米国のロックバンド、シカゴがレコードデビューを果たしたのは1969年4月。当時のバンド名は「Chicago Transit Authority」(日本語訳するとシカゴ交通局)でした。
この名称は実在する公共交通機関を運営する公営企業と全く同じであり、当然ながら元々存在していた企業からクレームを受けることとなります。そのため、間もなくバンド名を単に「Chicago」と改め、それから約50年が経過したわけです。
そのレコードデビュー50周年に合わせて、デビューアルバムだった「Chicago Transit Authority」(バンド名と同じであり、邦題は「シカゴの軌跡」と別に与えられる形となりました)をリミックス(音質面での改善を目的としていて、どちらかというとリマスターに近い)盤をリリースすることになりました。
ここ最近の流れに合わせ、CD、ハイレゾ配信の他、180g重量盤LPも用意され、さらにリリース元のRhino限定で金色のLPも用意されるとのことでした。音質を考えれば通常の180g盤がベストだとは思いますが、Rhinoの直販価格では通常のLPも金色のLPも大した価格差では無いことから、限定の金色を入手することにしたのです。
ところが、これは9月13日頃にリリースされていたはずなのですが、6月に予約を入れていた私を含む日本の購入者の元には全く届きません。ある方が問い合わせを入れたところ、業務委託先の変更で発送が大幅に遅延しているという言い訳でしたが、その間にも米国内の顧客にはごく普通に配送は行われていました。その方から2週間ほど後に私も問い合わせてみたところ、返答は全く同一と思われる内容で、その後も全く無反応。11月9日(私の問い合わせから10日後)になってようやく発送手続き完了通知が届き、12月3日にようやく手元に届きました。日本の購入者は基本的に全員このタイミングまで待たされたようです。
過去に何度かシカゴの公式サイトから購入したことはありましたが、Rhino Recordsの販売システムを使うのはこれが初めてで、ここまで対応が悪いとは思わず、驚かされました。
恐らくシカゴの熱心なファンであれば、このジャケットを見た時点で違和感を覚えるはずです。というのも、このジャケットはリリース当時「ロゴが小さい方が表面という、人を食ったようなデザイン」が特徴だったのです。
この50周年盤を企画した人間が当時のいきさつを理解していないのか、或いはメンバー達が大きいロゴを表面に差し替えさせたのかは判断できませんが、この時点でこのレコードの仕上がりには一抹の不安がありました。
注目のゴールドLPですが、これも色にむらが出てしまい、あまり良い仕上がりではありません。もっとも、レコードは元々熱して柔らかくした塊を押しつぶしてプレスしますので、よほど均一に色素が混ぜられていない限りはこうなってしまうのは仕方ない訳ですが。
昔の日本盤LPに劣る音質
収録内容についてはここでは触れません。あくまでこの50周年盤の出来についてのみ言及します。
試聴環境は、いつも通りのTechnics SL-1200G+audio-technica AT-OC9/III+Phasemation EA-200です。また、MOTU1296を通してPCで録音しながら聴いていました。
まず、1曲目の「Introduction」が始まった時点でいきなり違和感がありました。昔から持っている日本盤のLPと比べても、低域に力が無く高域も大味です。また、音飛びが随分増えています。
そこで録音している波形を確認して唖然としました。録音レベル自体が極めて低いことも問題なのですが、ピークレベルが殆ど一定の位置に張り付いている、典型的なCD向けマスタリングの特徴を示しているのです。
さらに、このリミックス盤はCDの音質がひどく、修正したものを再リリースして交換することを検討しているという話が出ているほどの劣悪盤なのです。その音源を使ってレコードもプレスしていたとすれば、ひどい音質になるのも当然です。それにしても、制作に携わった人間はプレス後の検盤をしていないのかと疑問に思わされます。多少なりともまともな聴覚があれば、この程度のクオリティで高音質盤として売ることはあり得ません。
以前リリースされた2作目の「Chicago」(邦題は「シカゴと23の誓い」)のリミックス盤は、昔のテイストを残しつつもきちんとオーディオ的には改善されていてなかなか良い出来でしたので、こちらにも期待していたのですが、完全に裏切られました。盤面が金色である以外に、このLPの存在価値は無いと断言しても良いでしょう。
ちなみに、このGold LPは全1000セットのみの販売らしく、ジャケットに通し番号が刻まれているのですが、私が購入したものはこちらです。
レアといえばレアなので構わないのですが、普通はレコードのスタンパーは使えば使うほど音質が劣化していきますので、この類の通し番号を入れるのであれば、先着順で若い方から出荷していくのが常識です。しかし、私とほぼ同時に予約され、同じ日に受け取った方は200番台だったそうですから、そういったお約束も全く守られていないことが判ります。
ということで、今後はよほど特殊な限定品では無い限りRhino直販を使うことは避けると思いますし、この完成度のものを商品化してしまったRhino及びシカゴ自身に対しても失望を禁じ得ません。
-
購入金額
5,000円
-
購入日
2019年12月03日
-
購入場所
Rhino.com
退会したユーザーさん
2022/06/13
jyan0213と申します、普段はスティーリー・ダンなどを聞いております。
最近シカゴにハマっており、いろいろ音源を最新のもので集めたりしております。
さて、CTAについてですが、今後買う場合在庫があってコスト的に問題がなければ
50thremix(修正版)を定番として聞いて問題ないのでしょうか?
