3月31日(土曜)の午前8時頃、通販ショップのNTT-Xストアで毎度恒例の年度末の最終処分セールが行われていました。箱汚れという名目で、普段では考えられないほどの特価販売を行うものです。
実は今回はHDD、SSD、メモリーモジュール等のPCパーツ系で何か出てこないかと期待していたのですが、期待とは異なり特に値引きが激しかったのはオーディオ分野のものでした。私は開始時間に少し出遅れてしまったため、かなり品数が減った後で見たことになるのですが、当日の早朝、値下げを開始する前ですらCHORD Mojo(国内代理店経由)が39,800円だったのですから、恐らくそれ以上に安くなったのでしょう。
売れ残っていた中で私が興味を引かれたのは、以前から比較的高く評価していたAstell&Kern KANNが直前の特価よりも3万円ほど下がっていたというものでした。丁度64AUDIO U4をリケーブルしたことで現用のAstell&Kern AK100IIの力不足が露呈したこともあり、中古相場よりも安くなっていたことも手伝って、金はないといいつつも買ってしまったのです。
特価の名目は「箱汚れ」だったはずなのですが、見た限りでは特に汚れていない、ごく普通の新品在庫としか言い様がないコンディションでした。
内箱の色調などはいつも通りのAstell&Kernという印象なのですが、KANNに関してはパッケージ周りの演出はさほどされていない、シンプルなものです。
箱を開けると、右側に本体が、左側にマニュアル類や付属品が収められています。
主な添付品です。一応Astell&Kernらしく、液晶保護フィルムは標準添付されていますが、ケースやポーチの類はありません。AK100IIなどはジャケット型ケースが標準添付されていたのですが…。
やはり厚みは気になる…
これは直接ご覧いただいた方が良いでしょう。
ディスプレイに正対する形で見ている限りは、ごく普通のDAPという外観なのですが…。強いて言えば、再生やトラック送りなどのキーがハードウェアボタンでフロントパネルに実装されているというのは、あまり最近は見かけない形かも知れません。
背面は大胆にカットされて、台形のようになっていることがおわかりいただけるでしょうか。また、上下に走っているラインは実際に立体加工されていて、ホールド性の向上に一役買っています。
上部のパネルには電源ボタンの他、端子が4つ用意されています。これは3.5mmアンバランス、2.5mmバランスが各2個ずつ用意されていて、それぞれヘッドフォン用とライン出力用となっています。この2つはアンプ回路自体が分かれているため、音質もある程度異なるものとなります。
今まではヘッドフォンで聴くためには出力レベルを可変出来るヘッドフォン側の端子を使うしかなかったのですが、最新のファームウェア(Ver 1.11)でライン出力側でもボリューム調整が可能となり、こちらでヘッドフォン・イヤフォンを使うことも出来るようになりました。
本体下部のパネルには、SDカード(標準サイズ)スロット、microSDカードスロット、USB type-C端子(充電・ファイル入出力用)、microUSB端子(音声信号伝送用)が用意されています。標準サイズのSDメモリーカードに対応しているというのはなかなか便利です。
Astell&Kernにしては珍しい、陽性のトーン
音質については、イヤフォンとして64AUDIO U4、JH AUDIO Michelleを、ヘッドフォンとしてSENNHEISER HD650、FOSTEX T50RP mk3nを使ったほか、外部DACを介してトランスポートとして使った場合についても触れたいと思います。
まず、イヤフォン2機種ではっきりと判るのは、ベースと思われるAK300系の厚みはあるものの反応が鈍い音とはかなり傾向が異なるということです。どちらかというとアメリカ西海岸系の明るいロックサウンドが似合うタイプの音色傾向を示します。
オーディオ的な次元こそ異なるものの、かつてのHDD内蔵型Apple iPodの古き良きサウンドを思い出してしまいました。今までAstell&Kernのプレイヤーはどちらかというとトーンとしては暗い音色のものが多かったので、ここまではっきりと陽性のトーンになっているのは少々予想外です。
ヘッドフォンについても、実は試聴に使った2機種はいずれも一般的なDAPでは鳴らしきることが難しかったものだったのですが、元々の出力に余裕がある上にゲイン切り替えがあるKANNであれば、十分鳴らすことが出来てしまいます。T50RP mk3nではいかにもこのヘッドフォンらしいドンシャリサウンドが楽しめますし、HD650は本来の持ち味である落ち着いたトーンが少し後退する傾向はあるものの、低域のレスポンスも良好で、AK100IIのように取り敢えず音が出ているに過ぎないという次元とは一線を画しています。
