レビューメディア「ジグソー」

THE SQUARE⇒T-SQUAREへ、そしてフロントマン交代。激動の時代の作品。

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。バンドというのは、ヒトの集団ですから、メンバー個人の想いや、その時置かれている状況、音楽界を取り巻く環境などで、変化・変遷・変貌していきます。そういった渦中にいるときは、なかなか気づくことは難しいですが、あとから俯瞰すると「あの頃が一番濃かった」という期間が判ることがあります。そのジャンルを代表するバンドの、変化が大きいながらも、結局そこが「黄金期」だった...とあとからは感じられる時代を編んだアンソロジーをご紹介します。

 

T(HE)-SQUARE。日本を代表するジャパニーズフュージョンバンドだが、長い歴史の中には、浮き沈み、メンバーチェンジ、活動の方向性の変遷など多くの変化を受けてきた。1999年というバンドにとって頻回のメンバーチェンジが起こっていた時期に、編纂されたベストアルバムが“Wordless Anthology〜Masahiro Andoh Selection & Remix +1〜”シリーズ。その名の通り、リーダーであった安藤正容が選び、一部リミックスしたベストアルバムだが、面白いことに一度に3枚リリースされたこのシリーズは、「ベーシストによって区切られている」。Ⅰは、

オリジナルアルバムとしてはファーストから4枚目で、担当ベーシストは中村裕二。お洒落で明快なインストグループとして認知され始めてはいたが、和テイストも感じられるパーカッショニスト(仙波清彦)がいたり、最初期はツインギター、ツインキーボードの大所帯だったこともあり、まだ方向性がしっかりと定まっていなかった感じ。

 

Ⅱになると、

ベーシストは田中豊雪になり、この時期はTHE SQUAREが大きく、メジャーになった時期。「フュージョン(融合)」の調合の割合を、ポップ色、ロック色を強くして、より明快に。そしてより「受け入れられる音」に。この時期の後半はジャニーズ出身のイケメンドラマー長谷部徹も加わり、タッパがあって華があるフロントマン伊東たけしのCM出演や、田中のMCでの軽妙な語り口で女子大生ファンが大量に付いた時期。

 

そして本作“Wordless Anthology III~Masahiro Andoh Selection&Remix+1~”の時期に繋がる。オリジナルアルバムとしては12枚目から21枚目の10枚をカバーするのでCD1枚では完全網羅は難しく、全く選曲されなかったオリジナルアルバムも多い。この時期のベーシストは須藤満で一定だが、実はT(HE)-SQUAREとしては変化が大きかった時期。

 

彼らを一躍全国区にした、フジテレビF1選手権テーマソング「TRUTH」は同名の12枚目の同名アルバムに収められた作品で、この作品から須藤がベースを担当する。そして、それまで使っていたTHE SQUAREの名を海外進出(主に米国)を念頭にT-SQUAREに変更(統一)したのが、14枚目の“WAVE”

から。そして、それまでリーダーの安藤とともに、唯一結成時からのオリジナルメンバーとして在籍していたフロントマン、伊東がバンドを(一時期)離れたのが、15枚目の“NATURAL”。

代わりに入った本田雅人が、スーパーテクニックを前面に出した攻めの姿勢で足かけ8年バンドの顔となるが、その後さらにサックス/EWIが宮崎隆睦に、キーボーディストが一作ごとに変わるような流動的な時期と、バンド形態的には大激動だったが、リズムユニットは変わらず、ベース須藤+ドラムス則竹裕之のコンビだった。

 

それまでもT(HE)-SQUAREは、インストバンドにしては明快なリズムで売っていたバンドだったが、この須藤+則竹時代は、「パッと聴き明確ではあるが、テクニック的に実は結構高度」と一段ステージを上げたリズムセクションで、彼らの一番売れた時期+フュージョンがまだ音楽界のセンターにいた頃という内外の要因合わせ、一番「豊作」な時期。そんな時期を編んだアンソロジー、安藤はどんな曲を選んだのだろうか。

 

TWILIGHT IN UPPER WEST」。かの有名曲「TRUTH」と同じアルバム、“TRUTH”に収められた名バラード。当時一番曲を書いていたのは、ギタリストの安藤とキーボーディストの和泉宏隆だったが、安藤がハードな曲やポップな曲、小粋な曲が多く、和泉がバラードやリリカルな曲、若干コミカルタッチな曲と棲み分けられていた。和泉の代表曲としては現在もブラスバンドの定番曲となっている「宝島」だが、バラードにはロマンチックで壮大なものが多く、本作もそのひとつ。伊東のサックスも切なく歌い上げるが、故和泉の優しい音色の流れるようなピアノソロが美しい。

