先日都内で古くからの友人と待ち合わせたのですが、早めに到着して徒歩で移動していたためあまり時間の感覚が掴めず、30分ほど時間が余ったため、お茶の水のオーディオユニオンに立ち寄ることにしました。
特に4階のアクセサリー館を中心に見ていたのですが、そこで今までに見たことが無いKS-Remasta製のシェルリード線が置かれているのに気付いたのです。よく見ると「PC-Triple C/EX」材を採用していながら、希望小売価格11,000円とそこまで高価でもありません。どのようなものか見せていただこうとしたところ「試聴機があるからすぐに聴けるよ」という店員の方からの提案があり、折角なので実際に音を聴かせていただくことにしました。比較対象としては、試聴機が用意されている中で過去に使ったことがあり、価格も同等の8N-OFCを採用するKS-LW-8100EVO.Iを選択しました。
ターンテーブルはAcoustic Solid Solid Vintage System(と思われる)、 フォノイコライザーはAurorasound VIDA MKIIだったそうです。ちょっとターンテーブルのワウ・フラッター(特にワウ成分)が気になるなと思いつつ試聴しました。
すると、全く聴き慣れないシステムで聴いていたにもかかわらず、KS-LW-9500EVO.IIとKS-LW-8100EVO.Iの聴き比べで以前私がレビューに書いたKS-LW-8100EVO.Iの長所と短所が克明に表現されていました。ということは、少なくともそれを描き出せるほどにKS-LW-9500EVO.IIの描写が優秀だったということです。
この時点で購入することはほぼ決めていたのですが、今年一杯は2割引で販売されるということで、それならばと即購入したのです。内心2セット買っても良いかなと思ったほどに、その時点で好印象は持っていましたが…。
この製品について掘り下げる前に、導体のPC-Triple C/EXについて少し解説しておきます。まず、ベースとなるのは「EX」の文字が付かないPC-Triple Cとなります。PC-Triple Cについては以前採用製品を何度か取り上げていますが、簡単に言うとかつてオーディオ用高品位導体として一世を風靡したPCOCCが製造中止となった後、既存の導体をベースに平滑度の向上や結晶粒界を排除するなどしてオーディオ用の高品位導体として新たに開発された銅素材となります。
そしてPC-Triple C/EXは、PC-Triple Cを純度5Nの銀でコーティングした素材であり、純度の高い銀素材を厚手に使うことで、銅線で発生する表皮効果による高周波信号の減衰を銀の高い伝導率で補うことを意図した素材です。導電率は105%を誇るとのことです。詳細はこの辺りの記事でご確認ください。
銀コートされた導体らしく、KS-LW-9500EVO.IIも銀色の導体であることが確認できますね。
見通しよく広い音場と質感の高さは価格帯を超える
購入時の試聴である程度は傾向は掴めていますが、やはり自分の環境できちんと確認するべきでしょう。
試聴環境は以下の通りです。
また、比較対象にはPC-Triple C単線と、KS-RemastaオリジナルEVO.IIハンダを組み合わせたKS-LW-1500EVO.IIを用意しました、
それでは音を出すために、ちょっと久しぶりとなりますが、組み付け作業を行います。
KS-Remasta製のシェルリード線としては標準的な太さで、やや硬いものの特別作業が難しいものでは無いと思います。
試聴ソースは「Babylon Sisters / Steely Dan」「10 Miles / Champlin Williams Friestedt」を中心に数曲というところです。ちなみに購入時の試聴ではStereo Soundから発売されている高音質レコードから「Rosanna / TOTO」を聴いています。
まず、KS-LW-1500EVO.II比でいうと、音場はさらに一回り広がり、空間の見通しもとてもクリアです。中低域の厚みや密度はKS-LW-1500EVO.IIに分がありますが、高域方向はKS-LW-9500EVO.IIの方が緻密かつ明瞭な描写です。特に「Babylon Sisters」の冒頭から入るハイハットの音の違いには驚かされます。KS-LW-1500EVO.IIでも店頭試聴時に使ったKS-LW-8100EVO.Iよりはシャープに表現されているのですが、KS-LW-9500EVO.IIの方がより金属的な質感がきちんと出てきます。
ヴォーカルやギターなど中心に来る音についても、KS-LW-9500EVO.IIの方がもう一歩の生々しさが表現されるようです。私が普段アナログ音源からWAVデータを作成する時に使うカートリッジであるaudio-technica AT-OC9/IIIやAT-ART7には、より上位グレードのKS-Stage401EVO.II/VKやKS-Stage301EVO.IIを組み合わせているのですが、それと比べても質感の高さは肉薄しているのではないでしょうか。今まで使ってきた1万円前後の製品と比較すると頭一つ抜けている印象を受けます。
そしてエコー成分など間接音の表現にも差が付きます。KS-LW-9500EVO.IIと比べるとKS-LW-1500EVO.IIの方は間接音が最後まで表現し切れていないように感じられるほど、微細な部分まできっちりと描写していることが判るのです。
誤解の無いように言っておきますが、KS-LW-1500EVO.IIも他の製品と比較してそれらの要素が劣っているわけでは無く、むしろ同程度の価格帯の製品の中では優秀な部類です。少なくとも、同じKS-Remasta製品でもKS-LW-8100EVO.Iと比べれば、それらの要素ではKS-LW-1500EVO.IIの方がはっきりと上です。それと比べてもさらに優位に立つKS-LW-9500EVO.IIは、長所の部分では同クラスの製品を圧倒しているということになります。
強いて言えばKS-LW-1500EVO.IIと比べると全体的により明るめの雰囲気となることで、ソースによっては満足感は下がるかも知れません。また、低域~中低域の厚みや密度はKS-LW-1500EVO.IIの方が有利です。そういった特性を加味しつつ組み合わせを考えれば、恐らく価格を遙かに超える満足度を得られるものと思います。
やはり2割引で買えるうちにもう少し買い増しておこうと思うほどに、満足度の高い製品です。
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購入金額
8,800円
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購入日
2021年11月25日
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購入場所
オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館
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