以前メーカー放出ジャンクとして格安品を入手したiBasso製DAP、DX300。元々それなりの価格の製品ですから、音質的な水準もそこそこではあります。ただ、現在私がメイン機として使っているDAP、Cayin N6ii/R01との比較ではヴォーカルなどの音場の中心に定位するものの密度感や存在感が薄いこと、一音ごとの質感に自然さが不足することなど、高い水準で評価するとそれなりの不満がありました。
以前DX300の後継製品であるDX320を聴いた時にも、DX300で感じられた弱点はほぼそのまま残っていて、iBassoのメーカートーンなんだろうなと思っていました。ただ、DX320に当時新製品だったアンプカード、AMP14を組み合わせたものでは他のiBasso製品ほど弱点が目立たなかったという記憶がありました。
AMP14はKORG/ノリタケ電子製の真空管NuTubeを搭載し、4.4mmバランス出力に対応するというアンプカードですが、その前身となるAMP13というアンプカードもやはりNuTube搭載で、出力が3.5mmシングルエンドのみになるというのが主な違いです。
当然バランス出力に対応する方が良いのは間違いありませんが、AMP13とAMP14との間は実売価格の大きな差があります。そこでまずは安いAMP13でDX300とNuTubeの組み合わせを試そうと思い、中古セール品を入手してみました。
基板上のクリアカバーの下に配置されている四角形の部品がNuTube 6P1です。
出力端子が2つ設けられていますが、これはいずれも3.5mmシングルエンドの可変出力です。違いは外側の端子が1段増幅のみのローノイズ出力、内側が2段増幅のマキシマム出力というものです。当然ながら2段目はOPAMP増幅となりますので、NuTube本来の音を聴きたいのであればローノイズ出力側が正解となります。
アンプだけで本質が変わるわけでは無い
元々出棺時点ではDX300にはAMP11というアンプカードが搭載されています。AMP11は4.4mm、2.5mmのバランス出力と3.5mmシングルエンド出力に対応し、出力電圧7.1Vrms(バランス出力時)とかなりの高出力カードで、数値上の性能はかなり優秀です。
ただ出てくる音はというと前述の通りで、Cayin N6ii/R01を脅かす存在とはなり得ていませんでした。
ではAMP11をAMP13に交換することでどう変化するのか確認してみましょう。
先ほど簡単に説明していますが、端子ごとに増幅のされ方が異なりますので、音にも違いが生まれます。代理店によるブロックダイヤフラムを掲載しておきましょう。
まずは「Explosive / David Garrett」で端子ごとの音を確かめてみましたが、はっきり言ってしまえばAMP13の良さを引き出そうとするのであればローノイズ端子一択です。マキシマム出力はどうしてもゲインが足りない機器が出てくることに対応して用意されたのだと思いますが、真空管らしい滑らかさは消え失せてしまいます。低域方向は不自然に盛られスムーズさも無く、これならAMP11の方がマシと思うほどでした。
一方のローノイズ端子を使うと、アンプを載せ替えるだけのメリットが感じられます。何といっても中心に来る音の密度感が濃くなり、実在感が感じられるようになります。低域~中低域の厚みが出てきて、アナログ的なトーンとなりますが、反面高域方向のクリアさにはやや欠けます。音場も少し狭くなったかも知れません。
その後ヴォーカルものや普段聴く洋楽ロックを試してみましたが、音場の上の方が狭まるのが気になるものの、ヴォーカルの実在感や一音ごとの質感はAMP13によって大きく向上しました。AMP11ではあまり音楽を楽しんでいるという感覚にならなかったのですが、AMP13では十分楽しめる水準に達したと思います。
ただ、それではCayin N6ii/R01と比べてどうなのかといわれると、差は縮まるものの追いつくところまでは行きません。N6ii/R01も十分に密度感はありますし、音場はDX300+AMP13より明らかに広く、また高域方向に至るまで解像度も保たれています。N6ii/R01では4.4mmバランス出力と3.5mmシングルエンド出力が1枚で使えるのもメリットですし。まあ、N6ii/R01はCayinからN7が発売されるまで特に文句は無いと思えるだけのものでしたので、私の感性に合っているというのが大きいのでしょうけど。
理屈の上ではかなり理想的に造られているDX300とAMP13なのですが、出てくる音は理屈ほど良くはないというのは、AMP11のときと変わりません。決して悪いわけではないのですが、積極的に選ぶほどの魅力が感じられたかというと難しいところです。今回のように本体もアンプカードも格安に入手できていれば納得は出来ますが。
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購入金額
8,000円
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購入日
2023年11月03日
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購入場所
eイヤホン
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