たまたまコンディションの良い中古を見かけたので入手した品です。オルトフォン製ヘッドシェル、LH-8000で、現在は生産完了となっています。
この製品はデンマークの企業とはいえ、日本法人が活発なオルトフォンならではの製品といえるでしょう。同社製のヘッドシェルとしては珍しくメープル材による木製で、飛騨の職人が漆塗りで仕上げたという手作り品なのです。2004年発売で価格は10,000円(税別)と、当時としては少し高めという程度の価格設定でした。今ならここまで手がかかったヘッドシェルを1万円程度で販売するのはかなり難しいのではないかと思います。
中を見せていただいたところ、外観も綺麗でしたし付属品にも欠品はありませんでした。
率直に言って当時から結構コスト的にキツかったのではないでしょうか。ヘッドシェルとしては上位の製品だったにもかかわらず、リード線は同社製の標準クラスのカートリッジに同梱されていたものと同じと思われる極細のものです。さすがにこれは使いません。
漆塗りではあるのですが、工芸品のような仕上げというわけでもなく、通常ニスで仕上げるところを、代わりに漆で仕上げたという感じでしょうか。メープル材の木目が活かされた外見となっています。
ストリングスに厚みが出てくる
普段私が使用しているヘッドシェルはaudio-technica AT-LH15/OCCやAT-LH18/OCCなのですが、たまにシェルの上側からネジを通さなければ固定できないカートリッジがあります。私が所有する中ではClearaudio Virtuosoがそれに当たるため、今までは間に合わせ程度にOrtofonの最廉価シェルであったSH-4を組み合わせていました。
ちなみにこのSH-4は単売品ではなく、MC Q5のセット品として付いてきたものです。そのため特別色の赤で塗装されています。
リード線はKS-Remasta KS-LW-9500EVO.IIを組み合わせていましたので、それをそのまま移設します。
ビスは添付品を使った方が色が合って良いのですが、長さの都合でaudio-technicaのヘッドシェルに付いてくるアルミビスを使っています。
気付いたらVirtuosoの銘板プレートが脱落してどこかに行ってしまっていますね。まあ手放すことはないと思うので気にしないことにしますが…。
組み付けが終わった後、テストとして「HYMN / Sarah Brightman」のLPを通して聴いてみました。
高解像度・高精細のaudio-technica製MCカートリッジで聴くとかなり粗が目立つレコードなのですが、Virtuosoはほど良くぼやけるため、なかなかこのレコードには好相性といえます。今までのVirtuosoの音と比べると、ストリングスの厚みや質感が出るようになった印象を受けます。まあ、電源タップを変えたりもしているため、ヘッドシェルの交換によるものとばかりはいえませんが…。
元々Virtuosoはクラシック系の音に特化した印象のあるカートリッジで、「HYMN」収録曲でも「Sky And Sand」辺りではちょっと空間の広がりが地味にまとまりすぎる印象があります。SH-4の時と比べると重厚感は出ているのですが、AT-OC9/III辺りで聴けるような気持ちの良い広がりはやはりありません。
レコードを「Chicago 18 / Chicago」に替えると、悪い意味でのVirtuosoらしさがより強調された感があります。ドラムやギターの音に切れがなく、空間の見通しも今一つです。このカートリッジでロックの音を聴いてはいけないなと再認識させられた格好です。
LH-8000との組み合わせで、Virtuosoの長所であるストリングスの質感はより出るようになった一方で、ロック系とのミスマッチもより強くなった感があります。カートリッジの特徴をより引き出していると考えれば、LH-8000そのものは優秀な製品といえるのでしょう。
Virtuoso自体がメイン級で使われるカートリッジでもありませんので、この組み合わせでクラシック特化型として使い続けようと思います。
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購入金額
5,000円
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購入日
2024年01月27日
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購入場所
オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館
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