ゲーミングPCブランドとして、それなりに認知度が上がってきた「Fatal1ty」シリーズ。
その製品の中でも最高峰となる、ASRockのフラッグシップ製品がコレ。
X79マザーとしては平均価格より高い価格設定だが、それもそのはず。
・Marvell製の新型SATA3-RAIDコントローラーSE923」の複数搭載。
・SATA3*6 + ESATA3*2 + SATA2*4 という、大量のSATAポート実装。
・Creative製の最新サウンドチップ「Sound Core3D」のオンボード搭載。
・背面8ポート、フロント4ポートという大量のUSB3.0ポートの実装。
・Broadcom製LANチップのDual搭載。
・X79マザーでは最速となる2500+OCメモリへの正式対応。
・12+2のフェーズ数。デジタルPWMの採用。
・従来型の倍近いダイ面積を誇るDualStackMOSFETの採用。
とにかく「載せられるものは載せちまえ」という、フルアーマーなんとかの様な超豪華仕様で、これじゃ部品コストからして「高くなって当たり前」だ。
むしろ、よくぞこの装備で実勢価格35000円前後とかで収まったものだと感心する。
最も、こうした満艦飾マザーはほぼ例外なく「相性が出やすい」という問題点がある。
なので、実を言うとコレの一つ下である"Professional"を買うべきじゃなかろうかと、店頭で迷ったのだ。
ただ、価格差が5000円丁度となると・・・後で絶対「買っとけば良かったなぁ」とか後悔するのが何時ものパターン。
今回はどのみちX79行った時点でコスト度外視(私の資金力と度胸の中においては)だ、逝っちまえということで、何となく不安を抱えながらもお買い上げ。
まあ、この判断が後々の「AMD神の神罰」という形で下ったのは、購入直後の日記にも書いた通りだ。
結局、当初予定額より三万円近くも余計な出費がががががが(血涙)
まあ、日記を参照出来ない人向けに一応の追記だが、要はデータドライブ構築用のRAIDカード「HP SmartArray P400」との間に相性が出たのである。
RAIDーBIOSは正しく表示するし、Array認識も問題ないのだが、これが刺さっていると、何故かWindowsのセットアップすら起動しなくなるのだ。
購入直後はP400刺したままでもOS導入出来たので、最初はマザーの初期不良かと思ったくらいだが、どうもPCI-ExのGenを3から1に設定(ChampのUEFIには、PCI-Exのポートごとに、これを変更する機能がある)しないと、認識が不安定になるという事が判明。
この回避方法に気付く前に、P400の搭載を諦め、RAID-ArrayごとWHS2011搭載PCに移植することにし、更にそのWHS構築の際も相性に振り回され・・・
→WHSの安定化直前に、偶然本製品のGen設定で安定化に成功。
→でも、既に本製品を組み込む先であるLevel10からはHDD撤去・配線変更済み。
→WHS移設の前に気づいていれば、三万円くらい浮いた計算。
・・・と、色々な意味で神罰すげえ状態だったのである。
さて、気を取り直し製品概要に戻る。
本製品の特徴は、とにかく「全部入り」であるにも関わらず、基本性能が優秀なことだ。
製品の動作チェックの際、メモリクロックを「1600→1860」に引っ張ってみたり、CPUを4GHzまで引っ張ってみたりしたが、サクサクとPOSTが通るので正直面食らった。
マザーボード全景。一般的なATXより、少しだけ幅広い。
今回、メモリが若干相性的に弱いようなので、OS入れての検証までは未実施(後から弄ることも可能だが、メモリ買い換えまでは保留)だが、他のユーザーの検証結果を見る限り、設定の詰めこそ難しいものの、対抗馬であるASUSの「RAMPAGE IV EXTREME」よりも、低電圧で安定して回るとのこと。
X79でOCするなら、上級者向けには決定版的なところがあるらしい。
らしい、という言葉を使わねばならんのが残念だけども、設定を詰めるとかの記事を期待された方には申し訳ないのだが、メモリを更新する費用が(それも八本セットのやつで)出るまで、その辺りは手を出せない。ご理解を賜りたい。
本機において一番の特徴は、搭載USBポートの大半がUSB3.0という極端な実装だろう。
背面8ポート、フロント用4ポートの合計12ポートという数は「むしろ多すぎる」と言うべきか。
採用チップは、私も今回初めて見たのだが、ドライバ詳細を見る限りTexas Instruments製の「tusb7340 Controller」と推測される。
このチップは、1つで専用のルートハブを介して最大4ポートを制御する事が出来るが、本機にはこれが三機搭載されていることをデバイス・マネージャ上で確認した。
動作は比較的安定しており、速度も良好。
USB3.0ハブによってポート数を稼ぐ方式ではないので、同時接続数が多くても速度劣化は起こりにくいものと思われる。
ただ、この大量搭載も善し悪しで、OSのドライバに依存するUSB3.0はOS起動時でないと、いくつかの機器が認識出来ない。
2.0はマウスとキーボード用に二つ(片方はマウス専用)用意されているが、汎用性には欠ける。
バスの帯域を無駄に食っている側面もあり、これを豪華と捕らえるか、汎用性の欠如と捕らえるかは、利用機器の数によって評価が分かれるだろう。
追加SATAは、内部4ポートとeSATA2ポートが用意されている。
コントローラーはMarvel製「SE9230」で、320MB/s前後で頭打ちがあることで悪名高い「SE9172」の後継にあたるものだ。
