazz
2. Moonlight Stage - JAZZ SAMBA REMIX -
3. Moonlight Stage - PIANO DUO -
4. Moonlight Stage - JAZZ SAMBA REMIX - off vocal
「Moonlight Stage - JAZZ SAMBA REMIX -」
これは、最近になってGYARIを識った人でも充分受け入れられる
最近の曲風の出発点がここにある
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購入金額
1,500円
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購入日
2018年01月20日
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購入場所
駿河屋
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