レビューメディア「ジグソー」

理論的には文句のないこだわりの設計

7月15日に、中野サンプラザの閉館により、初めて東京駅隣接のサピアタワーに会場を移して、フジヤエービック主催の「ヘッドフォン祭 mini」が開催されました。

 

春や秋に開催される「ヘッドフォン祭」では、中野サンプラザの複数フロアにまたがって会場が設置されましたが、それとは異なり、中野サンプラザでは1フロアのみで開催されていたのが「ヘッドフォン祭 mini」となります。それを引き継いだイベントのため、サピアタワー内の「ステーションカンファレンス東京」を1フロアのみ使用して開催されていました。

 

スペースの制限が厳しいことに加え、密回避の意図もあってフジヤエービック自身による物販会場は設置されていませんでした。しかしごく一部ながら出展社で独自の物販を行ったブースもあり、SHANLINGやiBasso Audioの代理店でお馴染みのMUSINが割合多くの物販を用意していました。

 

実は私がMUSINのブースに向かった理由は試聴目的というわけではなく、MUSINのオリジナル商品である、ポータブルオーディオ用セミハードポーチ「MUSIN君ケース」を身内に頼まれて購入するためでした。私は既に「MUSIN君ケース」は1号、2号を1つずつ購入していて普段DAPを持ち歩くのに愛用していますが、それを見て買ってきて欲しいと頼まれたわけです。

 

MUSINの物販では、MUSIN君ケースは色又は形状をくじ引きで決めるという販売方法だったのですが、それ以外の販売品はその場で渡されるQRコードで閲覧できるページで、商品リストと価格を確認できるという仕組みでした。

 

私もケースのくじ引きを待つ間に商品リストを見ていたのですが、特にデモ機引き上げ品などは通常の中古など問題にならないほど安価なものがいくつか掲載されていました。生憎「SNS等での価格情報の共有はご遠慮下さい」と注意書きがあったため具体的な価格を書くことは出来ませんが、まあ通常ならあり得ない金額のものもあったということです。

 

 

その中で私が特に興味を引かれたのは、圧倒的な安さだったSHANLING M3XとM6Pro、iBasso DX300でした。丁度車検が終わった直後で懐状況は最悪だったのですが、M3XかDX300のどちらかは必ず買おうとその場で決めてしまうほどの魅力がありました。

 

ただ、M3Xは大して持って行っていなかった現金ですら余裕で買える程度の安さだったのですが、買った後で活用できる機会があるかという問題がありました。既にそれ以上のグレードのプレイヤーを多く使っていることを考えれば買っても死蔵するだけかと思っていて、自分の順番が回ってきた瞬間にiBasso DX300を購入していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモ機上がりということでジャンク扱いでしたが、会場内で動作確認を取って正常動作しない場合には返品可能という説明があったため、早速動作確認を取りました。付属品はケースだけの筈でしたが、何故かmicroSDHCカード(32GB)が装着済みだったためそれはすぐに返しに行き、自分のmicroSDXCメモリーカード(512GB)で動作確認を取りましたが、特に問題は無さそうだったため、そのまま持ち帰ってきました。現時点に至るまで特に問題は発生していません。

 

 

本機は実は割合短期間で生産完了となってしまいました。これは贅沢にCirrusLogic製ハイグレードDAC IC、CS43198を4個とかなり豪華な使い方をしていたため、世界情勢の問題で流通が不安定になると部品価格も大きく上昇しった上に入荷も不安定になってしまい、すぐに製造打ち切りとせざるを得なかったようです。なお、後継のDX320はローム製MUS-IC、BD34301EKVを2基搭載する形となっています

更新: 2023/08/07
実用性

動作も機敏でBluetoothの接続性も良好

iBassoの上位グレード製品は、基本的にはAndroid OSを採用しているのですが、純粋にオーディオ出力だけに全力を注ぐ「Mango OS」とのデュアルOS構成となっています。AndroidとMango OSではある程度の品質差はありますが、基本的な音質傾向が大きく変わるわけではありませんので、それを踏まえてこれ以降をお読みいただければと思います。

 

機能説明についてはAndroid利用時のものに準拠します。

 

 

 

 

 

 

 

出荷時点ではAndroid 9.0だったはずですが、アップデーターが提供され現時点ではAndroid 11までバージョンアップが行われています。

 

標準状態ではPlayストアアプリが用意されていませんが、これは後で導入できるよう手順が公開されています。詳細は直接お調べいただいた方が良いでしょうからここでは触れません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナログ出力はiBassoの特徴であるアンプカード方式が採用されていて、DX150/200/220とは互換性がない形状(実は端子部の形状は変わっていない)へと変更されました。標準搭載カードはAMP11となります。

 

AMP11は3.5mmシングルエンド、4.4mm5極バランス、2.5mm4極バランスの3つのアナログ出力端子が用意されています。そしてDAP本体側にUSB typeCとCOAXIAL出力が用意されているため、かなり多彩な出力方法がサポートされています。

 

 

私がこれまで多く愛用してきたDAP、CayinやHIBYの製品はBluetoothの実装に難があり、特定の機器で繋がりにくかったりすることがあるのですが、iBassoの製品についてはこれまで問題が起きたことはなく、接続も安定しています。先日掲載したTWS、Technics EAH-AZ60のレビューも、このDX300で試聴して書いたものでした。

 

 

 

 

 

 

 