そしてトランスポートとしての性能については本来試す予定はなかったのですが、先日オーディオ店に顔を出したところCHORD HugoIIの試聴に誘われ、その際の試聴ソースの送り出し機器としてKANNを利用しましたので、その印象をまとめておこうと考えたのです。
試聴の際に組み合わせた機器は、
DAC:CHORD HugoII
アンプ:Accuphase E-650
スピーカー:PIEGA Premium 301
となります。トランスポーターとしては、同じく私が持ち込んだONKYO GRANBEAT DP-CMX1も併用しました。
面白いことに、HugoIIを介してもKANNの明るくやや乾いたアメリカ西海岸系の印象はそのまま残ります。さすがに一音ごとのクオリティーは十分に高く、このクラスのオーディオ機器と組み合わせてもポータブル機器を意識させることはさほどありませんでした。強いていえば、Diana Krall辺りが西海岸系の陽性サウンドだと、やや違和感を覚える部分はありました。ただ、TOTOなどロック系の楽曲が非常に心地良く鳴ってくれます。もっとも、PIEGA Premium 301はあまりキレの良いタイプの音ではありませんので、スピーカーとのミスマッチ感は少しありましたが…。
そしてKANNの代わりにDP-CMX1を接続してみると、KANNの時にあった陽性のトーンは影を潜め、やや落ち着いたという印象を受けるように変化します。音場はKANNよりもやや狭まり、最低域の深さや高域の伸びはKANNに一歩譲るものの、どのジャンルのソースも満遍なくそこそこ高い水準で鳴らしてくれるようになりました。この使い方に限っていえばDP-CMX1が意外なほどの健闘を見せ、KANNの方がかすんでしまったほどでした。
とはいえ、DAPとして単体で使うことになったときには、音色の癖こそ感じられるもののKANNのアンプの強さには大きな魅力があります。今までAK100IIやDP-CMX1では、アンプにもう少し力があればと感じさせられることが多かったのですが、KANNではそのような非力さは全く感じられません。
普段DAPに出せる金額は3~4万円程度と言っている私としては、その許容範囲を大きく超える金額のプレイヤーを買ってしまったのは自分でも意外でした。ただ、KANNの実力があればヘッドフォン・イヤフォンの試聴のためだけにAK100IIとONKYO DAC-HA300を2台持ちする必要は無くなりますし、DAPに3万円ほど追金してアンプも買ったと思えば許容範囲と考えて、自分を納得させています。
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購入金額
59,800円
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購入日
2018年04月01日
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購入場所
NTT-Xストア
cybercatさん
2018/04/08
ただ、自分はDAPとポタアンの2台持ちはやらないつもりなので(そこまで携帯性を損ねてまで外で聴く気が起きない)、その意味では「最強」なのかな?
イヤホン・IEM購入熱が持続しているので、そちらに金を吸われてますから、DAPは当面買う気はないのですがw
harmankardonさん
2018/04/08
AngieⅡで,AK70Ⅱと聴き比べましたが,圧倒的にパワーが違いました.
音質的には,AK70Ⅱが上位機種の系統でしたが,KANNのパワーには勝てません.
KANNなら,どんなイヤホンでも問題なしでしょうね.
jive9821さん
2018/04/08
実際に使ってみるとAstell&Kernらしくない音という印象が強くなりました。もっとも、決して悪い方向性ではないので、少なくともAK3x0よりはむしろ良かったと思っています。
ちなみに私も2台を繋いでのDAP+ポタアンはやりませんが、試聴の時だけDAC-HA300を使うことはあります。以前Astell&Kern AK10を短期間使っていたのですが、予想以上に面倒くさくなりAK10は直ぐに持ち歩かなくなりましたので…。
jive9821さん
2018/04/08
やはり本体の厚みはどうしても気になりますね。ただ、AK AMP相当のアンプを内蔵していると考えれば理解は出来る程度とのいえます。
純粋な音質ではAK70 MKIIの方が整っている気もするのですが、T50RP mk3nでも鳴らせてしまうアンプはやはり他ではなかなか得がたい魅力といえそうです。