レビューメディア「ジグソー」

独創性の強い国産MCカートリッジ

今までMM/MCを問わずいろいろなカートリッジを使ってきましたが、一度は使ってみたいと思っていたのが、かつて存在したSATIN(サテン音響)製のカートリッジでした。

 

可能であれば高年式の後期製品を使いたいところではあるのですが、SATINは今でも熱狂的な支持者が多く、状態の良い高年式ともなるとプレミア価格となってしまいとても手が出ません。一度地元のHARD OFFにM-14が出てきたことがあったのですが、一見正常なもののスタイラスの先端が脱落していて、入荷時の検査ではレコードの溝をトレースすることが出来なかったということで、結局入手することは出来ませんでした。

 

先日通販を眺めていると、ジャンク扱いではない割に、価格がそこまで高くないSATIN M-11Eを見つけました。一応チェック時に正常に再生できたらしいということで、こんな機会は滅多に無いだろうと購入することに。

 

実際に届いた現物はこちらでした。

 

 

 

 

 

 

シェルリード線は右+チャンネルが千切れかかっていますし、カートリッジ本体もきちんと固定されていません。音は出るかも知れませんが、このまま使える状態でもないというところです。

 

シェルリード線は最初から交換するつもりでしたが、ヘッドシェルもまともに固定できていないのは論外ということで交換することにします。

 

ただここで一つ問題がありました。M-11Eは本体重量が14.5gとかなり重いのです。私が愛用しているターンテーブルTechnics SL-1200Gのトーンアームはサブウエイトを使うことで最大28.5gまで対応することは出来ますが、それでもヘッドシェル・シェルリード線・ビスに許される重量は14gということになります。

 

ところが生憎手持ちのヘッドシェルで、比較的質の良いものの余りが

 

 

・audio-technica AT-LH18/OCC (本体のみで約18g)

・My Sonic Lab SH-1Rh(本体のみで約14g)

・Ortofon LH6000(ビスを除いて約14.5g)

 

 

と、軒並み重量オーバーだったのです。昔のカートリッジに付いていたようなペラペラのアルミプレス型であればいくつか軽量なものはありますが、それで音質の判断をするのもちょっとどうかと思ってしまいます。

 

そこで妥協して、SL-1200Gに標準添付されているTechnics製ヘッドシェル(約8.7g)で暫定的に組み上げることにしました。シェルリード線はaudio-technica AT6108を使います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SATINのMCカートリッジは針部分の着脱が可能な構造となっていて、針カバー欠品のこの個体でも針を外しておけば作業を安全に行うことが出来ます。この構造でなければ針カバー欠品のMCカートリッジカートリッジはなかなか買いにくいところです。

 

 

 

 

 

 

 

SATIN製カートリッジのターミナルピンは横一列に配置されていて、シェルリード線の着脱はかなりしやすい方です。ただピンそのものが細く、リードチップを少し締めてやらないと簡単に外れてしまいます。

 

更新: 2023/02/07
総評

中域の密度感と質感でオールドロックが心地良い

それでは早速試聴してみようと思ったのですが、気になった点がありました。それは最初の写真でご覧いただけると思うのですが、カンチレバーがカートリッジのボディから殆ど浮いておらず、少しでも沈んでしまうと針より先にカートリッジの腹の部分がレコードの盤面に当たってしまうというクリアランスの不足です。この位置から殆ど沈まなかったとしても、反りが激しいレコードは無理でしょう。

 

同じカートリッジをお使いのタコシーさんのレビューでもやはりカンチレバーは同じ状態のようですが、これが出荷当時からだったのか経年変化によるものなのかは判断できません。

 

 

そこで普段の試聴盤は使わず、100円で買ってきて放置してあったレコードの中から比較的状態が良かった「Chicago III / Chicago」(国内盤再発 25AP618~9)を聴いてみることにしました。これは100円レコードの割りに傷もなく反りも殆ど発生していなかったためです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

M-11Eは出力電圧が4mVとMM並に高いため、フォノイコライザーPhasemation EA-200はMMポジションにセットして音を出します。適正針圧は0.75~4.0g(推奨2.0g)とかなり幅が広いのですが、前述の通りクリアランスの不安があったためやや軽めの1.5gにセットしました。

 

 

印象としてはエネルギーバランスはやや中低域寄りで、ハイの方の伸びはやや落ちているというものです。「Lowdown」のピーター・セテラのヴォーカルは生っぽい質感がよく出ていますし、お世辞にも録音が良いとはいえないホーン部隊やドラムも何となく生々しさのようなものがプラスされているように感じられます。常用しているAT-OC9/IIIと比べると解像度はさほどないものの雰囲気は濃くなるという傾向です。

 

高域方向は少し大人しくなってしまいますが、細かい音はかなりきちんと拾っているようで、ハイハットの質感も決して悪くはありません。

 

ただ推奨の2.0gよりも結構軽い針圧で使ったためか、テリー・キャスが演奏するちょっと荒っぽいギターの音が割れ気味になってしまいます。針圧を上げれば解決する可能性は高いのですが、どこまでの針圧に耐えられるのかは慎重に試す必要がありそうです。

 

取り敢えずの動作確認でしたのでここで試聴を終えましたが、後日改めてヘッドシェルやシェルリード線を用意したり針圧をいじったりして、もう少し突っ込んで検証してみようとは思っています。問題が無ければ改めて最近のレコードも使って試聴してみたいと思います。

 

  • 購入金額

    14,300円

  • 購入日

    2023年02月05日

  • 購入場所

    HARD OFF

14人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • タコシーさん

    2023/02/08

    M-11Eは針先というかカンチレバーがレコード面ギリギリです 隙間が1ミリも有るかどうかです(全般的にSATINカートリッジはそういう傾向が有ります)M-11E,M-14,M-15迄は構造が似ています レコードの反りにも弱く弾かれることも有ります。 カンチレバーをアーマチュアで受けている(抑えている)ので針先のフレキシビリティも無いため高低のあるレコード面には弱いですね。
  • jive9821さん

    2023/02/08

    > タコシー さん

    SATINのカートリッジの情報はタコシーさん頼みなので
    助かります。

    やはり全体的にクリアランス不足なのですね。あれほど
    余裕がないとなると反ったレコードには特に注意が必要
    そうです。

    それこそM-18系やM-21系辺りを一度は使ってみたい
    ところですが…。

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