こちらは先代の9172のような、低めの頭打ちが発生しないとの評判だが、実際に頭打ちしないのかどうか検証してみたのが、上記のベンチ結果。
計測に利用したSSDは、先日プレミアムレビューの対象となった「SAMSUNG 830」の128GBモデル。
こいつの検証のためだけに、お買い上げしてきたものである。
確かに、リード性能の頭打ちが改善し、SATA3-SSDの性能が発揮出来るようになっているのが判る。
とはいえ、830-128Gのトップスピードは、シーケンシャル510MB/s前後の筈なので、性能は改善してはいるが、全力発揮出来るほどの改善は無いという結論になろう。
惜しいところではあるが、元のX79では2ポートしか提供されないSATA3が6ポートになるという点や、9172のような極端なガッカリ感を味合わない点を加味すれば、従来製品と比較して性能が大幅に改善されているというMarvelの主張に嘘は無い。
背面のeSATAも同チップによる制御で、内部ポートと同じWebアプリで状態監視やRAID構成の変更が可能だ。
また、UEFI側で予め設定が必要だが、同チップで制御されるドライブは、内部SATA・背面eSATAに関係なくホットスワップが可能。
制御アプリの存在もあり、RAID運用を行う場合モードによる速度はさておく(RAID5のみ、Readは素直に伸びるのだけども、Writeの方が絶望的に遅くなる。)とすれば、業務用に近い運用環境を手軽に構築する事も出来る。
LANの構成は、最近ゲーミング・マザーに多く見られるDualLANである。
チップはBroadcom製「BCM57781」で、Realtekよりはマシと評される事が多いものだが、パケットロスが酷いとか、通信が安定しないということは無く、個人的にIntelと比較してそこまで悪いという印象はない。
HUBやケーブルの品質にも拠るだろうが、我が家においてはチーミング無しで最大110MB/s強、平均して90MB/s強を叩き出しており、速度のほうも中々に良好だ。
チーミングの方法や種類については、同じチップを搭載するFatal1ty 990FX Professionalにて解説済みなので、そちらを参照してほしい。
設定ツールの使用法なども、完全に同じである。
本機のもう一つの目玉というか、殆どの人はこちらに目が行っていると思われるのが、音源周りの仕様だと思う。
SoundCore3Dチップ。ヒートスプレッダがついているが、熱々にはならない。
クリエイティブ・メディアの「Sound Core3D」をオンボードで搭載するという、他では余り例の無い構成で、それに伴うソフトウェアも付属品として提供される。
Sound Core3Dは、四つの独立した処理チップで構成されており、THX補正、入力、出力、音声処理を独立したチップで処理するという、音源チップとしては結構リッチな構成を持つ製品で、特にオンライン・ゲームにおける音質と処理性能に優れるという。
仕様を見る限り、「ゲーム自体のサウンドや効果音の処理、出力」と、オンライン・ゲームで使われる「ボイスチャットの入力処理」を、ハードウェアレベルで並行処理する事が出来るため、少なくともAC97やHDAudioといった一般的に利用されるオンボード・サウンドより高速・安定した処理が出来ると思われる。
で、肝心の音質についてだが、
これはもう明らかにオンボード・サウンドの域を超えている。
スピーカーの品質にも左右されるだろうが、殆どの人にとって「別途、サウンドカードの調達は不要」と思わせるだけの音は出る。
面白いのは、やはりゲーム用ということで、サラウンドも「音の方向」を明確にすることを第一に設計されているということだろう。
個人的な印象ではあるが、わざとゲームモードでWave録音のクラシックをヘッドセットで聴いてみたところ、楽器の位置が極端に明確化する(音楽としてはどうかと思う代物になるが)ことは確認出来た。
また、FPS向けに「スカウトモード」という「環境音を明確化」することで、音で相手の動きを察知しやすくする機能なんてのもある。
こちらは検証環境がないのでスルーしたが、BF3とかやる人にゃ面白い機能かもしれない。
他にも、ボイスチャット向けの音声を、相手に聞き取りやすくするための補正(音量の自動調整、アクセントの明確化など)を全自動で行う「CrystalVoice」という機能もある。
本来はゲーム中のボイスチャット向け機能だが、Skypeなどの通話でもきちんと補正される。
エイリアン風の声とか、お遊び的な機能もある。
逆に、相手の音声を聞き取りやすくするための補正機能もあり、こちらは映画鑑賞などで「台詞が聞き取りにくい」場合などにも有効。
イコライザによる手動補正でなく、全自動で常時最適化する上、これらの音声補正はホットキーによるON/OFFが出来るため、いちいちコントロールパネルを弄らなくてもゲーム中で切り替えられる。
「痒いところに手が届く、ただしゲーム向けにだけ。」
という、非常に割り切った構成であり、ここまで徹底されるとむしろ感心。
はっきり言って、このチップの実装分だけで他のX79マザーとの差額分、元が取れる。
8本のメモリスロットを持ち、最大実装容量は64GB。
確かにワークステーションなら、ナンボでもメモリは欲しい。だからこそ、大量のメモリ実装が求められる訳だが、一般的にそこまで使うかと言われると、正直言えば疑問。
何故かと言えば、殆どのアプリケーションがそこまでのメモリを使えるような設計ではないからだ。
でも、スロットが空いていれば挿したくなる。積めるなら積みたくなるのが人情。
では、そうした人情(?)によって搭載された、大量のメモリを有効活用するにはどうするか?