 

MISS YOU」は、THE SQUAREとしての最後のアルバム“YES,NO.”に収められた、硬いベースラインとクリーンなギターのカッティングの対比が印象的な曲だが、これはオリジナルではなく、1998年のライヴテイクが収められている。ただメンツはオリジナルとは大きく違っており、作曲者の安藤と、この曲を決定づけるタイトなリズムコンビ、ベースの須藤とドラムスの則竹は変化なしだが、フロントマンたるサックスはオリジナルメンバーの伊東から、ハイパーテクニシャン本田を経て、3代目となる宮崎隆睦。キーボードはライヴが“FAREWELL & WELCOME LIVE”と、新旧メンツのバトンタッチライヴだったこともあり、和泉がピアノ、難波正司がオルガンと弾きわけており、出色の出来。アメリカを拠点にしていたため、わずか一作しか在籍しなかった難波の、桑名正博&ティアードロップス時代からのロック!なオルガンプレイと、リリカルで熱い和泉のソロとの対比が素晴らしい。

 

この時代の本田の代表曲というと、なんと言っても鮮烈な印象を与えた、伊東からのメンバーチェンジ後最初のアルバム“NEW-S”のオープニングチューンにして、ウルトラハイパーテクニック曲「MEGALITH」だが、あえて「夏の蜃気楼」。いや、この曲も大概なハイテクニック曲。ライナーには選曲者の安藤が“本田くんの曲にしては強すぎないテンションで(笑)”と記しているが、最後の「笑」にすべての想いが凝縮されているw。ブラスの複雑なアンサンブルと、ビートをトリッキーにずらしたリズムパターンで、印象深いイントロやAメロに比較して、あっけらカーンとポップなサビの対比が面白い。なお、意外なことに本田は山下達郎のファンらしく、オリジナルにはヤマタツばりのコーラスの多重録りによるイントロ(導入)があるが、このアンソロジーではその部分はカットされている。

 

この時期は良曲が多いので、CD一枚ではカバーしきれず、落ちた曲も多いが、選ばれているのはやはりそれなりの曲。そして、つい先日安藤が退団して、T-SQUAREがT-SQUARE alphaへと変わったが、その時点から俯瞰してもやはりこの時期が最もT(HE)-SQUAREらしい。

 

そんな「黄金期」を編んだアンソロジーです。

この「Ⅲ」が一番、彼ららしい曲が詰まっている
この「Ⅲ」が一番、彼ららしい曲が詰まっている

 

【収録曲】

1. TRUTH (from 12th "TRUTH")
2. TWILIGHT IN UPPER WEST (from 12th "TRUTH")
3. MISS YOU (Live at Chicken George on April, 1998) (from 13th "YES,NO.")
4. DAISY FIELD (from 15th "NATURAL")
5. WIND SONG (from 15th "NATURAL")
6. MEGALITH (from 16th "NEW-S")
7. ROMANTIC CITY (from 16th "NEW-S")
8. 明日への扉 (from 18th "HUMAN")
9. COPACABANA (from 19th "夏の惑星")
10. 夏の蜃気楼 (Off Voice) (from 19th "夏の惑星")
11. CROWN AND ROSES (from 20th "Welcome to the Rose Garden")
12. PIOGGIA DI CAPRI (from 21th "B.C. A.D.(Before Christ&Anno Domini)")

 

「TWILIGHT IN UPPER WEST」

更新: 2022/02/27
必聴度

やはり、T(HE)-SQUAREはこの時期を聴かなければ

他の時期の方が、より好みであったとしても、この時期は彼らを語るのに外せない。

  • 購入金額

    2,548円

  • 購入日

    1999年頃

  • 購入場所

14人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • 北のラブリエさん

    03/30

    めちゃくちゃおいしいとこですね。

    そしてねこさんは女子大生について言及・・・
  • cybercatさん

    03/30

    彼らの状況と、世間の状況が、ガッチリかみ合った時期でした。

    今ではフュージョン聴く女子大生は貴重かもしれないけれど、当時は結構いたんだよなー...

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