所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。音楽はその名の通り、「音を楽しむ」行為ですが、自己表現の場でもあります。それは自分の感動を他者に伝えたり、恋人に優しく愛を込めて歌ったり...そんな和やかな表現ばかりではありません。自分の想いを歌に託して叫ぶ。常に虐げられたものの側に立ち、世の中の不条理をつき、弱者の権利を擁護し、正義と愛を歌う歌人の作品をご紹介します。
Tracy Chapman。黒人女性歌手。スタイルとしてはギター一本、もしくはギター+小編成のアコースティック系楽器という形が多く、シンプル。ジャンルとしてはフォーク~カントリー系に分類されていることが多いが、黒人ならではのリズム感とそのメッセージ性の強い詞で特異な立ち位置にいる。
彼女の詞には血が、涙が、汗が感じられる。そして不屈の闘志と限りない愛とが。
彼女の想いのたけを歌に託して世の中に向かって叩きつける、そんな曲たち。
彼女の2ndアルバムである本作は、デビューアルバム“Tracy Chapman”よりは丸くなった...といわれるが、それでもなお、尖った石を握り締めたときのような感触。
「Crossroads」はアフリカ的パーカッションのリズムにアメリカ的フォークの味。そして隠せないクロいリズム感。ポップスとフォークとソウルを足して「2で」割ったような、どこのジャンルからもはみ出る彼女独特の個性。♪All you folks think I got my price/At which I'll sell all that is mine/You think money rules when all else fails/Go sell your soul and keep your shell♪かなり直截的に歌っている。交差点は誰と誰の交差点なのだろう。
「Born To Fight」。この曲で彼女を識った。曲調としてはむしろ彼女の中では特殊。かなりジャズ系のテイストもある。Snookie Youngのミュートトランペットの物悲しいオブリが彼女の声に寄り添う。ラッパ系のほかは彼女の弾く生ギに生ピ、アップライトベースにリムショット中心のドラムスとシンプル。♪But this one's not for sale/And I was born to fight/I ain't been knocked down yet/I was born to fight/I'm the surest bet♪訴えもシンプルだ。
「This Time」はアルペジオのギターと震えるヴァイオリンの旋律で始まるイントロに彼女の深い声がかぶさるバラード。盛り上がってくるとバンドも入ってコンテンポラリーな感じになるけれども、そこで歌われるのは「強い愛」。彼女の寄りかかったりしない、自立した強い愛が歌われる。
歌というものは、楽しむだけではなく、自己表現のひとつの形である。
歌の「原点」の深淵を覗き込んだような作品です。
【収録曲】
1. Crossroads
2. Bridges
3. Freedom Now
4. Material World
5. Be Careful Of My Heart
6. Subcity
7. Born To Fight
8. A Hundred Years
9. This Time
10. All That You Have Is Your Soul
「Born To Fight」
「Born To Fight」カラーを期待すると少し違う
ただどの曲も強いメッセージ性がある
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購入金額
2,200円
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購入日
1989年頃
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購入場所
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