所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。VOCALOIDという歌声を合成できるソフトによって、「クリエイター」人口は爆発的に増えました。今まで曲のアイデアはあっても、それを演奏するすべがなかった人達、そしてそれを発表する手段を持たなかった人達。それが今、前者は安価なシーケンサーソフトと専用のハードウエアを使わず、PC上で音色をシミュレートするソフトウエアシンセサイザーで、後者は一般の人が無料で広く動画を公開できるYouTubeやニコニコ動画といったプラットフォームの整備によって、可能となりました。そこに最後の1ピース、「歌」をはめたのがVOCALOID。自分の声に自信がない人、録音するための機材を持たない人、自分の性とは異なる歌声を欲する人...そんなひとたちに、歌付きの曲を創るすべを提供したソフトウエアを駆使した作品をご紹介します。
音声合成ソフトVOCALOID。初期はイノベーターが自分の創造域にある映像と音楽を完全にシンクロさせた作品
を出したり、アーリーアダプターたるPたちが人にはできない可能性を追求したり
したが、既にこの人工の歌姫は完全に市民権を得た(そういう意味ではもうアーリーマジョリティに受け入れられている、と言うことなのだろう)。
当初「人工である」「合成である」ことを意識させる/もしくは/あえて意識させないようにした(手を加えた)作品が多かったが、今ではごくごく一般の「楽器」のひとつとしとて受け入れられている。それは前世紀に、シンセサイザーが「誰も聴いたことがないこの世になかった音を合成する」ことから「簡単に複数の楽器の音色を呼び出せる万能楽器」へと変化し、シンセサイザーを「使う」ことから、それで「創る」ことに比重が移ったときに似ている。
そんなVOCALOIDを使って作品を発表するボカロP達のコンピレーションアルバムがこちら。ベテランPから新進気鋭のPまで広くVOCALOIDを使った作品が並ぶ。
「君の体温」。まるで女子JAZZアレンジのカバーアルバム
を彷彿とさせるような、ハイスピードなピアノ主体のジャズテイストのアレンジに、やや棒読み調の?ヴォーカルがのる。歌詞もちゃんとラブソング♪懐かしい君の声を聞いたよ/今はもうはるか遠く響く音/温もりが欲しくて繋いだ手を/僕ら愛なんてよんだ♪男が別れた彼女のことを歌う歌。歌詞カードにある作者のクワガタPのコメントがおもしろい。「男の恋は名前をつけて保存、女の恋は上書き保存」ww
「Red Brick Warehouse」は、まるでPerfumeが歌いそうなテクノポップ。キャッチーなサビの他は、シンベの音のループパターンに、ほとんど歌詞がないサンプリングヴォイスが散らされた、ディスコミックスといった風情。KTG(Aliced Twilightz)の手になるこの曲は、書き下ろし。
そして..「Horizontal Grays」。トリを飾るのは、cybercatがこのVOCALOIDに注目するきっかけとなったTripshots
の作品。例によって、端々まで意識の行き届いた音世界(つか、彼が参加しているからコレ買ったんですが)。リヴァーブのかけ方が多重で深く、意識が拡散していくような世界が広がる、ヘッドホンで目を閉じて聴くと、吸い込まれるような溶けていきそうな快感。それを支えるのは、ミクの透明な声。
VOCALOID、特に完成度が上がったVOCALOID「2」の初代、「初音ミク」が発売されて既に5年超。もうそれは「特別なもの」ではなくて。
デジタル楽器のひとつとしてVOCALOIDを使いこなし、創作活動を始めた当初から選択肢の一つとしてVOCALOIDがあった世代。
そんな世代がボカロ界を支える時代が、緩やかにまわり来ようとしています。
【収録曲】
1. blue bird →EX:P EDIT- / とくP
2. 君の体温 / クワガタP
3. ロッテンガールグロテスクロマンス / マチゲリータ
4. Red Brick Warehouse / KTG(Aliced Twilightz)
5. サクラサク / 8#Prince
6. rehash / baker
7. OVER / Shake Sphere
8. ピアノ・レッスン →asp mix- / 古川本舗
9. 可能世界のロンド / millstones
10. Hoover / Denkitribe
11. エバーライジング / Aether_Eru
12. Wish -Arrange Ver.- / 19's Sound Factory
13. カナリア / nolfest(あわあわP)
14. おもちゃのテクノ / ちゃぁ
15. ワールドアウトサイド / arata
16. Horizontal Grays / Tripshots
「君の体温」
つい先日もAdoが歌ってリバイバルした「君の体温」も収録
新世代ヴォーカリストと言われるAdoが、初投稿曲に選び、先日(2022年1月)にも歌い直した「君の体温」のオリジナルを聴け!
-
購入金額
2,000円
-
購入日
2010年頃
-
購入場所
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。