レビューメディア「ジグソー」

音場の密度が濃く、標準品からのグレードアップを体感しやすい

腕の手術の影響で細かい作業が難しいため暫く見送りとなっていた、KS-Remasta製シェルリードの試聴を久しぶりに実施しました。

 

実は先日身内が購入したNAGAOKA製MMカートリッジ、JT-80LBが私の手元に来ていて、これのヘッドシェルへの取り付けを行うと同時にシェルリードのグレードアップも行いたいということで、これまでじっくり試聴する機会が無かったKS-Remastaの新スタンダード3モデルを送っていただき、その中から選ぼうということになった訳です。例によって私がお願いした以外の製品も多数同梱されていたわけですが…。

 

今回試聴するスタンダードグレードは3モデルで、価格はいずれも同じ6,600円(税込)、使用しているハンダもKS-Remasta STDグレードとなります。STDグレードのハンダは過去にデジタルケーブルやRCAインターコネクトケーブルで聴いています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試聴する3モデルの構成は以下の通りです。

 

 

・KS-LW-8100STD(海外製8N-OFC、クライオ処理済)

・KS-LW-1800STD(海外製高純度OFC 0.6mm径単線)

・KS-LW-1500STD(日本製PC Triple-C 0.6mm径単線)

 

 

の3モデルであり、クオリティ差を付けているわけではなく音色の違いということで、好みのものを選択して欲しいとのことでした。

 

 

今回試聴するKS-LW-8100STDはシェルリードとしては一般的な撚線を採用していますが、一般的な他社製品よりも断面積がかなり大きく取られていることが特徴になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

組み合わせたヘッドシェルはOrtofon製LH2000で、既に標準添付のシェルリードで仮組みをしていましたので、これをKS-LW-8100STDに交換して比較試聴してみます。

 

なお、ハンダ以外は同じ構成のKS-LW-8100EVO.Iは以前試聴していますが、当時と比べると私が使っている環境も変化していますし、KS-Remasta製品も同一型番でも音質は向上しているということで、直接的な比較にはならないことを予めご了承ください。

 

 

 

 

 

更新: 2025/08/14
総評

厚みと密度感が大幅に向上

試聴環境はいつも通りTechnics SL-1200G+TEAC PE-505という環境で、例によって聴きながらMOTU HD192を利用してハイレゾWAVも作っておき、改めて聴き直すという方法で評価しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また多くの製品を一気に評価するために試聴曲は固定しておきます。NAGAOKA JT-80LBとの組み合わせでは以下の2曲を利用しました。

 

 

・10 Miles / Champlin Williams Friestedt (アルバム「CWF 2」収録)

 

 

 

 

 

 

・Smile / Michiko Ogawa (78rpm LP「Balluchon」収録)

 

 

 

 

 

 

 

この条件で、まずはLH2000標準添付品をKS-LW-8100STDに付け替えて聴いてみました。

 

 

 

 

 

 

 

まず「10 Miles」のイントロの時点で大幅に変化していることが聴き取れます。一つ一つの音に厚みが感じられてLH2000標準添付品の音が薄っぺらく感じられます。ハイトーン側のジョセフ・ウイリアムズの声は明らかに太くなりますが、ハリがやや弱く柔らかめの声に感じられるようになります。

 

ベースラインは太く弾力性が感じられますが、クッキリとした描写ではなくやや膨らんだ印象を受けます。厚みはかなり豊かですが少し解像度が低いのかも知れません。音場はLH2000標準添付品よりも一回り以上左右に拡がりますし、その拡がった空間の密度も十分です。

 

高域方向については、ハイハットはLH2000の方が少し強く感じられますが、これは中低域の密度が下がることで相対的に高域が目立つというだけで、出ている量自体はほぼ変わらないと思います。タッチの明瞭度や微細な部分はむしろKS-LW-8100STDの方がはっきり表現できているでしょう。

 

続いて「Smile」を聴くと、まずイントロのピアノの出方が随分変わったことに気付かされます。左手方向の厚みや響きが大幅に豊かになり、ピアノの音量が上がったような印象すら受けます。この曲でもやはりヴォーカルの声が太くなりました。

 

間奏ではサックスの音色がほぼ直接音だけなのがLH2000であるとすれば、僅かに残響音が感じ取れるのがKS-LW-8100STDという違いがあります。この部分のスネアドラムはLH2000標準添付品の方が明瞭ですが、音が軽く安っぽい印象を受ける部分もあり、KS-LW-8100STDの方が音色としては自然なのでしょう。

 

強いて言えばヴォーカルの音像が大きくいわゆる「口が大きい」状態に感じられるのが少し気になるでしょうか。これは間接音まで豊かに表現する製品では出やすい傾向なので、この製品の長所とのトレードオフともいえるものですが…。またアタックの部分が割合穏やかに出てくるので、硬質な音のソースではやや緩さが気になるかも知れません。KS-LW-8100STDは一般的なイメージのアナログサウンドが持ち味であり、解像度が高いHi-Fi調を求めるのであれば他の製品を選んだ方が良さそうです。

 

従来の低価格帯製品となるKS-LW-4000MRと比べればワイドレンジかつクリアですし、KS-LW-4500LTDよりもアナログ感の感じられる厚みや質感は出てきますので、新世代のスタンダードモデルとして実に順当な出来と評して良いでしょう。

 

  • 購入金額

    6,600円

  • 購入日

    2025年08月13日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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