最近CDの規格を超えるハイレゾ音源というものが市民権を得てきた。
据え置きオーディオではかなり以前からCDの規格(データ形式=リニアPCM、サンプリング周波数=44.1kHz、ビット深度=16bit)を超えるDATなども規格化されていたのだが、ソース自体が揃わなかったし、それをリスナーの元に届ける手段が限られていた。
また、携帯音楽プレイヤーはシリコンオーディオになって以降、その容量アップが短期間に進み、発売当初のmp3プレイヤーで32MB程度であった容量は、圧縮音源を扱うプレイヤーでさえ2GBと単位がかわり、FLACなど圧縮率より高音質を謳うフォーマットを採用するプレイヤーでは内蔵メモリ128GB、というのさえ出始めた。これは無圧縮のwavファイルでもCD規格の音声なら200枚分は入る、という容量で、その余った容量を曲の数よりも別の方向=高音質化に向けたものも多数出てきている。
それらは、サンプリング周波数=196kHz、ビット深度=24bitのリニアPCMから起こしたFLACや、異なる原理の高品位デジタルデータDSD(量子化ビット数=1bit、サンプリング周波数=2.8MHz)が再生可能になっている。
そんな高音質の再生環境は整いつつあるが、その再生ソースの方はまだらに浸透している。もとも生のオーケストラに比べてCDのダイナミックレンジ(約96dB)では足りないと言われていたため、クラシック系の音楽は先行してリリースされたので比較的選択は多い。また、ロックやポップスの名盤、と呼ばれるものの原盤が残っているものに関しても、レーベルによってはハイレゾ音源化が進んでいる。
これがなじみのあるJ-POPとなるとお寒い限り。ごくごく最近までハイレゾであることをアピールポイントにしたいマイナー系のアーティストしかないような状態だった。昨年末(2013年10月)音楽配信大手moraが参入したことで、MISIAやいきものがかり、宇多田ヒカルなど王道どころも入手が可能になったが、まだ全作品に及んでいる訳ではない。
日本語の歌の作品で先行したのは実はアニメ系楽曲。「アニソン」と呼ばれるこの分野はオーディオファイルと重複するのか、単に凝り性な人が多いだけなのか知らないが、同一内容のハイレゾ音源DVDを同梱したCDも発売されたりしている。
そんな層を狙って?出された“アニソンを高品位に楽しむための専門誌”「アニソンオーディオ Vol.1」。わざわざ付録のためにライヴ録音したり、マスターテープからおこしたサンプリングレート違いのファイルの入ったDVD-ROMを付録につける「Net Audio」
の特別増刊扱いなのでコイツも気合いが入っている。
記事はアニソン関係者のインタビュー(エヴァの「魂のルフラン」を歌った高橋洋子、作編曲者の大森俊之、“けいおん!”の中野梓役の竹達彩奈、“喰霊―零―”の主題歌「Paradise Lost」の茅野実里など)、ヘッドホンやDAP、ハイレゾ対応ミニコンポなどのハード、アニメサントラやアニメ系シンガーの音源レビュー(ハイレゾ音源に限らない)、初心者向けに?PCオーディオの5ステップ増強法(沼への沈降法とも言うw)、ケーブルやインシュレーターのような見逃されがちなアクセサリーにもスポットを当てた、150ページちょっとの雑誌としてはかなり頑張っている内容。
そして「Net Audio」系ならではの付録のDVDはハイレゾ音源。
アニメやゲーム系楽曲のジャズアレンジをSACDハイブリッドでハイレゾ音源もともに提供したアルバム“Pure2 -Ultimate Cool Japan Jazz-”。その収録曲「届かない恋」(PCゲーム「WHITE ALBUM2-introductory chapter-」オープニング)と「トモシビ」(TVアニメ「ToHeart2」エンディング)が収録される....のだが。
ただ単にこの作品のSACD部分をダイジェスト収録したのではないコダワリ方。
「届かない恋」の方は形式はSACDと同じDSD-2.8MGHz音源だが、「マスタリング前」。笑い声や楽器のノイズも入ってリラックスした雰囲気から、「OK!」「行きます!」そしてスティックがカウントとっての一発録り、というのが判るイイ感じのグルーヴ。定位もスタジオのままという、ピアノが左端でドラムスがかなり右に寄っている整理されていないものだが、低音の充実とライヴな空気感がステキ。冴えわたるブラスのラインと飛ばすドラムスのビートが心地よい。なんと言ってもシンバルの音がいいなぁ。金属の上で木製のスティックが弾んでいるのが判る。途中のサックスソロのバックのベースのグルーヴ感も!
つづく「トモシビ」は女性ヴォーカリストSuaraをフィーチャリングしたミディアムテンポの曲だが、ぶぅーん、ぶぅーんと緩やかに唸るウッドベースとヴィブラフォンの軽やかな音が、優しいSuaraの声と絡む。この曲もマスタリング前なので、鮮度がスゴイ。特にハイハットシンバルの締めきらない音でエッジの内側が鳴っている感じはまさにドラムの前に座っているがごとく。この「トモシビ」は192kHz/24bit録音されたものをラフミックスしたDSD-2.8MGHz音源が元だが、そこから96kHz/24bitのPCM変換されたファイルもつく。「96kHz/24bit」というと立派なハイレゾ音源なのだが、聴き比べると元のDSD-2.8MGHz音源の方がシンバルの音がスゴイ。シンバルって点音源ではないので、エッジやボウ、カップなど叩いていないところもウワーンと鳴っているのだが、それがDSD-2.8MGHz音源では判る。ただこれは両者のフォーマット上の優劣の差ではなくて、DSD-2.8MGHz音源が変換元で96kHz/24bitのリニアPCMの方が変換先という一回劣化の工程を通っているからだけかもしれないけれど。
記事では自分の持つAstell & Kern AK120
等の紹介記事などもあり、興味深く読んだ。
結構面白かったなぁ...「Vol.1」ということで次も期待で!
【内容】
巻頭インタビュー 高橋洋子・大森俊之
特別対談 ソニー音響設計技師 金井 隆×フィックスレコード社長 下川直哉
オーディオ的アニソンのススメ!
How to オーディオ・システム ~システム構築のコツ~
製品レビュー 「ポータブル編」「コンパクト編」「スタンダード編」「アクセサリー編」「ハイエンド編」
特別付録 F.I.X.RECORDSレア音源DVD-ROM「届かない恋」「トモシビ」
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購入金額
2,000円
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購入日
2014年03月頃
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購入場所
カルコス
北のラブリエさん
2014/05/31
買おうかな!
cybercatさん
2014/05/31
DSDとその192kHz/24bitリニアPCM変換はやっぱり違いが判りますね。