レビューメディア「ジグソー」

いろいろな「結月ゆかり」がいっぱい

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。 こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ボーカロイド。当初、デモソングなどの仮歌用途に留まると思われていたこの人工ヴォーカルソフトは、熱意を持った黎明期のP(プロデューサー)によって「調教」され、単独のジャンルとして楽しめるグレードの楽曲がリリースされるようになりました。しかし当初は、超高速歌唱やロングトーンなど、「人ではない」ことを活かした歌唱で存在感を示したのも事実です。それが、「人のような」表現力を備えたのは、第3世代のエンジンVOCALOID3シリーズからだといえます。そのVOCALOID3にチューニングされたボーカロイドを使った作品を集めた作品集をご紹介します。

 

結月ゆかり。VOCALOID3世代を代表するボーカロイド(2019年現在は後継のVOCALOID4エンジンを採用したヴァージョンもリリース済)。

 

2011年秋からリリースが開始されたVOCALOID3の世代のボーカロイドには、初音ミク、MEIKO、KAITO、がくっぽいど、IA、兎眠りおん、蒼姫ラピス、AVANNA、SeeUなど数多くのボーカロイドが属するが、VOCALOID3世代として印象が強いのは、一番リリースが早かったMegpoid(GUMI)と結月ゆかりかもしれない。ミクなどのように、知名度自体はむしろ結月ゆかりを上回るボカロもあるのだが、ミクはVOCALOID2世代からあったので、VOCALOID3世代のイメージが強くない。厳密にいうとGUMIもVOCALOID2世代からあるが、ミクやリンレン、ルカに隠れてあまり目立たなかった。それが飛躍的に表現力を上げたVOCALOID3世代として一番にリリースされたので新世代VOCALOIDエンジンに手を出す人が急増し、ボカロ楽曲界隈でGUMIの使用者比率が爆増した時期もあったので、イメージリーダーとなったわけ。

 

結月ゆかりの方は、VOCALOID3世代最初期にリリースされたので印象が濃いうえに、初出がVOCALOID3世代のキャラクターで、さらに前述

したようにユーザー側が企画したボーカロイドであり、ボーカロイドとボイスロイドを兼ね備える初めてのキャラクターでもあった(同じ声音で歌もセリフもこなせるということ)。

 

ボーカロイドを使った作品を発表している作曲家集団「VOCALOMAKETS」で企画されたというこのボーカロイド、生みの親ともいえる「VOCALOMAKETS」=マケッツ団から「結月ゆかり」オンリー作品がリリースされている。その第2弾が本作“月の詩Ⅱ”。2012年末のコミックマーケット83で頒布された。

 

15組のPたちが結月ゆかりの魅力を引き出した作品を寄せている。

 

「初音ミクのうた」などで識られるベテランボカロPであるだいすけPは「星宙の五線譜」を提供。結月ゆかりの表現力を上手く引き出している。壮大な曲調だが、バラードというには若干速めの絶妙な速度でボカロのアラを感じさせない...どころか、音節終わりでしゃくるような音(声)を入れていることによって、リアルさが格段に増している。ゆっくりめの曲調は、どちらかと言えば今までボーカロイドが不得意とする分野だったが、見事に覆している。

 

古参音楽サークル主催のちょむPの「スタートレーサー」は、ノリの良いロック調のポップス。初音ミクなども得意とする曲調だが、口を開ける系の声音でのクリアさが違う。そして力強い。ゆかりはロック系の歌でもよく使われるが、それはこの「芯」のある声がポイントなのだろう。

 

GYARIことココアシガレットPが曲を提供するのが「月旅(つきたび)」(歌詞はrina)。設定はリンを中心とした例の楽団で...ということは、ジャジィな仕上がり。でもKAITOも覚醒wはせず、抑えた演奏。フルートの音色と絡むゆかりのフワっとした歌い方がステキ。

 

いずれも、VOCALOID3世代エンジンによるリアルな表現力を前面に出した曲たちで、ジャンルとしては「ボカロ曲」とそれ以外の楽曲と区別する必要があまりない「普通の」曲が多い。それでいて、ボカロのクールさや乾いたイメージは残っていて、きちんと「ボカロ曲」している。

 

その絶妙な匙加減が素晴らしい作品集です。

紫を基調とした幻想的なイラストは、たま画伯による
紫を基調とした幻想的なイラストは、たま画伯による

 

【収録曲】

1. 星宙の五線譜 (だいすけP)
2. スタートレーサー (ちょむP)
3. 残念なキミ、愛しのアナタ (Bumpyうるし)
4. 君を待つ日 (CAZZ)
5. COUNTLESS ∞ CATASTROPHE (LIQ)
6. 世界一幸福になれるバスツアー (鳥居羊/うたたP)
7. Dazzling choice (azuma)
8. 「触れたい」と言って (かごめP)
9. ひとりぼっちで眠るLED (かめりあ)
10. 「月と猫とバイオリン」より第2楽章 (PYS/ぱやP)
11. 風と歌を紡ぎながら (アカサコフ・セルゲイ)
12. Passion Breeze (Ayano(メディックP))
13. くろたへのとり (yanagi)
14. 月旅(つきたび) (rina/GYARI(ココアシガレットP))
15. ジュズダマ (喜兵衛)

 

作品紹介ページ(一部の曲はニコニコ動画へのリンク記載あり)

 

「星宙の五線譜」

 

「スタートレーサー」

 

「月旅」

更新: 2021/07/23
必聴度

同じ素材を使って様々な表現がされている

結月ゆかりという素晴らしい「素材」を凄腕Pがうまく料理し、いろいろな世界を描き出している。

  • 購入金額

    7,800円

  • 購入日

    2017年09月19日

  • 購入場所

    駿河屋

16人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • 未完さん

    2019/09/12

    作る人によって、作品の個性みたいなのがあって良いですね。
    個人的にはギャグ要素もある曲も好きです
  • cybercatさん

    2019/09/13

    同じ素材を使っても、Pによっていろいろな解釈がありますね。

    ゆかりはしゃべることも出来ますし(ボイスロイド)、ボーカロイドにも「フレーズ収録(exVOICE)」があるので、ギャグ系の投稿も多いですね。
  • くーねるさん

    2019/09/13

    ゆかりたんにseyanaかsoyanaかahokusaかやめたらこのげーむのどの言葉をプレゼントしたらいいのかなやむ(元ネタわかる人ー?)
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