3年前くらいに SNS でバズっていたレトルト調理器を購入。レトルト食品をお湯を使わずパウチまるごと温められる電気調理器です。水もガスも使わないのでエコです。
この分野の先駆者では「レトルト亭」という製品が代表的になるのですが、購入したのは「CHEF(シェフ) わが家はレトルト屋さん」という別メーカーの別製品です。名前が長いので「CHEF」としていきます。この製品、現在年始セールで半額で販売されているのですが、実は常時半額クーポンが提示されているのでセールじゃなくても、ずっと半額の3,980円です。レトルト亭と比較して半額なので、めちゃくちゃ安い。
当時の「レトルト亭」のクラウドファンディングでの発表は、家電製品業界でもセンセーショナルでした。しかしすぐにセットしたレトルトパウチが爆発するという事件が起こります。当時は内部構造を知らなかったのでWEBニュース等で「レトルト亭が爆発した」と大炎上していたのを勘違いして「構造上そうなるんじゃないのかな」ぐらいに、横目に見ていたくらいで、あまり興味を持てませんでした。
「CHEF」を購入の経緯は、パスタソースを作るのが面倒くさい時にレトルト使いたいけどお湯を沸かす手順すら面倒くさい、とにかく面倒くさい、という病気みたいな怠惰な時に便利だな、と思ったからです。
物事を解決するのは、結局、お金ですよ(真理)。
この製品を語る上で「レトルト亭」のパチ物なのかパクリなのか、というところを語らないといけないというか、もうそれだけでひとつの記事になると思うのですが、結論を先に言うと、この製品は「レトルト亭」の OEM モデルだと思います。
「レトルト亭」は開発ストーリーなども公開されており、株式会社アピックスインターナショナルの独自開発で間違いないと思います。大阪を本拠地とする企業で、家電の企画開発をする1979年創業の老舗家電メーカー。M&Aからの紆余曲折で現在は技術商社デンショーのグループ企業として年商23億円の売り上げを誇っています。全国の家電量販店でも取り扱いがあり、デザイン家電のラインアップで人気あります。レトルト亭も目の付け所も良く面白い製品ですね。
それに対し、このレトルト調理器「CHEF」は、ブランドが「AiS to you (アイストゥーユー)」となっているのですが、販売元が株式会社トレードワンとなっています。愛知県を本拠地とする30名ほどの製造卸企業。中国企業じゃなくて日本企業というところにビックリしました。
なので、出所が不明の変なパクリ製品ではなく、ちゃんとしています。
上記で OEM と記述したのは根拠があって、レトルト亭に同梱されているマニュアルを入手したのですが、内容同じなのですよ。
■レトルト亭のマニュアル : https://www.apix-intl.co.jp/wprs/wp-content/uploads/2022/01/ARM110_MANUAL_Revised_web.pdf
そしてこの写真が、この製品のマニュアル。図表や表記が同じ。同じ。
レトルト亭はクラウドファンディングで提供された商品と一般販売されたものでは仕様が違います。
現在の一般販売されている製品では爆発対策が施されたものに改良されています。
この改良版に形状を変更しサイズを小さくしたものが、この製品のようです。
外箱。Amazon で購入したものですが、外箱に直接ラベルが貼られて宅配されてきます。
外箱は捨てるので別に良いのだけど、簡単に箱が開くので、中身に何かされていないか料理家電だとちょっと心配になる。
裏面。スペックや注意点、企業名などがしっかりと明記されています。
同梱されたマニュアル。形状などの細部の違いを除けば、内容はレトルト亭とまったく同じ。
赤い紙の方は、よく問い合わせのある内容を注意書きにしたものだと思います。
ポップアップトースターっぽい縦置きの形状です。狭いキッチンでも置きやすい。
写真がなんとなくボケているのは、表面の反射が凄いので、僕のカメラの距離センサーが誤作動を起こしてピントが合わないんですよ。鏡になるんじゃないかと思うぐらいのテカり具合です。
約1.5kg と軽量ですが、持ち上げると手が滑りそうな材質とバランス感ではあります。
基本据え置きなので問題はないと思います。
調理時間を調節するダイヤルは、多段式のロータリースイッチです。時間を指定するのを想定していたのですが、実際にはレトルトの容量を指定します。
