レビューメディア「ジグソー」

アルバム販売がメインだった時代、前後の作品によって、評価がわりを喰っている作品

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。楽曲ダウンロードの切り売り販売が定着した現代ではあまり関係ないかも知れませんが、以前はアルバムの売れ行きは、その作品の代表曲に引っ張られる面がありました。作品としての平均点は高く、ファンの中には熱烈に支持する人も多い作品であっても、大衆にアピールするヒット曲を持つアルバムと比較すると、埋もれてしまうこともあります。前後にそういった話題になった作品を持つため、一般的な意味では知名度が低くなってしまった作品をご紹介します。

 

Neil Larsen。1970~1980年代に活躍したキーボーディスト。初期の「フュージョン」を支えた人物でもある。ジャンル発祥のアメリカで「フュージョン」と言えば、当初はジャズやラテンテイストが強い比較的ライトなインスト系音楽(文化系?)で、ブームが若干遅れた日本で主流となった、ビート感が強くロックテイストが濃いジャパニーズフュージョン(いわば体育会系)とは異なり、ジャズ系楽曲に興味がないと受け入れられることはなかったが、Neilは楽曲がポップなステイストで、キャッチーなところが日本でも受け入れられた。

 

そんな彼の代表作は、なんと言っても盟友Buzzy Feitenの名も並列に掲げた大ヒットアルバム“LARSEN|FEITEN BAND”

だが、あれはヴォーカル入りで結構AOR系の名盤としても挙げられる作品。そしてフュージョンキーボーディストとしての代表作は、本作の前のソロ名義としては1stに当たる“Jungle Fever”であり、そちらはポップでラテンの風味がある曲が並び、評価が高い。

 

その間に位置して、若干わりを喰っているのが、Neilの個人名義としては2作目に当たる本作“High Gear”。あまり「激しい」曲がないが、COOLで平均点の高い楽曲が並び、ツウ好みの盤となっている(そういえば山下達郎も本盤が好きだと言っていたような...)。

 

実はこの“High Gear”、プレイヤーも盤石。キーボードは当然Neil本人、ギターも当たり前のように盟友Buzzが収まるが、リズム隊はドラムスSteve Gadd、ベースAbraham Laborielの超盤石コンビ。ただ彼らも当時は若いので(本盤制作1979年)、後年に比べて結構エネルギッシュ。リズムは他にパーカッションのPaulinho Da Costa。加えてサックスに名プレイヤー故Michael Breckerと、後の超大物揃いで作品を盛り上げているので、どの曲も甲乙つけがたく、平均点が異常に高い。

 

オープニングのタイトルチューン「High Gear」は、アコースティックピアノで若干哀愁をおびつつ仰々しく?始まるが、すぐに倍速にスピードアップして、Michaelのサックスがリードし、Paulinhoのラテンなパーカッションと、Steveにしては結構踏みまくりのキックが複雑なリズムで盛り上がる。聴き所はNeilお得意のオルガンソロかな。

 

This Time Tomorrow」は、NeilのオルガンとBuzzのクリーンなギターカッティングの絡みが印象的な作品。Buzzのソロは結構ブルージィなテイストで「い・つ・も・の」という感じだが、Neilの弾くオルガン音色がパーカッシヴで心地良い。

 

ラストの「Night Lette」は、部分的ながらも珍しくサンバキックを踏むSteveのプレイが聴けるハッピーな小品。ソロはNeilBuzzの順だが、綺麗にまとめたNeilに対して、Buzzは「お前~w」と言いたくなるようなトリッキーなライン。これに触発されたか、Abeも所々に高音域の装飾音を入れたりしてノリノリ!

 

通して聴くと、どの曲も良くて、いわゆる「捨て曲」はないが、この作品を代表する...というほど強い印象を残す曲もなく、“Jungle Fever”と“LARSEN|FEITEN BAND”の間に挟まれて、ちょっと印象が薄くなってしまった感じ。

 

そういう意味では「著名盤と著名盤の間に挟まれた、隠れた名盤」と言えると思います。

 

【収録曲】

1. High Gear

2. Demonette

3. Futurama

4. This Time Tomorrow

5. Nile Crescent

6. Rio Este

7. Night Lette

 

「High Gear」

更新: 2022/11/23
必聴度

インパクト、という点では若干....

楽曲の平均点は高いのだが、強烈な印象を残す曲、“Jungle Fever”の「Sudden Samba」や、“LARSEN|FEITEN BAND”の「She's Not in Love」のようなキラーチューンがない。

  • 購入金額

    1,875円

  • 購入日

    1990年頃

  • 購入場所

11人がこのレビューをCOOLしました!

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