レビューメディア「ジグソー」

Chicagoを期待すると肩すかし。別物として聴くべき。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。グループとして活動しているアーティスト、そのメンバーの中には「顔」というべき人もいれば、長く在籍していて曲作りなどでの貢献度も高いメンツであっても、プロモーション的に華がなく(華を持たせてもらえず)通好みのメンツとなってしまっている人も出てきます。アメリカンビッグネームに最初期から在籍していながら、特に一時期不遇をかこっていた人物のソロ作品をご紹介します。

Robert Lamm。Chicago

のオリジナルメンバーで、かつ、2013年4月現在現役メンバー。Chicagoのデビュー曲「Questions 67 and 68」や1stアルバムの実質的な1曲目「Does Anybody Really Know What Time It Is?(いったい現実を把握している者はいるだろうか?)」、名曲「25 Or 6 To 4(長い夜)」や「Beginnings」、「Saturday In The Park」などを提供し、初期にはバンドカラーとなるような曲を成しながらも、Peter CeteraやBill Champlinのようなその時代の「顔」となれる様な華に恵まれず、特にChicago16以降の「ザ・シカゴ・バラード」路線でChicagoに興味を持った人には「そんな人もいたねぇ」というレベルかも知れない。

しかし、詞の深さやソングライティングの能力の高さは折り紙付き。そんな彼がChicagoの第2低迷期?、アルバム「TWENTY 1」の商業的失敗でバンドとプロデュース側の関係がギクシャクしていた1993年に出した2ndソロアルバムが本作。

Chicagoの初期のヘヴィな「25 Or 6 To 4(長い夜)」や明るくステディな「Saturday In The Park」を期待して聴くと、違う。もちろん、「ザ・シカゴ・バラード」でもない。ドラムはすべて打ち込みで、カラーとしてはちょっとトロピカルなイメージもある曲達。詞の内容は相変わらずスルドイが、曲としては比較的ポップ。

「My Neighborhood」。アルバムの最初と最後にVersion違いが収められるこの曲は、「Version A」がRobertがキーボード、当時のChicagoメンバーDawayne Baileyがギターでやや直接的なのに対して、「Version B」はJohn Van Epsのやや柔らかいキーボードと変調の効いたJohn McCurryのギター、さらに厚いコーラスが入ってゴージャスな感じ。ラテンパーカッションがフィーチャーされ、ホノボノとした南国的な感じの曲。

「Ain't No Ordinary Thing」はP-Funkの中心人物、Bootsy Collinsがファンキィなベースを聴かせるグルーヴィな曲。Robertの歌い方もクロい。Chicagoの時の歌い方より多彩な感じで、唸るようなドスのきいた声からファンキーな裏声まで。Bootsyの存在感あるベースに負けないように?

ややアフリカっぽいパーカッションとソレっぽい♪U,Ee,O,Ah,O♪というかけ声のコーラスが入る「When Will The World Be Like Lovers」はスラップベースの打ち込み音でリードする硬質なイメージの曲。本来Chicagoのために書かれたというこの曲は、コード展開は結構フュージョンぽかったり、John McCurryのギターが歌のバックのクリアなカッティングと激変するどハードでヘヴィな弾きまくりなソロの対比など結構複雑な曲で採用されなかったのはそのせい??

Chicagoが16~18のあたりの第2時ピークが過ぎて低迷していた頃のソロワークス。でも契約の問題などで継子扱いにされていたらしく、日本でのリリースの方が先、という状態。しかしその後10年以上経ってから、ボーナストラックを加えて再発されたという数奇な運命をたどった作品(この再発盤は区別するために“Life Is Good in My Neighborhood 2.0”とも呼ばれる)。

Chicagoではない、でも、Chicagoではできない方向性のRobertの音楽活動を味わえる作品です。
雑誌の「LIFE」誌を模した装丁
雑誌の「LIFE」誌を模した装丁
【収録曲】
1. My Neighborhood (Version A)
2. When The Rain Becomes
3. All The Years
4. Murder On Me
5. Jesse
6. Ain't No Ordinary Thing
7. Tabla
8. In This Country
9. When Will The World Be Like Lovers
10. My Neighborhood (Version B)

iTunesアルバム紹介ページ(こちらは3曲追加された“2.0”の方)
  • 購入金額

    2,446円

  • 購入日

    1993年頃

  • 購入場所

13人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • jive9821さん

    2013/04/30

    この作品はファンの間でもあまり話題に上がらないのですが、後で考えると意外とターニングポイント的な作品となっているんですよね。

    「All The Years」は当時お蔵入りすることになってしまった「Stone of Sisyphus」の収録曲でしたし、「When Will The World Be Like Lovers」は「Chicago 18」のアウトテイクですし。

    ちなみにChicago版の「When Will The World Be Like Lovers」のDL販売などは出来ないかと日本のファンがRobertに直接尋ねたのですが、「自分でも権利関係がわからなくなっていて難しいと思う。YouTubeで探して」との答えでした。そういえばこの曲はDavid Fosterも作者としてクレジットされていて、David Foster作品のカバー曲集である「Fly Away / The Songs Of David Foster」でも取り上げられたのですが、等のDavid Fosterは「俺そんな曲作ったっけ?」と言ったとか…。
  • cybercatさん

    2013/04/30

    jive9821さん、ようこそ!
    この方面だと必ずコメントいただけますねw
    >「When Will The World Be Like Lovers」は「Chicago 18」のアウトテイクですし。
    これは有名な話なので識っていましたが、
    >Chicago版の「When Will The World Be Like Lovers」
    権利関係はともかく、残っているんデスネー。
    聴いて見たいかも。
  • jive9821さん

    2013/04/30

    Chicagoのファンサイト以外でこの系統の話が出来る場所があまりないので、ついつい反応してしまいますw

    >Chicago版の「When Will The World Be Like Lovers」

    アルバムでは選考漏れしているので、未完成のデモトラックではあるのですが、確かに存在しています。この曲のタイトルでググると…。
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