MUSIC GEAR。
ドラムスにおける自分にとっての“伴侶”はこのシリーズの第一回でご紹介したメインスネア、TAMA SDI-146EB。
エボニー(縞黒檀)単板の深さ6.5の14インチスネアで、非常にセンシティヴで、乾いていて、でも暖かい、耳に刺さる倍音はないのに低いところに豊かな倍音があり、オールラウンダーで音が尖っていなくて、でもしっかりと主張があり「しっくり」とくるヤツ。
..でも現在メインセットに組み込んでいるのは実はこのスネアではない。
小悪魔的なバツイチオンナに浮気中(^^;。
PL5325。これは胴が金属のメタルスネア。ただ、二つの点で一般的なメタルスネアとは異なる。
一点目は材質。最も一般的なメタルスネアの材質は鳴らしやすいスチール(鉄)。これにやや高音域の倍音がマイルドで鳴りの良いブラス(真鍮)が人気で続き、低域の充実度と鋭い立ち上がりで魅せるコパー(銅)や減衰の早い乾いた音のアルミ、さらに太い音のステンレス等があるが、これは「ベルブラス」。錫(すず)と銅の合金で青銅系。非常に倍音豊かで鳴りの良い材質。どちらかというとシンバルの材質に近い。
二点目は製法。通常のメタルスネアは一枚の板を曲げて一カ所で溶接して作る(そういう意味では木胴系の「単板」と同じ作り)。しかしこれは鋳造インゴットからの削りだし(木胴ではくりぬき胴にあたる?)。要するに流し込まれたベルブラスで作られた土管状の金属の塊を旋盤加工で一定の厚さにする。このことにより完璧な真円が得られ、また溶接箇所がないため音の淀みがない。
このドラムはサイズは口径は14インチと一般的なものながら深さは3インチと1/4という薄さ。
ドラムには口径と深さの様々な関係があるが、タムタムのようにポーンと鳴らす太鼓は口径が音の高さを、深さが音の立ち上がりと長さと音色を決める。しかしスネアドラムは裏に張ってあるスナッピーをふるわせて音を出す構造であること、打面の跳ね返りを用いた奏法が多いことなどで、打面の張り具合の調整幅が広くなく、一般的に音の高さ(というか倍音の多さ・分布)は深さに大きく左右される。最近は10~13インチの小径スネアも出てきたが、一般にピッコロスネアというと口径は14インチながら浅胴(4インチ以下)のものを言う。
その区分であればこのスネアはピッコロスネアドラムと言えるのだが....
....ぜ~んぜん。
音が小さくもなければカン高くもない。
恐ろしいまでの響き・倍音、鳴りの良さ。そしてチューニング域の異常な広さ。皮がたわむギリギリの緩さで張ったヘッド、通常のスネアであれば打面は鳴るが裏面が響かずスナッピーが鳴らず、ボワンとした音になる領域でもきちんと胴がなり、スナッピーをふるわす。パンパンに張ると今度は高周波に近い殺人的な倍音の豊かさで周りを圧倒する。
これはフープ(ヘッドを押さえる輪っか)もベルブラスであることが大きい。このフープが鳴る鳴る。
やや張り目にヘッドを締めて、オープンリムショットをかまそうモノなら...
....狭い練習スタジオではアナタは嫌われ者になるでしょう..ある意味、音の暴力かもしれないw
でもその大音響の中で
・低音域の充実した芯のある音
・高音域まで伸びた豊かな倍音
・音量のダイナミックレンジ
をもつスゴイヤツだと判るハズ。
このスネアは実際売っている時には高くて買えなかった。
TAMA等の名前が通っているメーカー製であっても一般的なスチールスネアは現在も1万円台中盤からある。
それがこのモデルが流通していた1984年当時、定価130,000円。実に10倍近い高さ。
とうていシロウトが手を出せるはずもなく、フープだけ買ってガマン。手持ちのスネアに付けてその音色や倍音豊かなリムショットを味わい、満足していた。ベルブラススネアは高嶺の花、憧れで終わっていた。..終わるはずだった。
そう、20年後こいつと再会するまでは...
