実際にレコードを取り出してみて、手に持った瞬間に音質は恐らく期待できないであろう事を察してしまいました。こちらの写真をご覧ください。

裏が透けてみてしまうカラービニール製だったのです。これまでの経験上、この類のレコードでオーディオ的に優れた物はまず出会ったことがありません。

案の定、音質的には解像度が低く高域の音が濁ってしまう、典型的な音質の悪いレコードそのものという感じの物でした。きちんとした音質で聴きたければ、素直に日本盤のBSCD2で買った方が良さそうです。

もっとも、音質的な満足度は低くても内容としては聴き所満載です。最初に収録されている「I Will Always Love You」は説明不要といえるほど知られたメインテーマ曲ですが、ここで収録されているのは「Alternative Mix」と呼ばれる第1テイクです。

この曲をプロデュースしたデイヴィッド・フォスターは、後にNHKの番組のインタビューで「この当時のホイットニーは、地球上でも最高峰のシンガーだった」と述懐していましたが、いきなり歌って一発録りでこの歌唱というのは想像を絶する物があります。

ご存じの方も多いと思いますが、元々この曲はカントリー歌手のドリー・パートンの曲であり、曲そのものは以前からある程度は知られていました。しかし、ドリー・パートンが歌っていたこの曲は決してこんなドラマチックな仕上がりでは無く、この曲を名曲たらしめたのはホイットニー・ヒューストンの圧倒的な歌唱力と、それを余すこと無く引き出したデイヴィッド・フォスターの素晴らしいアレンジだということが実感できます。

実際にシングルカットされたバージョンと比較すると、こちらのAlternative Mixはアレンジに結構細かい仕掛けが施されているのですが、恐らく真正直なアレンジの方がヴォーカルをより引き立たせると判断して、シングル・バージョンをあのようなアレンジにしたのでしょう。聴き比べてみるとその判断が正しかったことが直ぐに理解できます。

ホイットニー・ヒューストンの熱心なファンの方からすれば、他にも貴重なライブ音源などが聴けることでより満足度は高い作品となるのでしょう。私自身はそこまでではありませんが、それでも聴き所は充分にありました。ただ、これから聴かれる方は素直にCDで購入された方が良いでしょう。