昨年12月に、オーディオケーブルメーカー、WAGNUS.のオフラインイベント「NU-FEST 2020」が開催されたのですが、その日に合わせてオンラインでもその日限定オーダーの製品がいくつか用意されました。
高級な稀少線材を用いたものは抽選販売、部材が十分に用意されているものはその日1日オーダーを受け付けるという形でしたが、私のような庶民に抽選販売の製品は到底手が届きません。そこで限定となっていない製品を眺めていたのですが、その中に見覚えのあるケーブルを見つけました。それは、Noble Audio製のカスタムIEM、KHAN Cがリリースされた際に、先着20名限定でバンドルされたという「Petit NEUTRON Lily」です。
元々「Lily」いう名前が付いている製品は、WAGNUS.製イヤフォンリケーブルの中ではローエンドという扱いになります。私が持っているWAGNUS.製リケーブルは、1つを除きいずれもこのLilyシリーズの製品です。
そのLilyシリーズの中で、他よりも1グレード上がった実力(価格も上がりますが)の持ち主といえるのが、「Crystal Lily」という製品でした。私もCrystal Lilyは何度か試聴させていただいていて、特に64AUDIO U4と組み合わせて他のLilyシリーズや同価格帯の製品よりも明らかに良いという感触を得ていました。U4のような癖の強いイヤフォンで、ある程度きちんとマッチするケーブルは3万円以下クラスでは現用のBrise Audio STR7-Stdか、Crystal Lilyしか無いと思っていたほどです。
もちろんそれ以外のイヤフォンとの組み合わせでも魅力のある音は出ていましたので、そのうちCrystal Lilyは入手しようと考えていたのです。
しかし、ここでPetit NEUTRON Lilyの説明を読んでいると、以下のように書かれていることに気付きました。
真にコストパフォーマンスに優れたLilyシリーズのトップエンドクラスとして、最新技術NU-1導入による開発を行った特別モデル「Petit NEUTRON Lily(プチニュートロンリリー)」が、NU-FESTオンラインに12/19期間限定で登場!
その販売実績や評価からも、今やWAGNUS.ハイクラスケーブルの代名詞として確固たるポジションを獲得しつつあるNU-1初導入のニューエイジモデル「NEUTRON」をヒントに、Lilyシリーズ上位モデル「Crystal Lily」の開発理念(従来のLilyシリーズよりもワンランク上のサウンドコンセプト)を落とし込み作り上げ、さらにもうワンランク押し上げる事に成功したのが本作です。
全体としてNU-1技術を生かしたダイレクトでレベルの高いニュートラルバランスでありつつも、非常に細身ながら余裕とコシ感のある中音域が「大人なサウンド」をも演出するパワフルな自信作となっています。
ネーミングや見た目からNEUTRONの弟機的な位置付けに一見思われるかもしれませんが、決してそれだけに収まらない器の、これまでのLilyシリーズとは一線を画すケーブルに仕上がっています。
(以上 https://www.wagnus.jp/blank-1/petit-neutron-lily より引用)
私が高く評価しているCrystal Lilyよりも「さらにもうワンランク上」というわけです。過去の経験上、WAGUNS.の製品説明は実際に音を聴いて大体その通りと感じるもので、信頼は置けますので、Crystal Lilyよりも上という評価が大いに気になり、オーダーすることにしました。
封筒の中身は納品書で、保証書が入ったビニールにPetit NEUTRON Lilyの本体が入っています。赤いショートケーブルは、購入特典の中継ケーブルで、1970年代東ドイツ製ヴィンテージワイヤー(単線)を用いて作られた「Pink Camelia Relay Cable」です。
実は標準仕様のPetit NEUTRON Lilyからは、1カ所だけアップグレードしています。それは2.5mm4極バランス端子を、トープラ販売製黄銅銀メッキに変更しているということです。この銀メッキプラグは通常プラグと比べると鮮度や情報量で向上が見込めますので、オーダー可能な場合には極力これを選択しています。ちなみに、このプラグを選択した場合には+2,000円となります。
音場が広く、隅々まで鮮明に描写される
それでは音質を確認してみましょう。
今回はイヤフォンとして64AUDIO U4、Unique Melody MAVERICKを用意しました。DAPはHiBy R6で、2.5mm4極バランス接続としています。
まずはMAVERICKと組み合わせました。以前も書いていますが、MAVERICKはもちろん周辺の質が高ければそれに見合った音を出してくれますが、そうで無くてもそれなりに聴かせてしまうという良さを持ったイヤフォンです。
それでも、直前に組み合わせていたLuminox Audio 85-Filterとの比較で、無駄な強調感や刺激が無くなる一方で、音場がより広々と構築され、その広さを隅々まで明瞭に描写しきっていることが判ります。MAVERICKは5ドライバー(1DD+4BA)のイヤフォンですが、空間表現はよくできたフルレンジスピーカーを思わせる広さと自然さです。LP「Bridge Over Troubled Water / Simon & Garfunkel」「CWF 2 / Champlin Williams Friestedt」から起こした楽曲を中心に聴いていたのですが、ヴォーカルの質感などとても5万円クラスのDAP(HiBy R6)との組み合わせから出ているとは思えない素晴らしさです。
そこで手持ちの中では最もケーブルとの相性にうるさい64AUDIO U4と入れ替えて試聴しました。こちらは先に同じWAGNUS.製のスタンダードといえるGinger Lilyと組み合わせて聴いて、その後Petit NEUTRON Lilyと組み合わせて同じソースを聴き直すという形にしています。
こちらも想像を超える音が出てきました。Ginger Lilyもそれだけで聴いていれば十分に魅力的な音を出してくれるケーブルなのですが、Petit NEUTRON Lilyの音は次元が違っていました。まず音場の広さ自体が一回り以上広がりますが、隅の方の描写がぼやけたように感じるGinger Lilyに対して、Petit NEUTRON Lilyはより広い音場の隅々まで鮮明に描ききってくれます。
64AUDIO U4は元々低域過多であり、低域方向の描写が甘いと量ばかり出てだらしなく感じられてしまうのです。Ginger Lilyでもある程度はうまくまとめてくれるのですが、普段使っているBrise Audio STR7-Stdと比べるとどうしてもそのような傾向は感じられました。
しかし、Petit NEUTRON Lilyとの組み合わせでは、STR7-Stdと比べても全く遜色の無い質で低域を描き出してくれますし、ヴォーカルや生楽器の質感はSTR7-Stdすら超えていると感じられる見事なものです。高域方向も余分な刺激分は全くありませんが、描写は素晴らしく緻密です。
どちらのイヤフォンと組み合わせても、3万円以下クラスでここまでの見事な音を出したケーブルは過去に見たことがありません。同じLilyシリーズでも、過去に使った3モデルとは次元が違うというほどに進化しています。Crystal Lilyよりもワンランク上という宣伝文句に偽りはありませんでした。
イヤフォン用のリケーブルで約3万円は決して安い金額とは思いませんが、その金額以上の満足感は間違いなく得られる実力の持ち主です。
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購入金額
31,900円
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購入日
2021年01月07日
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購入場所
WAGNUS.直販
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