- 調理可能 : 100~129グラム
- 少盛 : 130~179グラム
- 普通 : 180~259グラム
- 大盛 : 260~300グラム
と目盛りがなっています。レトルトに記載のある温め時間ではなく、内容量で決めるみたいです。
めちゃくちゃ分かりにくく、マニュアルの対応表と見比べながらのセットになります。
注意書きでは少し低めに見積もってセットした方がいいい、という忖度が書かれているので、感覚的な操作も求められますね。自動車と同じで安全運転することでいろいろ守ることができるのです。
たぶん開発途中で安全のために仕様がどんどん変わっていった結果だと思うのですが、この製品(というかオリジナルのレトルト亭が)パイオニアとしての商品なので、これから後継機が発売されたら改良されていくとは思います。まぁそれには現行機が売れなきゃいけないから、けっこう大変だと思いますが……。
目安の対応表が覚えきれないので、ウチではテプラを貼ってあります。
わかりやすくなるのでおすすめです。
これセブンカフェのコーヒーメーカーに貼られているラベルと同じ事象ですね。
デザイナーの憧れとして名高い佐藤可士和さんですら「デザインの敗北」といわれる失敗作を作ったのだから、これを作ったプロダクトデザイナーさんもめげずにがんばれ。
ダイヤルをカチカチと合わせると、カッチコッチという結構大きな音と共にダイヤルが動き、加熱中ランプがオレンジに光ります。加熱中はイオンのような独特の匂いがしました。
危険な温度に達した場合はサーモスタッドによる安全装置が働くようです。その場合、加熱ランプが連続点滅するとマニュアルに記述があります。
「普通」にダイヤル合わせた場合、約6分くらい? 小盛と大盛で3分刻みで時間が違うと思います、たぶん。時間がきて温めが終わると「チーン」というベルの音が鳴ります。かなり大きな音です。これマンション住まいの人とか大丈夫だろうか。
さっそく試します。実力を知りたかったので、最初からいきなりキーマカレーのレトルトパウチをセットしてみました。キーマカレーは、マジでやばいです。主成分の油が水より沸点が高い上に、素材に粘性が高く固体に近いので沸点を超えても沸騰せずに過加熱となり、逃げ場のない油の中の水分がいきなり爆発する可能性があり、僕の中ではレトルトパウチ業界の悪童です。キーマに限らず150グラム以下もパウチが膨張しやすいので気を付けた方が良いです。
でも爆発は膨張するのが原因なので監視していれば一応は防げます。ダイヤルをOFFにすればいいだけです。でも衝撃・振動で爆発するので危険に変わりがないですが。
サーモグラフィーで見ていたのですが、水が沸騰する温度には到底達するかんじはしないですが…。
消費電力も 200ワットなので、そこまで取り扱いに気を付けなければいけないかというと、そうでもないような。電気ケトルなんて1,000ワット以上だから、かなりのエコ運転。
チーンとなった後に取り出してみると、かなりのアツアツ。はみ出ている袋の上部は冷え切ってはいました。エコ運転のわりに温まるものなんですね。
湯煎するよりは時間がかかったのですが、お湯を沸かす時間を計算に入れるとトントンくらいでしょうか。水を無駄にしない、鍋を用意する必要が無い、でメリットは結構あります。
電子レンジでの加熱と比較すると、レンチンの方が時短にはなるのですが、袋から出して別の容器に入れてからの加熱になるので洗い物が増えるという欠点があります。
何を面倒に思うかは人それぞれですが、この CHEF という製品にメリットを感じる人は、かなり多いと思います。
小さいので置きやすく、消費電力は200Wと低い。イマドキの良い製品です。
ポータブル電源でも利用できるので、キャンプや災害時にも使えます。レトルトご飯が温められないので、何を温めるのかというと困るけど。
この製品には蓋が付いているのですが、底面にクリップも付いており、熱くなったレトルトパウチを取り出しやすくもなっています。小型のものも挟んで入れることもできますね。
これらの仕様はレトルト亭にはなかったものなので、独自に改良されたものだと思います。
そう考えると、クラウドファンディングモデル → 一般販売モデル → この製品みたいな改良バージョンがあると考えられますね。
温める仕組み
構造が気になったので、さっそく中を覗いてみると、パネルヒーターが設置されているのが見えます。
構造は単純ですね。
