オリジナル・アルバムとしての最新作は2015年の「TOTO XIV ~聖剣の絆」となるTOTOですが、その前に発売されたのはオールタイム・ベスト盤となる「In The Blink Of An Eye 1977-2011」(2011年)でした。その彼らの新作は、3曲の新曲を含むもののまたもベスト盤となりました。
「TOTO XIV」は一度解散を発表した後であり、新体制を整えての制作で、自身の活動を優先して脱退したドラマー、サイモン・フィリップスの代わりにスティーリー・ダンやラリー・カールトンのバックでプレイしていたキース・カーロックを加え、「TOTO XIV」発売の直前にこの世を去ったベーシスト、マイク・ポーカロの代役としてゲスト参加扱いながら結成当時のメンバーであるデイヴィッド・ハンゲイトを招き、新体制として確立したかに見えた構成となっていました。
しかしアルバム発表後のツアーではキース・カーロックがあっさりと離脱してしまった他、デイヴィッド・ハンゲイトも長期ツアーをこなせる体力が無いという理由で離脱してしまいます。ツアーの間はかつてのサポートメンバー等が穴埋めしたものの、本作収録の新曲制作時にはその穴が埋まらず、ドラマーにはセッション界有数の売れっ子であるヴィニー・カリウタを招いたものの、ベーシストが不在となりギターのスティーブ・ルカサーがギターとベースを兼ねる形で演奏しています。
本作は発売予告が随分前から出ていて、私は昨年の11月に購入予約は済ませていました。2月9日の発売日直前にそれを忘れていて、注文しそうになって焦りましたが…。その頃には10インチシングルとして、新曲の内の1曲である「Alone」がリリースされていたそうですが、敢えてこれはスルーしていました。
今回も特に何も考えずにLPで注文しましたが、TOTOはCDでも良かったかと少し後悔したりもしました…。
ちなみに日本盤はCDが他の国よりも先行して(2月7日)発売されていますが、2月28日にはLPも発売されます。但し中身のレコードは輸入盤であり、今回私が入手したものと同じであるようです。
収録内容は以下の通りで、CDとLPとで違いはありません。
01. Alone
02. Spanish Sea
03. I'll Supply The Love
04. I'll Be Over You
05. Stranger In Town
06. 99
07. Struck By Lightning
08. Pamela
09. Afraid Of Love
10. I Won't Hold You Back
11. Jake To The Bone
12. Stop Loving You
13. Lea
14. Hold The Line
15. George Porgy
16. Rosanna
17. Africa
01,02,07が新曲ですが、「Spanish Sea」はアルバム「Isolation」制作時の未完成トラックであり、メロディーは大幅に修正された部分はあるものの、ドラム、ベースについては収録済みだった故ジェフ・ポーカロ、故マイク・ポーカロの演奏をそのまま利用したそうです。「Alone」「Struck By Lightning」はドラムがヴィニー・カリウタ、ベースがスティーブ・ルカサーとなっています。
新曲はまずまず、リマスターの音質は少々微妙
本作のタイトル「40 TRIPS AROUND THE SUN」は直訳すると「太陽の周りを40回動く」、すなわち地球の公転40回分で、イコール40年を意味するとのことです。要は40周年記念のベスト盤ということでしょう。
本作は新曲以外の全トラックもリマスターが施され、特に初期のアルバムで露骨に古さを感じさせていたドラムの音を改善するなどして、現代的な音に改めるよう修正されているとのことです。
全体的には低域方向を強調して押し出しの良さを重視した傾向となっているのですが、個人的にはリマスターの出来はあまりしっくりときません。確かにデビュー作「TOTO」(邦題:宇宙の騎士)収録曲はオリジナルと比べると明瞭で迫力も増していると思うのですが、明瞭さを重視するあまり何かバランスを欠いた音という印象を受けてしまいます。「Isolation」や「Fahrenheit」などは元の音がやや薄かったので、これらからの曲で低域を厚くするという方向性は間違っていないのですが、今度は高域方向の質が落ちていてこれも一長一短程度です。
オリジナルのバランスが整っていた「The Seventh One」に至っては、明らかに元の方が良かったと感じられます。ただ、結果的にいじった音と新録の曲の音質は割合統一感があり、通して聴いたときのまとまりは感じられます。
新曲についてなかなか興味深いのは、ヴォーカルのジョセフ・ウイリアムスがプロデューサー役を務めていて、TOTOの作品では珍しく一部キーボードも担当しているということで、彼が主導して制作されたと思われることです。エンジニア役としてもキーボードのスティーブ・ポーカロらと共にクレジットされていますし、編集もジョセフが担当しています。
ジェフ・ポーカロ没後のTOTOは、常にスティーブ・ルカサーが主導して動いていたイメージがありますので、オリジナルメンバーですらないジョセフが中心となっているのはなかなか画期的な動きといえます。
ただ、本作の内容を見ていて少々腑に落ちないのが新曲以外の選曲で、元作品が
・TOTO(宇宙の騎士、第1作)
・Hydra(第2作)
・TOTO IV(聖なる剣、第4作)
・Isolation(第5作)
・Fahrenheit(第6作)
・The Seventh One(第7の剣、第7作)
・Kingdom Of Desire(欲望の王国、第8作)
と、ジェフ・ポーカロ存命時の作品(3作目「Turn Back」を除く1~8作目。ジェフ・ポーカロは8作目の発売直前に急死しています)に限られているということです。確かにこれ以降の作品と比べると出来が良いものが多かったのは事実ですし、ジェフ・ポーカロが今でもTOTOにとって特別な存在であることも確かですが、20年在籍したサイモン・フィリップスの存在に全く触れられていないというのは少々納得できないのです。
その意味では、新曲こそなかったものの幅広く選曲されていた前回のベスト盤である「In The Blink Of An Eye 1977-2011」の方がお薦めしやすい存在といえます。本作はこれまでのTOTOの作品を一通り押さえていて、その上で新曲が聴きたいというファン向けと考えた方がしっくりとくる内容です。
試聴動画・音源
最後に、本作に収録された新曲の公式に公開されている試聴音源をご紹介しておきましょう。なお、新曲以外は至る所に音源が公開されていると思いますので、ここでは割愛させていただきます。
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購入金額
3,780円
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購入日
2018年02月09日
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購入場所
HMV
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