レビューメディア「ジグソー」

入手難となりつつある、安価で安定したJJ Electronics製真空管

以前ジャンクで入手したCayin製ヘッドフォンアンプ(厳密にはプリメインアンプ)、HA-1A。

 

 

 

 

 

 

上記レビュー内で記載した通り、さほどノイズに頓着しない私でも気になるほどのノイズ量に悩まされていたのですが、先日Cayinの代理店であるコペックジャパンの方と話をさせていただいた際についでに相談してみたところ、真空管の劣化の可能性が高いというご指摘を受けました。

 

そこで改めてHA-1Aの天板を開けて計4本の真空管を目視してみたところ、左右のパワー段で1本ずつ使われているEL84(Electro-Harmonix製)が、どちらも黒ずんでいる事が判りました。ちなみにプリ段のCayinロゴが印刷されている12AU7、12AX7については、いずれもまだ綺麗でした。

 

こうなると取り敢えず交換しなければいけなさそうなのはEL84の2本です。早速代品を購入しようと思いWeb上で色々調べていたのですが、まずブランドにより随分価格差があるということが判った上に、真空管に疎い私でも知っている、メーカー純正採用が多くコストパフォーマンスが良いJJ Electronics製品がどの販売店でもかなり品薄で、価格も上がってきていることが判りました。

 

これは当然ロシアによるウクライナ侵攻が直接的な原因です。現存する数多くの真空管ブランドは殆どが米国New Sensor社傘下のロシア工場で製造されているため、流通が著しく滞っています。さらにロシア以外での大手製造メーカーとなるスロバキアJJ Electronicsは、元々ロシアの軍事侵攻前からコロナ禍によりバックオーダーを大量に抱えてしまっており、数ヶ月~数年という納期となってしまっているということなのです。後は中国メーカーですが、これも上記の状況により注文が集中して品薄状態で、結果的に真空管全体が入手難となってしまっているという訳です。国内の名門オーディオメーカーLUXMANも、従来の真空管が入手難となったためJJ Electronicsに打診してみたところ、納期約2年と回答され、結果的に中国製PSVANEを採用することにしたと説明しています。

 

Cayin HA-1Aはシングル構成であり、左右でEL84を1本ずつ使います。当然2本の特性が揃っているマッチドペアの方が左右のばらつきが出ず望ましい訳ですが、最悪多少ばらついても新品が安く出ていたら買っておくしかないかと思っていたのですが、たまたま立ち寄ったヨドバシカメラで真空管を値上がり前の価格で売っている事に気付いたのです。

 

EL84もJJ Electronics製や、HA-1Aの標準搭載と同じElectro-Harmonix製がマッチドペアの2本で5千円前後で表示されていました。そこで早速買おうとしたのですが在庫は既に無いということで、展示サンプルを販売できるか調べていただいた結果、OKが出た上に展示品値引きも入るということで、結果的には今となってはかなり安価(少し前なら普通程度ですが)に入手することが出来ました。

 

 

 

 

 

 

 

箱が残っていなかったためエアキャップで包んでいただき、それを慎重に持って帰ってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更新: 2022/10/16
総評

元の真空管で感じていた不満は概ね解消

それでは、HA-1Aの標準搭載品と差し替えてみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

左が標準搭載品です。写真では判別しにくいのですが、うっすらとElectro-Harmonixのロゴが印刷されています。よく見ると部分的に黒ずんでいますので、やはり相応に劣化しているということなのでしょう。新品のJJ Electronics製の方が明らかに綺麗です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく通電して異常は無さそうでしたので、以前の試聴と同様にCHORD HugoのRCA出力と接続して試聴してみました。使ったヘッドフォンも以前と同様にMassdrop × SENNHEISER HD6XX(ケーブルはBrise Audio STD001HP for SENNHEISER HD650)です。

 

まず気になっていたホワイトノイズは一聴して判るほどに低減されました。それでも同種の製品と比べればまだ少し多いかも知れませんが、この程度であれば音楽を楽しむのに支障は無いと判断できる程度です。ゲインを65~120Ωにセットすれば通常の音量ではまず問題ありません。120Ω以上にセットすると無音部分で聞こえてくるという感覚です。

 

そして音質ですが、今までの少しくどさを感じるような濃厚さが薄れ、ほどよい濃厚さに収まり、音場の見通しが大幅に向上しました。主に高域方向の解像度もかなり改善されましたし、ハイハットの金属感も良好です。それでいて真空管らしいヴォーカルの質感やピアノの響きはきちんと残されていて、Hi-Fi方向に少しシフトしてとても良いバランスにまとまりました。

 

今までの音であれば常用するほどの価値は感じられませんでしたが、この水準なら使い続けても良いと感じられるほどに満足感は高まりました。

 

 

私は真空管を取っ替え引っ替えするようなユーザーではありませんし、今後もそのつもりはありませんが、この真空管の交換に関してはとても納得の行くものとなりました。

  • 購入金額

    4,200円

  • 購入日

    2022年10月15日

  • 購入場所

    ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba

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