DENON DL-103シリーズといえば、日本製のフォノカートリッジを語る上で、特にMCカートリッジの代表的存在ということで欠くことの出来ない存在です。私自身はこのシリーズに特別に好印象を抱いている訳では無いのですが、きっちりと使った上で評価しなければいけないと思い、オリジナルをやや現代的にリファインしたDL-103Rを購入して、たまに使っています。
現在はオリジナルのDL-103と、上記DL-103Rのみが生産され続けている状況ですが、かつては様々なバリエーションモデルが存在していました。
数多くのバリエーションモデルが存在していても、殆どのモデルは針先が標準的な丸針となっているのですが、ごく一部の製品で楕円針を採用しているものがありました。具体的にはDL-103S(1974年)、DL-103D(1977年)、DL-103M(1983年)の3モデルが楕円針となっていて、DL-103オリジナルの丸針+重針圧という古典的な構成ではなく、楕円針+標準針圧という構成を採用して、時代に合わせて進化したものとなっていました。
DL-103は元々NHKの放送用カートリッジとして、NHKとDENON(当時は「デンオン」。会社名は日本コロムビア)の共同開発により生まれた製品であり、未だにこれこそが至高の日本製カートリッジであると考えるファンも多くいます。個人的にはそこまで凄いものという認識はありませんが…。
ただ、偶然フォノケーブル等のアナログ用品を探しに行った店で、現状渡し品ではあるものの動作確認済みというDL-103Dを格安で発見してしまい、丸針を使っていないDL-103系の音に少し興味が湧いて、何となく買ってきてしまったのです。
説明書や添付品はなかったものの、外箱とケースは残されていました。
本体は年式相応のくすみはありますが、コンディションそのものはさほど悪くはなさそうです。
針先のチップはきちんと見えますし、カンチレバーの曲がり等も特に見られません。まずまず状態は良い方ではないでしょうか。
裏面です。ここに型番とシリアルナンバーが印刷されています。
オリジナルよりも誇張感は少なめ
間に合わせの状態ではありますが、一応音を聴いてみました。
まず、まともなヘッドシェルの余りがなかったため、DENON製のアルミプレス型と思われる古いヘッドシェルを用意して、リード線にaudio-technica AT6101を組み合わせました。
出来ればヘッドシェルにはもう少し剛性が高いものを用意した方が良いと思います。ただ、あまり重量級のシェルではない方が良いらしいですので、軽量級のシェルとの組み合わせ自体は間違っていなさそうです。
この写真で見る限り、ダンパーもきちんと効いていますし、トレースにも問題はありませんでした。
さて、以前から所有しているDL-103Rはレンジ感がやや狭めで、帯域内の目立つ部分を少し持ち上げた判りやすい音という印象でした。
それと比べるとDL-103Dは高域方向は明らかにストレス無くよく伸びています。ただ、DL-103Rにあった誇張感が感じられず、一聴するとやや地味に感じられます。低域は力感も充分あり、引き締まった反応の良いものなのですが、反面高域方向はやや解像度があまく、キレもさほど無いという印象です。この製品本来の音であれば、もう少し高域方向も解像度が高くて良いはずなのですが、ヘッドシェルの剛性不足なのか、或いは劣化によるコンディション面での問題なのかは判断できませんが、低域以外の音はやや古さを感じさせます。
ソースでいえば「GIPSY KINGS / GIPSY KINGS」などはもう少し緊張感や声の張りが感じられれば良いかな、と感じるものであり、「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band / The Beatles」などはレトロ感がなかなか上手くマッチしてなかなか良い雰囲気になるといったところです。「Fahrenheit / TOTO」では高域方向の金属感がもう少し出て欲しいという音になります。
DL-103系の製品らしく、音場は適度な広さであり、音に変な癖が付かないという辺りの印象も悪くはないのですが、さすがに最近の製品であるAT-OC9/IIIやAT33Rと比べるとそれなりに古さを実感させられるという結果でした。
今回は3千円という価格で購入していますので、その価格のカートリッジとしては文句なしに楽しめることは間違いないでしょう。そのうちヘッドシェルやリード線を交換して、もう一度試してみたいところです。
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購入金額
3,240円
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購入日
2019年04月10日
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購入場所
ダイナミックオーディオ トレードセンター
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