発泡スチロールカッターを購入。
いろいろ使用用途はあったのですが、まずはこの下の写真の巨大発泡スチロールをなんとかできないものか。という考えがありました。
この巨大な発泡スチロールはウチのウォーキングクローゼット収納の中に入れっぱなしになったものが最近発見されました。収納を全く使ってなかったから気付いてなかった。
この大きなサイズは下のモニタの梱包材でした。
うわっ懐かし! 5年前じゃん。
僕は大型のものを買う傾向にあるっぽいけど、わりと場所を取るので家具を置くタイプの人はサイズに気をつけたほうが良いと思います。
パッケージの裏面。電圧3Vで約30分間使えるらしい。
この製品は物理的切断ではなく、熱分解を利用したカッターとなっています。
発泡スチロール(ポリスチレン)は熱可塑性樹脂であり、加熱されると次のような現象が起こることで切断を実現しています。
- 軟化(約 100–150°C):構造が緩み始める
- 分解(約 250–350°C):ポリマーの熱分解により炭化水素ガスが発生
- 昇華・蒸発(約 450°C 以上):発泡スチロールが急激に縮み、消失
この温度範囲でワイヤーの温度を制御して蒸発する仕組みなのだと思います。
単三電池を4本使います。
初見だと電池を入れる向きがわからないと思うのですが、中をよく見ると図で書いてありました。
充電式乾電池は電圧が低いため充分に発熱されない場合がある、と説明書に注意書きがありましたが、試してみたところ一応普通に稼働しました。
ヒーターユニット。
最初この白い棒がヒーターかと思って太くて丈夫そうだと思っていたら、実はただのカバーで取り外して使用するものでした。
ロング(12.1cm/270℃)とショート(8.2cm/250℃)。
一応、替ヒーターユニットも販売されていたので、使い勝手は良さそうです。
7秒で加熱が終わり使えるようになります。
赤い電源ボタンを押している間だけ、通電します。安全のためでしょうね。
LEDライトが先端に点くので通電していることが分かりやすくなってます。
この白い半透明のパーツが電源ボタンを押しづらくさせてるな、と思ったら、これは赤い電源ボタンを押しっぱなしにするためのパーツなのだそうです。
安全のためのストッパーではなく、押しっぱなしにするためのパーツとは……。
使用していたところ、発泡スチロールにひっかかったので強引に抜いたところ、いきなり折れ曲がってしまいました。使用1分で涙目。
同様の製品でワイヤーの両端を固定し突っ張ることで強度を上げようとしている製品もありますが、加熱されたワイヤーは熱膨張し長さが変化するのでテンション調整が難しいようにも思います。
弾性変形などはプロダクトデザイナーの悩みどころ。
この膨張によるたるみを防ぐために適切な張力をかける設計が必要なのですが、この商品のように力がかかる部分が1点になる場合は曲がりやすいのも仕方ないですね。
など、溶けた発泡スチロールがワイヤーにへばりついて異臭がしていたので、なるべく接触時間をさけて素早く作業した方が良さそうです。そしてダメになったワイヤーはさっさと交換すべきですね。
この商品は基本的には、切断というより、細かく造形する工作をするためのカッターだと思います。
綺麗に丸くくりぬけるので、これで工作するの面白いかも。
発泡スチロールが溶けるとガスが発生するので、部屋の換気にも注意です。
最終的に、ちまちまと切るのを諦め、腕力でこなごなにしました。物理こそ最強。
しかしこれ、掃除が大変で彼女に怒られるやつだ……。
しかし、大きく邪魔だった発泡スチロールをごみに出せるようになるので、まぁ問題解決です。
発泡スチロールが切れる仕組み
電気→熱変換(ジュール熱)
カッターの加熱ワイヤー(一般的にニクロム線)は、電気抵抗を持つ導体です。
ワイヤーに電流 I を流すことで、ジュール熱によって温度が上昇します。
ジュール熱とは、導体に電流を流したときに発生する熱エネルギーで、熱電効果の一種です。
ワイヤーの抵抗は材料の電気抵抗率 ρ に依存し、長さ L と断面積 A から次のように表されます。
熱伝導と熱放射
