レビューメディア「ジグソー」

米国では限定盤、日本では発売されなかったLP盤

作品としては、シカゴの21作目のアルバムであり、CDでは全く珍しくないものです。

 

しかしLP盤だとこれが一変します。まず、本国のアメリカでは詳細は不明ですが会員限定盤として僅かにプレスされたという記録があるのみですし、日本に至っては全く発売されないどころか輸入レコードを扱う店でも目撃情報はほぼありません。

 

私もそれ以上の情報は持っていなかったのですが、先日シカゴの公式サイトを見ていると、アルバム「TWENTY 1」の発売メディアの中に「LP」の文字があることに気付きました。シカゴのファンサイトで教えていただいたのですが、米国では一般販売されなかったものの、EUと韓国では一般向けのリリースがあったそうなのです。

 

そこで改めて調べてみると、確かにEU各国ではごく普通に中古盤が格安で流通しています。そこでスペインのレコード店に連絡を取り、入手したのがこのLP盤となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにCDでは初回盤とリマスター盤を所有していますが、それでも買ってしまうというのがコレクターの習性なのです…。

 

 

収録曲は以下の通りとなります。

 

 

 

Side A

 

 1. Explain It To My Heart
 2. If It Were You
 3. You Come To My Senses
 4. Somebody, Somewhere
 5. What Does It Take
 6. One From The Heart

 

Side B


 1. Chasin' The Wind
 2. God Save The Queen
 3. Man To Woman
 4. Only Time Can Heal The Wounded
 5. Who Do You Love
 6. Holdin' On

 

 

丁度CDと同じ曲順を面ごとに半分ずつ収録した形です。

更新: 2017/03/09
総評

不遇の90年代の始まり

まずはアルバムとしての中身に触れておきましょう。

 

本作は1991年にリリースされました。1982年の「Chicago 16」から1986年の「Chicago 18」まで、プロデューサーにデイヴィッド・フォスターを迎えヒット曲を連発したシカゴは、1988年の「Chicago 19」ではプロデューサーとして新たにロン・ネヴィソン、チャス・サンフォードを曲ごとに迎える形を取ります。

 

「Chicago 19」からはシングルヒットが連発し、シングルカットされた4曲中3曲(次作に当たるベスト盤から、さらに本作収録曲がリミックスされてシングルカットされ、これも全米5位を記録)がビルボード誌のヒットチャートでTOP10入りし、その中の1曲「Look Away」に至っては1989年の年間チャート1位という金字塔を打ち立てるなど、シングル曲の成績は過去最高ともいえる結果となります。ただ、その反面アルバムはさほど成績を残せませんでした。

 

先程「Chicago 19」のプロデューサーが2人という話を書きましたが、実はシングルカットされてヒットした楽曲の殆どはロン・ネヴィソンのプロデュースによるものでした。それもあったのか、ベスト盤を挟んだ次作となったこの「TWENTY 1」では、アルバム全体をロン・ネヴィソンがプロデュースする形となり、1曲だけデイヴィッド・フォスター作品のエンジニアとして長年活躍してきたウンベルト・ガティカがプロデュースすることとなります。

 

 

元々本作はベスト盤をカウントせずに「Chicago 20」となるといわれていました。これは「Chicago 19」リリース後に来日していた、オリジナルメンバーであり、ドラム担当のダニエル・セラフィンが「次作は20」という話をインタビューでしていたためです。

 

ところがリリースが大幅に遅れた挙げ句、タイトルも「TWENTY 1」と変更された本作のメンバーに、そのダニエル・セラフィンの名前が無かったのです。

 

後に明らかになるのですが、この時期ドラムの殆どを打ち込みに頼っていたダニエル・セラフィンに対して、メンバー中から「何故自分で叩かない」と不満が漏れはじめ、意見が食い違った結果他のメンバーが彼を解雇したということでした。それによりアルバム制作が大幅に遅れてしまったということのようです。

 

空席となったドラマーについては、本作の時点ではメンバーを置かずゲストミュージシャンを頼りますが、結果的にそのゲストの内の一人だったトリス・インボーデンが、後にそのまま正式なメンバーとして迎え入れられます。

 

本作からの第1弾シングルは、「Look Away」と同じダイアン・ウォーレン作で、曲調としても共通点が多い「Chasin' The Wind」でしたが、それほどのヒットとはならずに辛うじて全米TOP40に食い込んだ程度でした。そして、これが90年代のシカゴにとって唯一のTOP40ヒットということになってしまいます。

 

内容的にはそれほど悪い作品ではなかったと思うのですが、この当時はアメリカのヒットチャートをラップが席巻していて、80年代風のAORが全くと言って良いほど受け入れられない時代だったことが大きかったのでしょう。70~80年代の大御所でも、この時期に低迷したミュージシャンが多かったのです。他にも色々な要因はあったのですが、これ以降90年代にはベスト盤や企画盤程度しかリリースされなかったことにより、シカゴはヒットチャートから遠ざかることとなってしまいます。

 

 

本作では当時のシカゴが誇る3人のリード・ヴォーカル、ジェイソン・シェフ、ビル・チャンプリン、ロバート・ラムの3人がほどよく役割を分け合っているのですが、中でもジェイソン・シェフが今までに無くメインに躍り出てきていることが印象的でした。ヒット曲こそさほど無いものの佳曲は多く、ジェイソン・シェフが完全に前任のピーター・セテラに替わってフロントマンに定着したことを印象づけました。

 

前述の通り、本作からのヒットシングルは「Chasin' The Wind」1曲に終わるのですが、本作で初めてシカゴのレコーディングに参加したトリス・インボーデンがAOR路線最高傑作と評する「Explain It To My Heart」という名曲もあれば、 B面の「Man To Woman」~「Holdin' On」の流れは当時のシカゴの持ち味が存分に発揮されているように感じられます。強いていえば、ロン・ネヴィソンのプロデュース作全般にありがちな、ちょっと安っぽさを感じる音作りが弱点といえば弱点かも知れません。

 

 

さて、CDと比べてどうかという話も一応しておきますが、率直に言って音質的なアドバンテージはありません。普通に聞くだけであれば素直にCDを入手するべきでしょう。本作はLP1枚で提供されていますが、収録時間は52分以上あり、どうしても溝の幅が細くダイナミックレンジが確保出来ていない印象を受けます。

 

個人的にはコレクションとして満足していますが、LPならではの良さはジャケットの大きさ程度しか思いつきません…。

 

なお、価格は実際の入手価格である4ユーロの円換算概算値です。

  • 購入金額

    480円

  • 購入日

    2017年03月08日

  • 購入場所

    discogs.com

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