オヤイデ電気(小柳出電気商会)の設立70周年を記念して、創業者小柳出一二氏が開発し、現在ではオーディオ界の常識となったオーディオ用電源タップの限定モデルが、現時点までに2機種発売されました。
まず最初に発売されたのは、この分野の第1号製品となったOCB-1をベースとした「OCB-1 ST 70周年記念モデル」でした。当時はまだ高級オーディオでも殆どの製品が機器に直付けされた電源ケーブルを使っていて、ごく普通の2ピンプラグであったことから、2ピンコンセント×6口という構成でした。
そして第2段として発売されたのが、今回取り上げる「OCB-1 RX 70周年記念モデル」です。OCB-1 RXはオヤイデ電気の直販専用モデルとして用意された製品で、ケース形状等はOCB-1と同等であるものの、コンセントは3ピン×4口となり、よりオーディオ機器用途を強く意識した構成となっています。そのOCB-1 RXのプラグ部分をoyaide P-029という真鍮無メッキプラグから、限定仕様のリン青銅無メッキプラグへと変更して、価格を初代OCB-1と同等の8,500円(税別)に設定して限定500台だけ生産したものが、今回取り上げる「OCB-1 RX 70周年記念モデル」となります。
「OCB-1 RX 70周年記念モデル」は前述の通り限定500台だけ用意された訳ですが、その500台は秋葉原の直営店300台、インターネット通販の「oyaide.com」で200台という割り当てで販売されました。直営店の300台は販売日を計3日設けて、それぞれの販売日に限定100台ずつ先着販売されたのですが、インターネット通販の200台は指定期間内に応募フォームから申し込みをして、その応募数が200を超えた時点で抽選販売となるという形での販売でした。
「OCB-1 ST 70周年記念モデル」の時の状況から考え、ほぼ間違いなく抽選になるだろうと思ったのですが、電源タップのためだけに秋葉原に出向く元気も無く、買えればラッキーかなという程度のノリで申し込みをしておいたところ、無事抽選に当たって購入となりました。最終的には募集枠200に対して900以上の申し込みがあったということで、当たったのは意外と幸運だったのかも知れません。
当選通知は7月末時点で受け取っていたのですが、少し手続きが遅くなり8月1日になって入金等を行ったところ、翌日8月2日には手元に届きました。
販売価格からすれば文句ない出来
それでは中身を確認してみましょう。
まず蓋を開けるとOCB-1 RXのボックス部分と、オヤイデのラインナップ名である「NEO」のステッカーが現れます。
中蓋を開けると電源ケーブル部分も確認することが出来ます。
ボックスに実装されている3ピン4口のコンセントは、明工社製ML1286R(オヤイデ特注のレッドカラー仕様)で、これは上下2つのコンセントが1ユニットで構成されます。部品として買っても1組500円以上するという、意外と高価なものです。
ボックス部分を裏から見た図です。オプションのコンセントベースを取り付けあれるネジ穴等が用意されていることが判ります。
プラグはオヤイデオリジナル仕様らしいのですが、単品販売では見かけないリン青銅無メッキ仕様で、3ピンでは無く2ピン+アース線となっています。アースは必要に応じて接続すれば良いという考え方のようです。
さて、今回「OCB-1 RX 70周年記念モデル」はどこに使うかを具体的に考えて買った訳では無く、もし買えたら活用法を考えようという程度でした。私が普段使うオーディオ周りやPC周辺のオーディオデバイスは、殆どOCB-1 RX 70周年記念モデルよりも上位グレードの製品に繋がっていたためです。
当初考えたのはMarantz M-CR612+TVの電源をこれに交換するというものでしたが、出来ればきちんとオーディオ環境で使って試聴してみたいという思いもありました。
そこで自宅では無く、リスニング用に一部屋確保されている身内の家に持って行くことにしました。ここは私が常用している環境とは異なり、ごく普通の家庭用タップでオーディオが接続されているためです。
プリメンインアンプ Accuphase E-212 + スピーカー Harbeth HL Compact(このスピーカーやYAMAHA GT-2000+ALPINE/LUXMAN LE-109、Victor XL-Z621等は私がこちらに持ち込んでいます)という環境で、差し当たってE-212の電源を従来の家庭用タップとOCB-1 RX 70周年記念モデルとで差し替えて試聴してみることにしました。ソースはこの辺りです。
なお、E-212の電源ケーブルにはSUNSHINE SAC-Reference 1.8mを持参して組み合わせました。
はっきり言ってしまえば、試聴は1曲のワンコーラスで十二分でした。さすがに家庭用タップとOCB-1 RX 70周年記念モデルとでは、出てくる音の次元が違いすぎました。
「Runaway / Champlin Williams Friestedt」を1コーラスずつ聴いたのですが、音場の広さ、低域の深さと明瞭さ、ヴォーカルの生々しさなど、あらゆる要素で歴然とした差が生まれました。さほど音量は上げなかったのですが、それで露骨な違いが生じるほど圧倒的な違いでした。
次に「アトムの子 / 山下達郎」では、アナログから起こしたソースであるだけに、低域の深さがかなりあるのですが、OCB-1 RX 70周年記念モデルの方を使うことで、その低域のエネルギー感がスピーカーまできちんと到達するようになったような感覚です。この違いを聴いてしまうと、今更元のタップには戻せません。
「異邦人 / 雨宮天」では、ヴォーカルの美しさが全く違います。OCB-1 RX 70周年記念モデルを使うことで、HL Compactらしい生々しさに満ちあふれるあのヴォーカルが出てくるようになります。今までのタップではその質感がまるで無かったことに気付かされてしまいます。
後でアンプをPioneer A-70Aに替えてみたのですが、基本的な傾向はE-212の時と変わらず、あらゆる要素でOCB-1 RX 70周年記念モデルの完勝でした。A-70Aは低域方向の表現に難が感じられていたのですが、タップを交換するだけでその弱点がかなり緩和されてきます。もっとも、それでもE-212と比較してしまうと分が悪いのは確かでしたが…。
ここのシステムは電源ケーブルを交換できる機材がアンプ以外には殆ど無く、電源周りが適当になっていたのですが、ここまでの違いが出てしまうとアンプのためだけにでも高音質タップを用意する意味が十分に見いだせてしまいました。今回は送料込みで約1万円という、オーディオ用電源タップとしてはローエンドクラスの製品を使った訳ですが、それでも家庭用電源タップとは別次元といえる音は出てきます。決して電源事情が良い家では無くても、このようなタップを導入する意義は十分に見いだせたというのが、今回の試聴の収穫です。
その意味で、安価でありながらオーディオ用電源タップという実力をきちんと示してくれたOCB-1 RX 70周年記念モデルの出来の良さは素晴らしいものがありました。残念ながらOCB-1 RX 70周年記念モデルは昨日の販売分で完売してしまったそうですが、また新たな限定モデルが用意されることを期待したいところです。
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購入金額
9,350円
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購入日
2022年08月02日
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購入場所
オヤイデ オンラインショップ
harmankardonさん
2022/08/21
私はハズレました.
jive9821さん
2022/08/21
軽い気持ちで応募したのが良かったのかも知れません。
正直、倍率が3倍を超えたらダメかと思っていましたので…。