熱の伝わり方には主に 熱伝導・熱対流・熱放射 の 3 つが関与します。
ワイヤーが加熱されると、熱が周囲に伝達されます。
ワイヤー内部では、熱伝導方程式 に従って熱が分布します。
高温になったワイヤーは、シュテファン・ボルツマンの法則 に従って赤外線としてエネルギーを放射します。
ワイヤーは空気と接触しているため、自然対流 により冷却されます。
ニュートンの冷却法則に従います。
つまり、電流がワイヤーに流れてジュール熱が発生、ワイヤーが熱伝導・熱放射・熱対流によってエネルギーを放出、発泡スチロールは軟化・分解・蒸発することで切断される、ということですね。
発泡スチロールの熱分解反応で発生するガスについて
メーカーのHPでは、「ダイオキシンなどの有害なガスは出ない」 という点を強調しています。これは正しく、ポリスチレン(PS)は塩素を含まないため、塩素系プラスチック(PVCなど)の燃焼時に発生するダイオキシンは発生しません。
発泡スチロールの主成分である ポリスチレン(C₈H₈)ₙ は、約250~350°C で分解を開始し、450°C 以上 になると完全に分解されて炭化水素ガスを放出します。
C₈H₈ という化学式から分かる通り水と炭素になるため、大量の酸素で完全燃焼させれば 8(CO₂)+4(H₂O) で二酸化炭素と水になり、ただし通常の大気中で燃焼した場合は不完全燃焼となり、CO₂+2(CO)+5C+4(H₂O)で一酸化炭素が発生します。
つまり、完全燃焼させるために適切な燃焼温度(800℃以上)と酸素供給が確保されている焼却施設などで処理すれば、安全であるということになります。
一方で、実際に熱線カッターや低温での燃焼では、メーカーの前提条件(完全燃焼)が満たされないため、有害な揮発性有機化合物(VOCs)が発生する可能性があります。
発泡スチロールの熱分解過程で以下のような化学物質が発生します。
これらの物質は、温度が上がるほど(450℃以上)多く発生し、特に高温で切断した場合や換気の悪い環境では濃度が上がるため、注意が必要です。
少し匂う程度の低濃度であれば目や喉に軽い刺激、スチレンは めまい等を感じます。
高濃度のベンゼン・トルエンは呼吸困難、意識障害などの症状が出て、フェノールは粘膜に強い刺激を感じます。
スチレン系化合物やベンゼンなどの有害物質が発生し、その臭いの原因となります。
短時間で少量なら大きな問題はありませんが、高濃度に長時間さらされると神経毒性や発がんリスクがあるため、換気を意識して安全に作業しましょう。
室内で使用する場合は換気扇を回す、窓を開けるなど必ず安全対策をすることが大事です。
実用性重視
シンプルかつ機能的で、無駄のない実用性重視の設計です。
直線的なフォルムとシンプルなカラーリングが、工具としての堅実さを強調し、視認性の良いスイッチ配置や持ちやすい形状が操作性を向上させています。全体的に装飾を抑えた、作業効率を重視したプロ向けのデザインといえます。
交換設計で長く使える
シンプルな構造でメンテナンスが容易です。
発熱線の交換が可能で、工具なしでの取り外しもスムーズ。
ボディに余計な可動部が少なく、清掃や管理がしやすい設計になっています。
ワイヤー部分は作業で溶けた発泡スチロールがへばりつくので、適宜交換していくのが理想です。
コスパまぁまぁ
手頃な価格ながら十分な切断性能を備えており、コストパフォーマンスは高め。
プロ向けとしては最安クラスで、DIY用途にも適したバランスの良い製品です。
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購入金額
2,016円
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購入日
2025年02月23日
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購入場所
ホームセンター
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