普段あまり紙媒体の雑誌は買わないのですが、たまに気になる記事があったりしたときに買うことはあります。
今回の季刊analog誌(Vol.80)は気になっていた特集があったので買うことにしました。それがこちらです。
以前twitterで、DENON DL-103の開発者であった松田等氏の孫を名乗る方から、松田氏の現状の報告と機材及び知識の提供を呼びかける書き込みがありました。
それによると松田氏は91歳でまだご存命であるものの、コロナ禍で面会が制限されている内に認知症が進んでしまい、もはや孫の自分のこともわからない様子であると。しかし、その松田氏に箱に入ったDL-103を見せてみると、急に「103だ。これは僕が一生懸命作ったんだよ!」ととても嬉しそうに話し出し、当時の工夫などを熱く語ってくれたというのです。
そこで孫の上杉さんは「自分はオーディオの知識が無いので、知識と機材をお持ちの方にこのDL-103を使って祖父が大好きな『ワルキューレの騎行』のレコードを聴かせてあげるのに協力していただけないか」と呼びかけたのです。ただ、松田氏が現在入られている施設の都合上、提供者の方の同席は許可されるか判らないなど制限は色々あるがそれでも良ければ、とのことでした。
近場であれば私でも協力できそうな内容でしたが、確か施設は武蔵野市だったはずですし、どうせならDENONの機材(ターンテーブルDP-5000なども松田氏が開発したらしいので)を揃えられる方が望ましいのではと思っていたところ、日本コロンビア時代の後輩で、現在もデノンの現役の技術者という方が名乗り出られたそうで、この計画は実行に移されたそうです。
結果は大成功だったということは上杉さんの御礼ツイートでわかっていたのですが、どうせなら詳しい話を読んでみたいと思いました。
結果的に当日は施設のご厚意などもあり、機材提供をされたデノンの岡芹氏、この企画を呼びかけた日本コロンビアの冬木氏、さらにオーディオ評論家の林氏が同席されたということで、林氏がまとめた文章がこの号に掲載されています。
内容はここであまり細かく取り上げるべきではない(記事を直接ご覧いただくべき)と思いますが、当時松田氏が文字通り心血を注いでDL-103を作り上げたということが書かれている内容から読み取ることができ、ちょっと感動的ですらあります。
「今時のアナログ」を網羅
DENON DL-103については当日のレポートの他、業界人などを中心としたDL-103への思い入れなどのコメントも多く寄せられています。その中には普段お世話になっているKS-Remasta主宰の柄沢氏のお名前も…。
この特集以外の記事としては、お約束の新製品レビューなどは勿論掲載されていますし、愛好家訪問なども定番といえます。
なかなか参考になったのは評論家の小原氏による、低価格ターンテーブルの使いこなし術で、REGA Plannar 2 mk2とTechnics SL-1500Cを題材としているので、意外と参考に出来る人が多いのではないかと感じました。SL-1500Cについては私のSL-1200Gに通じる部分もありますし…。
そして、個人的に最も参考になったと思えるのはこちらです。
低価格帯の製品については概ね存在と特徴は頭に入っていると思っていましたので、自分が知らない低価格製品があったということに驚くと共に探求が足りないことを痛感させられました。
ただ、今号は本日7月3日が発売日なのですが、オルトフォン製カートリッジを7月2日までの旧価格で表記して無理矢理加えていることに違和感があったのは否定できません。しかも7月3日からの価格も併記されていて、Ortofon MC Q10に至っては5万円どころか8万円を超えてしまっているのですが…。
そしてここまでの記事は私も楽しめたのですが、それ以外の記事がとにかく高額製品に寄ってしまうのがアナログの問題点です。数百万クラスのものをズラズラ並べられても、ライトユーザーや初心者がこの雑誌を買おうという気にはなれないでしょう。
まあ、今時紙媒体のオーディオ誌など、比較的年齢層と所得層が高い人が買うものだろうと言われてしまえば反論は出来ませんが。ただ、間口を広げる努力は常に見せて欲しいと思っています。
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購入金額
1,680円
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購入日
2023年07月03日
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購入場所
Amazon
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