というのも、すでに当remixCDは入手しております。
mp3に変換して聞いたところ、1曲めのブラスが高音割れ?しているような気がいたしまして。
2014年にMFSLがリリースしたものを最高のものとすれば良いのか
そのあたりどう思われておりますでしょうか?
退会したユーザーさん
2022/06/13
修正版についての記事も読みましたが、修正されたものについては
過去のリマスターとくらべても「買ってよし」なレベルなのか
修正されたものでも「これは酷い、買ってはいけない」レベルなのかがよく理解できなかったところになります。
*修正前のものがクズなのはよくわかりました(笑
jive9821さん
2022/06/13
私も各リリースに言及できる程所有しているわけではなく、あくまで
自分が知っている範囲で回答させていただきます。
まず、実際に聴いたことはないものの、Mobile Fidelityのリリースで
音が悪いということはまず考えられませんので、最高の音を狙うので
あればMobile Fidelityが確実な選択肢となります。
それ以外のものでは、2000年以前にリリースされたものは多少の違い
はあっても、根本的なクオリティの差というものは無いと思います。
せいぜい録音レベル(音量)調整程度の筈です。
きちんとリマスターが施されたのは確か2002年頃のRHINOレコードに
よるもので、このときにリリースされたCDはオーディオ的な品質は
確実に向上しています。このリマスター音源は、廉価ボックスの
でも使われていますので、音源だけを安価に揃えるのであればこちらが
お薦めです。
ちょっと変化球となるBlu-rayを利用した多チャンネルミックス盤の
も、根本的な音質は2002年リマスター盤準拠です。当然元の音源に
違いがありますので、細部に異なる部分はありますが。
そして問題の50周年記念盤ですが、まず初期リリースについてはCD/LP
共にこのレビューの通りです。過去最低の出来なのは間違いありません。
そしてメーカーから送付された修正版を受け取った人の話では、基本的な
音は変わっておらず、細部を良く聴けば少し違う程度とのことで、相変わ
らず音はひどいそうです。
ということで、50周年記念盤を買うくらいなら、初期のCBS/SONY盤の
中古を買った方がまだまともな音が出てくるという状況となっています。
個人的には、一時期よりは値上がりしてしまったものの、上で紹介した
10タイトル入りのボックスで入手することをお薦めしています。
退会したユーザーさん
2022/06/13
了解いたしました。修正後のものでも長年聞いておられる方からすると
「不可」レベルのものだということですね。
しかし、ここまで評判が悪いremixを放置してることを挽回するには
次は60周年再発やスーパーデラックスなどを待たねばならない状況というのはなにか悲しいですね。。
すみません、質問ついでにもう一つこの機会なので。
シカゴはベスト盤が近年非常に多いですが、そちらの音質についてはどうお考えですか?
私としてはバンドの意思が入っている(ように感じられる)点で
「only the begginings」が装丁も含めて好きなところではありますが
その後
「ザ・ベスト・オブ・シカゴ 40周年記念エディション」
「シカゴ・ストーリー~グレイテスト・ヒッツ<ヨウガクベスト1300 SHM-CD>」
「The Collection(2012)」
「Very Best of Chicago: 40th Anniversary」
「The Chicago Story: Complete Greatest Hits」
「The Ultimate Collection」
などがリリースされております。
レビューを見ると最後の「ultimate」が音質が非常に良いと評判です。
実際「only the begginings」と明確に違うレベルでしょうか?
