デビュー当初から業界では注目を集めていたそうですが、3作目のアルバム「Feels Like Today」が大ヒットを記録して、カントリー好きのみならずポップス・ロック系のファンからも大きな注目を集めるようになります。その3作目に収録された「Bless The Broken Road」シングルとしても大ヒットを記録し、その年のグラミー年間最優秀楽曲賞にもノミネートされ、ヒットメイカーとしての地位を確立します。
私が彼らの存在を初めて知ったのはその後で、メンバーの1人であるJay DeMarcusがChicago15年ぶりのフル・オリジナルアルバムとなった「Chicago XXX」のプロデュースを担当したということからでした。
上のレビューの中で「本気で一般向けヒットを狙ったが、やは八方美人的な嫌いがある」と私自身書いているのですが、逆に言えばJay DeMarcusがそれだけChicagoの楽曲を幅広く理解していたということにもなるわけです。Jay自身のコメントでは一番好きなのはDavid Fosterがプロデュースした3作(Chicago 16~18)だそうで、他のアーティストについてもこの付近の時代の楽曲が特にお気に入りだそうですが、それ以前の楽曲についての研究も十分にしていたことは間違いないでしょう。少なくとも上記「Chicago XXX」にカントリーの匂いは一切なく、彼の才能がカントリーに止まらないことは十分に理解することが出来ました。
そのような中で、より一般向けのポップミュージックへと舵を切ったのが、4作目のアルバムとなる本作「Me And My Gang」でした。アメリカでは既に1,000万枚以上ものアルバムセールスを誇っていた彼らでしたが、日本デビューは本作からとなります。本作と同時にそれ以前のアルバムも日本版が発売されましたが。
本作のプロデューサーはDann Huff。プロデューサーとしてだけではなく、ギタリストとしても著名であり、数多くの大ヒット曲で彼の演奏を聴くことが出来ます。カントリーが専門というわけでもないプロデューサーであるだけに、音楽的にもカントリー的な味付けが少しだけされたポップス・ロックというイメージです。
本作からシングルカットされ、大ヒットを記録したのが「What Hurts The Most」。日本盤ではアルバムのオリジナル版とシングル版が両方収録されていて、聴き比べることが出来るようになっていますが、シングル盤の方は細かくアレンジを変え、巧みにカントリーの要素を消していることがわかります。少なくとも、シングル版のこの1曲だけを聴いている限りでは、彼らがカントリーのバンドであると気付くことは難しいのではないかと思います。
それ以外の曲も総じて親しみやすいメロディーを重視した、所謂'80sのイメージそのものという楽曲が多く並び、アレンジが少し違っていればAOR路線のアルバムといっても違和感のない作品となっています。
日本盤のみの収録となりますが、本作にはディズニー映画「カーズ」で使われた「Life Is A Highway」(Tom Cochraneのカバー曲)も収録されていて、とりあえずこの曲を目当てにアルバムを手にするのも悪くはないでしょう。ちなみに当時Rascal Flattsの所属レーベルはLyric Streetで、これはディズニーグループのレコード会社でした。勿論彼らの知名度が大きく影響したことは間違いないでしょうが、「カーズ」での起用はこの辺りが大きな理由となっているものと思います。
ただ、個人的には彼らの音楽的なピークはこの作品だったと思っています。この後発売された「Still Feels Good」などもそれだけ見れば悪い作品ではないのですが、この作品の二番煎じというイメージが強く、敢えて聴き込もうという気分にはなれませんでした。
さらに所属していたレーベルであるLyiric Streetは2010年に消滅してしまい、現在はカントリー音楽専門のBig Machine Recordsへと移っているためか、移籍後に発売されたアルバム「Nothing Like This」ではカントリーへの回帰傾向が見られ、やや一般向けからは外れている印象を受けます。
それはさておき、この「Me And My Gang」については、カントリーという先入観を抜きにして、極上のポップアルバムとして聴いていただければと思います。
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購入金額
2,100円
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購入日
2006年11月頃
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購入場所
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