所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。同人CD。アナログ時代、バンドなどの演奏を他者に配布するには、カセットテープがせいぜいで、頑張ってソノシートという状態。そんな「他者に音楽を聴いてもらう」のに苦労していた時代が、デジタル化されて大きく変わりました。CDという配布形式。特に家で自作できるCD-Rは同人クリエイターにとって福音でした。そんなCD-Rから始まったクリエイターの「ほぼ」原点の作品をご紹介します。
GYARI(ココアシガレットP)。2008年から活動するボカロP。現時点から過去に向けて俯瞰すると、彼の活動歴には何度か路線変更(路線追加)がある。
ボーカロイドである鏡音リンをメインに据えて、初音ミク、KAITOのトリオ、後に鏡音レンを加えたメンバーでジャズアレンジのゲーム音楽やオリジナル、そのバンド?にまつわる設定を描いた漫画などを創作した時期。
さらに、巡音ルカやGUMI、結月ゆかりを音楽に加え、ストーリーにはMEIKOを加えて、動画にも力を入れた長い曲をリリースした時期。
ボーカロイドではなく、「ボイスロイド」を歌わせるというスタンスで活動した時期。
そして現在はVTuberのプロデュースに力点を置いており、時勢柄かもしれないが、自身の演奏・マニピュレーションによる作品発表はスローダウンしている。
自分は彼を識ったのは比較的遅く、2015年頃なのだが、それまで主にコミケなどでの手売りしかないと思っていた作品が、2017年に委託店で入手できた
ことを起点として、それから3年強で「ほぼ」コンプリートまで行けたので、それらを時系列順にご紹介する。
まず、彼の最初期作に近い“VOCALOID TRIO ACT2”。
2008年のComicMarket74で頒布された作品で、その数ヶ月前に頒布された“VOCALOID TRIO”のリメイク盤らしい。その“VOCALOID TRIO”はHPの情報でも「手焼きAUDIO DISK」とされており、ごく少数の頒布だったのだと思われ、これはザンネンながら入手できていない。
“VOCALOID TRIO ACT2”は、再プレスではなく「リメイク」ということなので、「なにか」は変わっているのだろうが、情報が少なく、「どこ」が変わったのか判然としない。ただ“無印”の5曲に加えて「ピアノ小曲1曲」が加わっているので、少なくとも「そこ」は違う勘定。あと、古いサイト記載に「ニコニコ動画の音はACT1です」との記載が見える曲もあるので、音色や発音を変えているのかもしれない。
一方、造りはやはり「手焼きAUDIO DISK」であることは同様で、歌詞カードはあきらかにプリンター出力。レーベル面も無地CD-Rにプリンター印刷したもの。
実際には、鏡音リンをボーカロイドとして使い、バックはGYARIが造っているのだが(鍵盤は彼の手弾きも入っていると思う)、世界観としては、
ヴォーカル、ピアノ:鏡音リン
ベース:初音ミク
ドラムス:KAITO
...からなるジャズトリオで、ゲーム音楽やオリジナルを演奏する、というてい。
「夏影 Vocaloid JAZZ version」。彼のニコ動初投稿となった作品。クリプトン・フューチャー・メディアのボーカロイドとしては第二世代、キャラクター・ボーカル・シリーズの中では第二弾、「CV02:鏡音リン・レン」のうち、鏡音リンがGYARIのお気に入りらしく、当初は彼女ばかり使っていた。リン(特に初代)は、かなり使いこなしが難しいボーカロイドとして有名だったが、そこが気に入っていたのかもしれない。ミクに比べると中性的で、やや丸めの声で、18禁恋愛アドベンチャーゲーム「AIR」の主題歌「夏影」のジャズアレンジが歌われ、演奏される。中間部のピアノソロもジャジィでいい感じ。
「ボーカロイドたちがひぐらしのYOUをセッションしたようです」も、名作同人サウンドノベル「ひぐらしのなく頃に」の第二作「ひぐらしのなく頃に解」のサウンドトラック「YOU」のジャズセッション風アレンジ。10分弱の大作で、このころからGYARIの大作指向が...?当初リンのヴォーカルとピアノだけの弾き語りだが、途中で、ミク(ベースとコーラス)が加わり、曲も半分を過ぎたあたりでKAITOアニィのドラムスが加わる。このシリーズでの、KAITOへのザツな扱いが最初っからとわかって草w
「別離の記憶 piano solo ver」は、3曲目に収められたGYARIのオリジナル「別離の記憶」の歌なしのヴァージョン。単なるカラオケ(メロディピアノなぞり)ではなく、全く違うアレンジになっていて、オリジナルのブラシのドラムやベースも入ったやや暗めの印象のしっとりした曲から、激しめのピアノソロになっていて、そこにもグッと来る。
まだ粗い感じは否めないが、ジャズアプローチのゲーム系音楽として良質な同人CD。このあとGYARIはドンドンクオリティを上げていくので(楽曲的にも機材的にも製品的にも)、「同人臭さ」が濃厚な貴重な作品。
現在では、「インスト曲で初めてニコ動ミリオン達成した」Pとして識られるGYARIにも、「最初」はあった、と感じられる作品です。
【収録曲】
1. evening glow
2. 夏影 Vocaloid JAZZ version
3. 別離の記憶
4. Freemans World
5. ボーカロイドたちがひぐらしのYOUをセッションしたようです
6. 別離の記憶 piano solo ver
「夏影 Vocaloid JAZZ version」
ピアノプレイなどはまだ粗いが世界観が素晴らしい
リン+ミク+KAITOのトリオ、性格付けもすでにできあがっている。
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購入金額
630円
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購入日
2017年05月18日
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購入場所
駿河屋
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