Luminox Audioは、2017年に台湾に設立された新進のイヤフォンケーブルメーカーです。
日本市場では、2018年にAstell&Kernなどの代理店としておなじみのアユートが取り扱いを開始し、製品が投入され始めます。もっとも、率直に言ってこの当時のLuminox Audioの印象は個人的にあまり良いものではありませんでした。
確かここの製品を初めて試聴したのは、この年の中野のヘッドホン祭りだったと思いますが、最も安価なReflectionは価格に見合ったクオリティは十分確保できているという印象だったものの、中間モデルのBooster Blueを聴くと首をかしげざるを得ないものだったのです。当時の最上位Day for Nightも何となくピンと来ないという感じでしたし…。
ただ、それからラインナップも大幅に拡充され、私が聴いていない製品も多く出てきました。そのうちまた試聴しようかと思っている内に、新型コロナウイルスCOVID-19騒ぎがあり、のんびり店頭で試聴できる状況でもなくなってしまいました。
そこで年度末の決算前だったことが原因なのか、製造打ち切り(既に85-Filterの後継を名乗る「Shadow」という製品が登場しています)による処分だったのかは判りませんが、一部製品が通販等で妙に安く売られていることがあり、その中からお買い得感が特に強かったものを選んで買ってみることにして、そこで選ばれたのがこの製品でした。
この製品の特徴は、アユートの製品情報で端的にまとめられていますので、まずはそれを引用してみましょう。
超高純度OCC線2芯に、銀メッキ銅線による4芯を加えることで、さらなるウエルバランスで音楽を再生します。PVCジャケットにより軟性、耐久性、耐酸化性を強化。プラグは金メッキ加工により耐酸化性が向上します。さらに独自のペア・バランシング・テクノロジーによる豊かなサウンドステージも特徴です
(以上、https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_2411.php より引用)
冷静に読んでしまうと、それほど特別なことをしているようには見えないのですが、発売当時4万円を超えていた製品だけに、基本的な部分はきちんと押さえているようには思えます。
ここで実物を見てみましょう。
パッケージのセンスはなかなか良いのではないでしょうか。イヤフォンケーブルが入っているようには見えないデザインです。
ケーブル本体は、率直に言ってそれほど格好良いとは思いません。安い中国の無名ブランドにも見た目が近いケーブルがありますからね。
パッケージ内にはケーブル本体の他に保証書がきちんと入っていました。イヤフォンケーブルでは、結構高いケーブルでも適当な保証書という製品も意外とありますからね。
iPhoneのカメラではあまりきちんと写らなかったので拡大写真は用意していないのですが、3.5mmプラグの辺りをじっくりと見てしまうと、4万円以上のケーブルの割に仕上げの粗さが気になりました。ここはクリア素材にしない方が良かったのでは?と思ってしまいます…。
ややハイ上がりだが、意外と多くのイヤフォンにマッチする
それでは試聴してみましょう。
今回の音質評価は、イヤフォンをJH Audio Michelle、DAPをAcoustic Research AR-M2に固定して、同じ3.5mmシングルエンド対応のAZLA Silver Galaxy Mix+と比較する形としました。
ちなみに、Silver Galaxy Mix+は、AZLAブランドではありますが、香港のLabkable製で、当時約3万円という価格帯の製品でした。
一聴して明らかなのは、低域が豊かで芳醇さを感じるSilver Galaxy Mix+に対して、ハイ上がりで解像度の高さが特徴的な85-Filterという関係になるということです。どちらもそれなりに高価なケーブルでありながら、ここまで音が違うのは良いことなのかと悩むほどに音が変わります。
ただ、85-Filterはケーブル自体は露骨な結構ハイ上がりだと思うのですが、イヤフォン側は低域方向が強い製品の方が圧倒的に多いため、組み合わせると程々のドンシャリという程度に落ち着いて、結果としてバランスのいい音に仕上がることが多いように思います。
また、銀コート線を使っていてハイ上がりというと、銀線独特の癖が高域方向に乗ることが多いのですが、85-Filterは意外とそのような癖は出ておらず、クリアで切れの良い高音です。
Silver Galaxy Mix+は独特の味を持つケーブルであり、この明確なサウンドキャラクターも決して不快なものでは無いのですが、原音忠実度という意味では85-Filterよりは落ちるかもしれません。ただ、口当たりの良いまろやかさがあるサウンドであるため、長時間ゆったりと音楽を聴くのには適していると思います。逆に85-Filterはエッジが立った、コントラストの強いサウンドであるため、出てくる音は完全にモニター調です。細部の再現性は高く、どちらかというと分析的に聴くのに適した音でしょう。
モニター調の音は一音ごとの質が悪いと聴くに堪えないものになってしまうのですが、85-Filterは基本的に質の高い音ではありますので、それほど不快感はありません。ただ、もう一歩の深さや余韻については少し足りないかな、と感じる部分はあります。
今回は1万円を割り込む特価品でしたので、実売価格で判断すれば極めて高い水準にある音であることに疑う余地はありません。1万円前後であれば間違いなくオススメできる製品です。
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購入金額
9,980円
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購入日
2020年03月14日
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購入場所
ヨドバシ.com
harmankardonさん
2020/04/11
いいですね.この価格で購入できたのはうらやましいです.
jive9821さん
2020/04/11
Luminox Audioでは、この価格帯は精々ミドルクラスなんですよね。
もっとも、決算期の処分とはいえこの価格で売っていたとなると、原価は意外と
安いのかもしれませんが…。
率直に言って、発売直後の4万円超えでは割高感はあったと思います。2万円台で
争える実力は十分にあると思いますが。
ちなみに、一部は4月に入ってからも残っていますが、アユート扱いのAcoustuneや
Luminoxのケーブルは、年度末にかなり安くなっていました。残っているものを
探してみると面白いですよ。