SoCはQuallcom Snapdragon 660、メインメモリも6GBですから、オーディオ専用機としては十分高性能といえます。設計が少し古いためWi-FiはIEEE802.11acまでのサポートですが、特に困ることもないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

microSDXCメモリーカードスロットは側面に1基用意されています。本体の保存領域も128GB用意されていますので、取り敢えずはメモリーカード無しでも運用できそうな気はします。

 

 

近年のiBasso製DAPでは、上位クラスの製品でバッテリーを2系統に分け、デジタル系とアナログ系を独立させて給電しています。そのため、バッテリー残量が2つ表示されています。

 

 

 

 

 

 

 

このシステムを初採用したDX220 MAXではUSBポートが2つ用意されていて、充電もそれぞれ別々に行う必要がありました。DX300ではUSBは1系統しか用意されていませんので、両方が同時に充電されます。使い勝手という意味では向上しました。

 

ただ、例えばTWSと接続している場合などはアナログ系統のバッテリーが全く消費されず、デジタル系が一気に減っていきます。この場合でも充電するときには両方に給電されてしまいますので、バッテリーの寿命や過充電の防止という意味ではむしろ不安要素となり得ます。どうも過充電保護までは行っていないようですので…。

 

更新: 2023/08/07
音質

随所にこだわりが見えるが、iBassoのメーカートーンは健在だった

まず、Bluetooth接続時の結果は前述のEAH-AZ60のレビューでご覧いただければと思いますが、AMP11経由の音についてここで触れたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試聴には写真にあるqdc TrESの他に、64AUDIO U4+WAGNUS. Petit NEUTRON Lilyも使いました。ソースは「TOTO IV / TOTO」や「Born For This Moment / Chicago」、「ICONIC / David Garrett」などを使っています。

 

実はここ最近のiBassoの音は個人的にあまり好みの傾向ではありませんでした。音場の広さは魅力的なのですが、代わりにリード・ヴォーカルなどの中心の音の密度が薄いという癖が気になっていたのです。さすがに最新の弩級ハイエンドであるDX320Ti MAXではその傾向は薄まっていましたが、DX320やDX300にその傾向が残っていることは以前の試聴で理解はしていました。

 

ただ、新世代真空管「NuTube」を採用したアンプカード、AMP13で聴いたときにはその印象があまり無かったことから、アンプカード次第では何とかなると思って入手に踏み切ったのです。

 

 改めて聴いたDX300では、やはり私が想像していた通りの音質傾向が感じられました。今回使ったイヤフォンはいずれの2.5mm4極バランスケーブルを組み合わせていたことから、AMP11の2.5mm出力をそのまま使って聴きます。

 

 

私のメインDAPであるCayin N6ii/R01と比較すると音場の広さはDX300優位ですが、声や楽器の質感や音場の密度など、多くの点でN6ii/R01の方が良好でした。

 

特に顕著に差が出たのは「ICONIC / David Garrett」で、中央の密度が薄くなるDX300ではヴァイオリンの偽物感が強く出たのですが、N6ii/R01はヴァイオリンを含む楽器がきちんとそれらしく聞こえます。AMP13やAMP14を組み合わせることで大化けする可能性はあると思いますが、AMP11との組み合わせに関してはN6ii/R01は超えないという印象です。

 

レンジの広さは十分ですが、ソースの情報量が増えると分解能がやや不足気味になる傾向があるようで当時のフラッグシップモデルとしてはやや詰めが足りなかったように思います。ちなみに後継のDX320ベースのDX320 Edition Xであればこの辺りの不満はかなり解消されます。

更新: 2023/08/07
総評

実用性は高く、購入価格を考えれば音にも満足

やや厳しめに書きましたが、それでもここで5点満点をつけているのは購入価格を考慮に入れればケチのつけようがないという意味です。通常なら中古でようやく10万円を切ってきたという程度の製品であり、その程度の価格であればまず購入していませんし、その価格帯で買ったと仮定して採点すれば3.5~4.0程度だったと思います。

 

Bluetooth接続時の音はLDAC有効であれば品質は高い方です。デジタルトランスポーターとしての実力は決して低くないということでしょう。

 

アナログ出力品質は価格を考えれば標準的です。ずば抜けて良いわけでもなく、かといってひどいというほど悪くもありません。独特の広大な音場に魅力があるのは確かですが…。

 

本音からいえばNuTubeを採用するAMP13/14のいずれかを購入してからこのレビューを公開しようと思っていたのですが、重度の金欠で当分買う目処が立ちませんので、見切り発車的に公開しました。

  • 購入金額

    0円

  • 購入日

    2023年07月15日

  • 購入場所

    ヘッドフォン祭りmini会場 MUSINブース

18人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • Takahiroさん

    2023/08/07

    人の多い場所でLDAC接続をした場合、しょっちゅう接続が切れるなどありましたか?(DX160 ver2020はだいぶ酷かったので今はどうなのかな?と思ったので質問させていただきます)

    MUSIN iBasso DX300製品HP
  • jive9821さん

    2023/08/07

    > Takahiro さん

    普段電車乗る機会もありませんし、人混みで使ったことが
    無いので何ともいえないところです。

    ただ、HiBy R6Pro ALなどとは違い部屋の中で動き回っても
    接続が怪しくなることはありませんでした。まあ、現状で
    EAH-AZ60しか使っていないので、イヤフォンによる違いが
    ある可能性もありますね。

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