先日紹介した、アキハバラe市場の1.5万円福袋に入っていた中身が、このAstell&Kern AK Jrとなります。
私自身、これまでAstell&KernブランドのDAPとしては、第一号モデルとなるAK100(初代)、AK100II(第2世代のローエンド)を使ってきていますが、より上位のモデルも含めてそれなりの魅力はあるものの弱点も多い製品であり、そこそこ安く売られていれば魅力的という評価でした。
AK Jrは第2世代の製品群が出そろった後に、さらに下の価格帯を担うべく登場したモデルでしたが、内容的には第一世代のAK100(というよりはAK100の弱点解消モデルであるAK100MKII)を薄型筐体に仕立て直したような製品でした。従って発売当初は価格も思いの外高く、初代AK100(発売当初の直販価格54,800円)よりも上の価格(直販価格69,800円)が設定されていました。
また、第二世代では全モデルに共通して搭載された2.5mm4極のバランス端子は搭載されず、D/Aコンバーター等もAK100系と同等の構成(Wolfson WM8740を1基、第二世代はCirrus Logic製を採用)となっていて、明らかに前世代をベースとしたことが容易に判別できる製品でした。
現在のラインアップでは、この価格帯には第二世代をベースとしたローエンドモデルであるAK70が投入されていて、仕様面ではこちらの方が遙かに充実していますし、音質面でも魅力が大きいものとなっています。はっきり言ってしまえば、AK70よりも大幅に安く売られていなければ、今敢えてAK Jrを買う価値は感じられないでしょう。
とはいえ、安い福袋の中に入っていればそれなりに価値はある製品であることは間違いなく、1.5万円で買えるDAPとしてはきわめて良質といえます。今回はあくまで格安DAPという視点での評価を書いていこうと思います。
外装の状態などは、前述の福袋のレビューの方で触れていますので、そちらでご覧ください。箱はそこそこ破損があるものの、中身は美品というものでした。
AK100よりは進化している
実は間もなく修理に送ってしまう予定なので、試聴は最低限のみ行いました。使用したヘッドフォン、イヤフォンは次のものです。
他に、まだレビュー未掲載ですがSENNHEISER IE60やSONY XBA-A2、IE80もどきも使っています。
まず、AK100との違いがはっきりとするのはFOSTEX T50RP mk3nを使ったときでした。AK100ではアンプの力不足が顕著で、低域は取り敢えず音が出ているという水準だったのですが、AK Jrではベースラインの明瞭度こそもう一つなものの、AK100ほどのひ弱さは感じられません。取り敢えず実用に堪えるというところでしょうか。
一方でイヤフォンを使うと、特にATH-IM02やATH-CKR10を使うと顕著なのですが、これまで聴いたどのAstell&Kernの製品とも全く傾向が違っています。低域方向は比較的厚めで押し出しも良い(但し最低域方向の力感は無い)のですが、全帯域に渡ってどこかキレが乏しく元気がありません。確かにAK3x0の音もロック系でのキレはないのですが、重厚感はかなりあります。Ak Jrの音は一見整っていてどこかひ弱でキレがないという、SONY WALKMANの高価格モデルにありがちな音なのですが、Astell&Kernの製品ではなかなか珍しい傾向です。
意外なことに割合相性の良い組み合わせだったのは、そのSONY製であるXBA-A2(下記ケーブルに交換したもの)です。
XBA-A2も低域に強いピークのある製品ですので、結構癖の強い音ではあるのですが、AK Jrのどことなく漂うひ弱さが上手くカバーされるようです。
AK JrはAK100IIと比べても低域の厚みはあるのですが、AK100IIのような高域方向の緻密さや弦楽器のリアリティはあまり感じられません。発売当初は価格帯が近かったSONY NW-ZX1との比較では一長一短、いやどちらかというと二長一短というべきでしょうか。
高域の透明感はNW-ZX1に分がありますが、低域方向のパワー感やアンプの駆動力などはAK Jrに分があるでしょうから。
発売当初の価格が高すぎた
AK70の登場以前から、市場の反応も今一つ微妙なものだったAK Jrですが、原因は明らかに高すぎた初期の価格にあるでしょう。
Ak Jrというモデル名からAK100よりも安価な製品の投入を期待した人が多かったと思うのですが、いざ発売されてみるとAK100よりも0.5ランク上に投入されるという形であり、しかも実力的にはAK100MKIIと大差ないということで、割安感を出せていなかったのです。製品写真が出た当初は、SONY NW-A10系のライバルになるのではないかと期待されていましたからね。
初代AK100や、NW-ZX1を実際に使っている立場から見れば、発売時点で直販価格が49,800円程度だったとすれば、かなり売れる可能性はあったのではないかと思うのです。ブランド価値を高めるために敢えて高級化、少量生産という方向に進んだのだとは思いますが、それがAK Jrという製品については存在を半端なものにしてしまった原因ともなってしまいました。
現在では処分価格で3万円台は見られる程度に安くなりましたので、SONY NW-A20系/A30系と真っ向から張り合うライバルとして十分選択肢になり得るでしょう。発売時点でAK100より安価であれば高く評価されたと思われる実力は持っているだけに、少し不運な製品だったという印象です。
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購入金額
15,000円
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購入日
2017年01月08日
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購入場所
アキハバラe市場
cybercatさん
2017/01/10
これが398で出ていたら、バカ売れしたと思うけれどなー。
ましてや枯れた内容の機械の焼き直しなので利幅も確保できたと思うし。
これは値付けで自分の首を絞めた感じですね。
jive9821さん
2017/01/10
そうなんですよね。最低限AK100初代より安いというのは絶対条件だったと思うのです。
AK100「未満」に感じられる型番(中身は未満ではないのですが)で、SONY WALKMANの上位モデルであったNW-ZX1とほぼ同価格帯ですからね。「高級」というよりは「高すぎる」イメージがついてしまった感がありました。
最初から5万円以下なら十分アリという音質ですし、高級化自体は否定しないものの、この機種だけは安売りするという戦略もとれたと思うんですよね。いろいろな意味で勿体なかったなと感じます。