コイツは日本最大のオークションに出品されていた。
TAMAのベルブラススネアは今回ご紹介しているモノ以外も若干深さや金具類が違うものがあるが、元が高額商品のためタマ数自体が少ないらしく、そもそもまずなかなか出品されない。もし出ても通常6日間の出品期間中に価格が高騰し、15万を超えて手が届かなくなっていくのが普通。
それがコイツは前オーナーが急に入り用となったらしく出品期間が2日と短かったせいか、代金振込期限がオークション終了日の翌日午前と条件が厳しかったせいか、写真でも状態がカンペキでないことが見て取れたからか、とにかく多少他入札者と競りはしたが、62,000円の破格値でげっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
入手時は金具は錆び、胴も一部緑青がわくなど確かに良いコンディションではなかったが、一度全部の金具をハズし、金具は錆落としで、胴も極細のコンパウンドで磨き、各所に注油して新しいヘッドを付けて化粧直ししてやったら見事に復活。ものすごい破壊力満点の音を聴かせてくれた。
ちなみにコイツはとてつもなく重い。3.25インチサイズにもかかわらず、つり下げ式のセッティング用の金具を付けたままのエボニー単板の6.5インチに比べて1キロ以上重い。そういう意味でも存在感抜群であった。もちろんこの重さ故に「鳴る」のであるが、持ち運びの苦労を考えるとまだ外のライヴをやっていた頃に出会わなくて良かった...と変に安堵したり...。
今は私のドラムセットの中央に居座り、妖しい輝きで誘惑するワルいやつ、です。
※I have received some inquiries about this snare, but I have no plans to part with it.
ク・ソ・重・い
同時にラインアップされていた、6.5インチ版は10キロ近かったのでは??
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購入金額
62,000円
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購入日
2007年05月02日
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購入場所
Yahooオークション
sakさん
2011/06/27
マジ1回cybercatさんの叩いたの聴いてみたいス
>シンバルの材質に近い
zildjianの100周年記念で出たスネアドラムを思い出した
>恐ろしいまでの響き・倍音、鳴りの良さ。そしてチューニング域の
>異常な広さ。皮がたわむギリギリの緩さで張ったヘッド、通常の
>スネアであれば打面は鳴るが裏面が響かずスナッピーが
>鳴らず、ボワンとした音になる領域でもきちんと胴がなり、
>スナッピーをふるわす。パンパンに張ると今度は高周波に近い
>殺人的な倍音の豊かさで周りを圧倒する。
やべええええ!!コレはむっちゃ滾るww てか全部引用してまったしw
これだけフレキシブルなタイコは深胴でもそうはないでしょうねー
>ピッコロのクセにエボニーAIR-RIDEつきと変わらん重量
流石強烈な音に見合う強烈な重量ww
エボニーはウッドの中で最重量級なのにそれを易く超える重さは、やっぱ
メタル故なのかなぁ…
cybercatさん
2011/06/27
>これだけフレキシブルなタイコは深胴でもそうはないでしょうねー
ベルプラスはピッコロ系の方が台数出たらしいですが、音を聞く前は鳴りの良さを生かして「ココ一発!」しか使わないのでエフェクトスネアとしての位置付けかと思いましたが、ミュート系のヘッド(EVANSのDry使用)付けてゆるめのセッティングすると低いところも出る出る。
やや深めのスタンダードサイズ6.5インチだとたぶんうるさすぎるんじゃ...
↑
あと重すぎて運べないとか(3.25インチで6.2kgなら、6.5インチなら確実に8kgコース...)
↑
高すぎて買えないのもある...orz
kenさん
2011/06/27
cybercatさん
2011/06/27
>叩き物系は、わからないのですが、良い音してそうですね。
魔性の、音です。
叩いたヒトを虜にする楽器とは聴いていましたが、私も絡め取られています。
CR-Xさん
2013/09/22
cybercatさん
2013/09/23
>鋳物はカッチョ良くて好きですよ。
「鋳物」と言われると違和感がありますが、製造工程を表したカタログの写真はまさに「鋳物」でした。
CR-Xさん
2013/09/23
見た目よりも持った時の重量感とか、貼りを調整するときのボルトの締め具合とかプレス部材と違う感じがしそうですよ。
cybercatさん
2013/09/23
フープはモロ鋳造です。
>持った時の重量感とか、
スゲー重いですww
>貼りを調整するときのボルトの締め具合とかプレス部材と違う感じがしそうですよ。
パンパンに張ったときは違いますね。
フープだけはもう一対持ってます。