また、一般の人にベスト盤を勧める上で上記のCDの選曲などは妥当なところですか??
only the begginingsがultimateのリマスターで再発してくれたらいいのに、、と勝手に思っているところです
jive9821さん
2022/06/13
基本的にはベスト盤は
・公式盤でコロンビア時代のもの
・公式盤でフルムーン/リプリーズ時代のもの
・公式盤でライノ移管以降のもの
・各国の公式な版元が独自編集したもの
・非公式の出所不明
に大別されます。ライノ移管より前のものはオリジナルのマスター
からそのまま編集されているので、ダビングの劣化以外はアルバムや
シングルで出ているものと変わらないはずです。
明らかに変わったのは「27」とナンバリングされた「Only the Beginnings」
で、ここで収録された楽曲はリマスターで音質が一気に引き上げられて
います。上で書いた2002年リマスターと質的に近いものです。
これ以降のライノからリリースされているベスト盤も、この「27」と
同等の音源が使われています。
日本編集盤の場合は、基本的にはオリジナル音源のものが多かったのですが、
近年の独自編集盤はライノ音源だったり、日本独自で音質を修整している
ものも見られます。海外編集盤は正直わかりません。
ですので、安心して聴けるのは「27」以降の公式盤ということに
なるのでしょうか。ひょっとすると各国編集盤に大当たりがあるのかも
しれませんね。
jive9821さん
2022/06/13
私はどの時期でも満遍なく聴くのですが、シカゴに
対する思い入れがどの時期にあるのかが問題に
なります。
「Only the Beginnings」はバランスの良い選曲で
私も気に入っていますが、個人的には思いの外出来
が良かった「XXXVI Now」の曲を皆様に聴いて
いただきたい気持ちがあります。生憎この作品の
楽曲が入ったベスト盤はまだありませんが。
ですので、「40th」とこのアルバムを聴けば、
ジェイソン・シェフ脱退までの主要楽曲は概ね
カバーできるとは思います。まあ、前後期で
発売されているアルバム10枚組セットをそれぞれ
聴けば、格安に大多数の楽曲に触れることが
出来てベスト盤以上にお薦めですね。
退会したユーザーさん
2022/06/14
勉強になりました。
10枚組セットを購入いたしました。
今後ともよろしくお願いいたします
jyan0213さん
2023/02/08
現在はシカゴに限らず音楽DVDを収集しているところなのですが、
シカゴのライブDVDだと何がお勧めですか?
代表曲総ざらえ的なライブを求めておりまして
なおかつメンバーがノリノリでやっているものを探しています
ここでいう代表曲とはサタデーインザパークをはじめとする初期の物も
後期の素直になれなくてなどの大ヒットも両方含む、、というところになりますので
現実的には2000年代にはいってからの物になろうかと思いますが。。
もし動画サイトなどにお勧めのフルコンサートが上がっていればそのURLでも構いませんので教えていただければと思います
jive9821さん
2023/02/08
はっきり言ってしまうと、広くお勧めできるライブDVD/Blu-rayは無いのです。
まずリリース数自体がキャリアの割に少ないことに加え、殆どの場合ピーター・
セテラ在籍時までの楽曲しか演奏されていないため、選曲の幅も狭めです。
その中で私がお勧めするとすれば
・In Concert at Greek The Theatre(2002年8月)
・Live at The Greek Theatre (with Earth,Wind & Fire、2005年8月)
の2作品で、どちらも会場がグリーク・シアターのものですね。
前者は当時発売計画が消滅していたアルバム「Stone of Sisyphus」から「The Pull」が演奏されているという珍しさと、パフォーマンスもそこそこ良いことで満足感が得られます。
後者はアース・ウインド&ファイアとのジョイントライブで、演奏のノリの良さなどがいつもよりも引き出されていますし、EW&Fの方も時期的にモーリス・ホワイトを欠いてはいるものの十分楽しめます。
他にドゥービー・ブラザーズとのジョイント公演を収録した「Chicago in Chicago」という作品もありますが、個人的には上記2つのいずれかの方が楽しめるかな、と思います。それ以外のものは公式映像として質・量のいずれかが物足りないものとなってしまうでしょう。
jyan0213さん
2023/02/09
単独コンサートでは2002年盤のgreekなのですね。。ってこれは1993年のものなんですね。。
うーん、さすがに中途半端に古いなぁ(笑
EWFとのジョイント物は、アースはさておき、シカゴも相当数代表曲総ざらえでやってる感じですかね。
jive9821さん
2023/02/09
http://www.chicagonavi.net/dvd/d_chi_ewf.html
それぞれの楽曲を一緒に演奏する場面など見所は結構ありますし、
ライブ盤としてはこれが結構気に入っています。