レビューメディア「ジグソー」

50年近くのキャリアで初のソロアルバム

米国のロックバンド、TOTOの中心メンバーとして長らく活躍し、新たに招集された新生TOTOには直接参加こそしていないものの、依然としてサポート役として存在感を見せているデヴィッド・ペイチ。

 

主にジャズを中心に多方面に活躍した演奏家・作曲家マーティ・ペイチの息子としても知られている彼ですが、業界で一躍名を上げたのはボズ・スキャッグスの名作「シルク・ディグリーズ」で、ボズのパートナー的に演奏・作曲で大活躍したことでした。この頃にボズ・スキャッグスのバックバンドとして集まっていたミュージシャン達が結成したのがTOTOという関係であり、ボズの右腕として活躍するデヴィッド・ペイチ、当時既にスティーリー・ダン等で活躍していたジェフ・ポーカロの2人がTOTOの中心となったのはある意味当然でした。

 

元来スタジオミュージシャンとして活躍していたメンバーばかりであり、TOTOとして活動する以外は他の著名アーティストのレコーディング等にかり出されることが多かったためか、TOTOというバンドの実績に対してメンバーのソロ作品は意外と少ないのです。

 

ジェフ・ポーカロの死後バンドの中心となっていたスティーヴ・ルカサーは比較的多くソロ作を制作していますが、それ以外となると2代目ヴォーカリストのファーギー・フレデリクセン、3代目ヴォーカリストのジョセフ・ウィリアムズが、いずれもTOTOに在籍していない時期に数作リリースしている程度でしょうか。若くして亡くなったジェフ・ポーカロはともかく、ミュージシャンとして実績十分のデヴィッド・ペイチが、約50年に及ぶキャリアで初めてリリースしたソロ作品が、この「Forgotten Toys」となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TOTOの代表曲を多く生み出し、作曲家としても高く評価される彼の初ソロ作ではあるのですが、全7曲のミニアルバムというべき作品として届けられました。今回はこのアナログ盤で購入していますが、12インチ45回転というフォーマットとなります。

 

更新: 2022/09/01
総評

TOTOを支えた実力はまだまだ健在

このレコードは一応重量盤ではあるのですが、トランスルーセントブルーの盤であり、あまり音質的に有利とは言えないものとなっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

収録曲は以下の通りです。

 

 

Side A

 

01. Forward

02. Willibelongtoyou

03. Spirit Of The Moonrise

04. First Time

 

 

Side B

 

01. Queen Charade

02. All The Tears That Shine

03. Lucy

 

 

全7曲といっても、1曲目の「Forward」は30秒程度のインスト曲で、イントロ代わりといったところでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故か単語の区切りが全く無いタイトルが印象的な「Willibelongtoyou」はTOTOのジョセフ・ウィリアムズ(彼はこのアルバムの共同プロデューサーであり、音響的な部分も担当するなど全面的に参加しています)とヴォーカルパートを分け合い、スティーヴ・ルカサーもギターで参加しているなど現在のTOTOのテイストそのものという楽曲です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Spirit of the Moonrise」は彼のヴォーカル曲にしては珍しくアップテンポの曲で、こういう曲の引き出しもあったのかと感心させられます。こちらも現TOTO勢が活躍する曲ですが、TOTOではまず見られない打ち込み中心の音であるため、やはりTOTOとはちょっと違う感はあります。バック・ヴォーカルにはマイケル・マクドナルドも参加しているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「First Time」はスティーヴ・ポーカロが書いたといわれても納得してしまいそうな、シンプルでメロディーラインが綺麗な曲です。バック・ヴォーカルに聞こえる女性ヴォーカルは彼の娘エリザベス・ペイチのもののようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LPのB面に移り、「Queen Charade」はスティーヴ・ルカサーのギターを前面に押し出したギター・ロック曲です。スライドギターは元イーグルスのドン・フェルダーによる演奏です。こういった曲調もTOTOの時代にはあまりイメージにありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く「All The Tears That Shine」は「TOTO XIV」に収録されていた楽曲のセルフ・リメイクとなります。ただ、「TOTO XIV」では自身でリード・ヴォーカルを担当していたのですが、こちらはこの曲の共作者であるマイケル・シャーウッドがリード・ヴォーカルを務めます。冒頭の印象的なシンセサイザーの音は、何とブライアン・イーノによるものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてアルバムの最後を飾る「Lucy」は父マーティ・ペイチに捧げられた、ジャズテイストの強いインスト曲です。個人的には何故かこの曲が最も彼らしい曲に聞こえています。この曲のギターはレイパーカー・Jrだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

文中で挙げた以外にも、ベースの大部分はネイザン・イースト、パーカッションはレニー・カストロといった実力派が務めていますし、新生TOTOのメンバーであるウォーレン・ハムも多くの曲に参加するなど、世間的には一流ミュージシャンとして知られる顔ぶれが揃っているものの、彼自身はそのつもりではなく気心が知れた仲間と自然に作り上げただけの作品が、このような形になったのでしょう。TOTO時代よりもかなり振り切った作りの楽曲が多いのですが、それでもどの曲も高水準という辺りは、さすがデヴィッド・ペイチというところでしょう。

 

私自身、このアルバムに感じた不満はただ一点、「いくら何でも短いよ」ということだけです。それだけ質の高い作品ということでしょう。

 

  • 購入金額

    2,895円

  • 購入日

    2022年08月26日

  • 購入場所

    HMV

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