僕はホットサンドメーカーのようなパネルで挟んで直接温める伝導方式と想像していたのですが、伝導プラス放射(熱したプレートで空間を温める)方式でした。この構造だと爆発するような温度上昇ないような気がするけど……。
明記されていないですが、ヒーターの材質はスチール製だと思います。コスパを考えた結果なのかな。
僕は熱技術には素人なので、素人考えではレトルトパウチがヒーターに密着した方が良いのかなと考えがちですが、全く関係者ではないメーカー開発部署の人が言うには、熱伝導は面積だから、あまり触れない方が良いとのことです。触れすぎると加熱しすぎるということですね。
サーモグラフィーによる計測だと、内部は約75℃で推移。
通常のレトルトパウチの推奨が沸騰しない温度以下なので、かなりの低温ですね。
壊れているか心配になって調べてみたら、これで通常運転らしいです。
ちなみに本体外側の素材はABS樹脂と公表されていますが、計測しても全く温度が上がらないので安全です。全体的に安全設計なのですが、世間を騒がせた爆発事件は、突沸の危険性を軽視してしまったことが原因だと思います。
でも一般販売されている家電製品だから、一般家庭での使用を考慮し、突沸の問題を解決したものを市場に出すべきだったのかなと思います。現代の技術では市場に少し早すぎた製品と思います。
突沸・爆発対策
オリジナルのレトルト亭では仕様変更が進められ、クラウドファンディングで先行購入した人に追加パーツを配送して対応したようです。
形状を見ると投入口を密閉させずに熱を逃がすという対応策がみえます。つまりこれが爆発した事象のメーカー側の見解であり、解決策となります。
また先行販売モデルは蓋が付いており、レトルトパウチを圧迫する仕組みもあったようです。
現在市販されているモデルでは蓋が無く、改良されているようです。
一番の対策は、突沸の危険性があるという認識をして、レトルトパウチの膨張に気を付けることですね。鍋だって拭きこぼしがないように見張りがいるのだから、熱エネルギーを扱う調理器具には細心の注意をはらうべきですね。
まだ市場に早かった
ユーザー視点でのシンプルさと効率性を追求した魅力的なプロダクト設計だと思います。
家電としての形状や操作性は、誰にでも使いやすい直感的なインターフェースを採用し、生活に馴染むミニマルな外観が特徴的。ポップアップトースターに似た形状はカジュアルで可愛いです。
カラー展開が光沢のあるホワイトしかないのが残念。
湯せんの手間を省略しつつ、ムラのない仕上がりを実現する設計は、時間短縮と利便性を兼ね備えていて素晴らしいデザイン。イノベーションのあるアイデアも良く、今後、新しい調理家電のスタンダートとなる可能性も秘めています。突沸の問題から大手のメーカーが手を出せない現状、開発次第で展開が変わるように思います。
掃除しにくい
改善が必要な構造だとは思います。
内部に食品残渣や水分が溜まりやすいし、掃除が難しく不具合の原因になる可能性があります。事故防止の観点からも、分解清掃のしやすさや耐久性、故障リスクを抑える設計が重要だったのではないでしょうか。分解できると火傷の可能性があるから固定したんかな。特に定期的なメンテナンス手順が明確でない場合、ユーザーにとって扱いにくさを感じさせると思います。
価格こそ正義
ユーザーの使用頻度次第。レトルト食品を頻繁に食べる人には、時短や便利さが価値を発揮しますが、価格が他の調理法(湯せんや電子レンジ)と比較して割高であればコストに見合わないと感じる場合も。
製品コンセプトでもあるのですが、多機能性がなくレトルト専門というところも使用頻度を下げておりコスパが良いとはいえないかも。値段が安いので、価格的なメリットは大きいですね。
耐久性が分からないですが、長期利用できそうなら高いコスパが期待できます。
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購入金額
3,980円
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購入日
2025年01月03日
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購入場所
Amazon
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