最近は、本棚に順番待ちをしている本が増えてきており、新刊で買わずとも文庫化を待ち、しかもブックオフなどの中古本を購入できる心のゆとり(?)が出来、こちらも1冊¥250で全6巻を揃えることが出来た。
カエサルの読後、ラシーヌを手にとって見たのですが、あまり乗ることができずにこちらを読み始めました。
「戦雲は西からきた。」
宮城谷昌光氏の作品は、永く時を経た芸術品のような風格があります。
煌びやかな言葉で飾り立てられた文章ではなく、徹底して余分な描写を除き去った簡潔的な文章がかえって美しさを感じさせる不思議。
そして、それが主の目的ではないのですが、良い言葉に多く出会える本でもあります。
「耳学問でも、人は上達する。耳学問のよさは、おのれが感応した教訓を、心身という生きている器に納めて、朽ちさせず、つねに活用する準備をするところにある。活用とは応用である。」
「得ようとすれば、失うのです。得ると拾うは、ちがうとおもわれます」
「夢は、忘れたころに、実現します。こだわっているかぎり、なれないでしょう」
「人の上に立つ者は、好悪をあらわにしすぎると、人につけこまれる。好悪をあらわすのであれば、正邪にたいしてだけにしたい」
第一巻一冊目にして、素晴らしい言葉の数々と出会えることができました。
肝心の物語は、北条早雲亡き後、戦国前夜の奥三河が舞台の幕開け。
徳川家康のじい様、松平清康の堯名を聞いた野田城主、菅沼新八郎は帰属していた今川家を離れる決意をして… 。
知られざる英傑たちが活躍する巨編の導入は素晴らしい情景に溢れ、命の息吹きに満ちている。
これから第二巻に進みますが、一行一行を大切に味わいながら読むことにします。
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購入金額
250円
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購入日
2011年07月頃
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購入場所
北のラブリエさん
2011/12/14
まねっことかではなく、なにか意味のようなものを。
私もこの著者の小説は好きです。
vingt-et-unさん
2011/12/15
読んでいて司馬遼太郎さんをふと感じるのは、濃やかに情景、人物を描写しつつも「俯瞰」的なものの捉え方が共通のエッセンスなのかもしれませんね。
時代の一コマに埋れていた史実を、遺跡からの出土品を丁寧にブラッシングするかのような緻密に浮き上がらせる表現方法も、読んでいてとても楽しいです。