その答えの一つが、RAMドライブの構築である。
ASRockは、ここ最近に発売したマザーボードの全てに「XFast RAM」という、RAMドライブ構築機能を実装している。
勿論、ハード的にどうこうしているわけではなく、自社マザーでのみ稼働するアプリケーションとして提供しているわけだが、これが私の知る限りにおいて「最強のRAMドライブアプリ」だ。
1.ドライブの容量制限が無い。メモリ積んだ分だけ作れる。
2.IE、FireFoxのキャッシュをRAMドライブへ飛ばす設定がワンクリック。
3.システム・ユーザー双方のテンポラリを飛ばす設定もワンクリック。
4.メモリページファイルを飛ばせる。
5.ReadyBoost用のRAMドライブを、本体のRAMドライブと別途に作成出来る。
6.PCシャットダウン時、RAMドライブ終了時に全自動でバックアップを取得出来る。
7.無料。
あと、ソフト自体が軽い。常駐型のアプリだが、有償のRAMドライブアプリのように、起動がもっさりしていたり、確保に時間がかかるような事もない。
16GB実装で、その半分をRAMドライブに当ててみたところ、明らかに実行速度が改善したアプリが、IEやFireFoxは当たり前として、他にもいくつかあった。
これを無償で実装とか、偉く剛毅だなASRock・・・。
以下、まとめ
非常に良く出来てます。
Z77発売直前という、明らかに出遅れた時期に投入された製品ですが、ASRockが敢えて「出遅れでもフラッグシップとして発売した」ことが、素直に理解出来る出来です。
大量のオンボード実装により、バス周りの帯域が不足気味かとも思ったのですが、殆どの構成においてオンボード機能をカットすることなく、全機能を使う事が出来ます。(唯一の例外は3Way-SLIのみ)
相性が出やすいカードも、Gen1~3を手動で切り替えたり、レイテンシの調整で殆ど回避出来るため、UEFIの機能さえ把握出来ていれば、殆どの場合において問題になりません。
とにかく、X79で組む際に「ちょっと高くてもいい」なら買って損は無いです。
問題点は、あの起動時に毎回出てくるドヤ顔くらい。
ただ、注意する点が一つ。一般的なATXマザーより横幅が2センチほど広いので、ケースによっては収まらないとか、SATAポートが干渉する危険があります。
最近のケースによく見られる、裏配線用ケーブルホールが塞がれる場合もあるので、ケースの形状を購入前に確認しておいたほうが吉。
-
購入金額
34,700円
-
購入日
2012年06月06日
-
購入場所
daiyanさん
2012/07/28
ちょもさん
2012/07/29
CPUに繋がっているPCI-Eを使うと、BIOSからガン無視されるという鬼使用。
Z77側に繋がるPCI-E x4につないだところ、問題なく認識するようになりました。
同じSAS1078搭載のRAIDカードでも、8708EM2は素直なんですけどね…
XFast RAM、使ったことはないのですが便利そうですね。
メモリを32GBとか積んで、10GB位のディスクを作ってやればいろいろ使えそうです。
Vossさん
2012/07/29
P400は一応動作する(UEFI板で動く奴と動かない奴がある)ようですが、相性厳しいです。
こいつでもGen1設定なら問題なく稼働するのですが、組み替えめんどくさいのでWHS側へ移植しちゃいました。
ちょもどの
Z77板では動かない(UEFIの起動速度の問題っぽいけど)ようですね、どうも・・・・
相性問題で苦しんでたとき、店頭にてMSIとGIGABYTEのZ77で試して貰ったのですが、どちらもBIOS出ませんでした。
メインPCへ組み込むとハード構成を更新しづらくなるので、WHSサーバ移植により、メインから切り離したのはむしろ正解だったかもしれません。
はにゃさん
2012/07/31
Vossさん
2012/07/31
ですねー・・・・そして、個人的にこういうドカ盛系マザーが大好物なので、いらん苦労を毎回背負い込んでる気がします。