所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。再版。再プレス。商業本やCDではよくあることですが、同人作品ではあまりないことのようです。出版元、レーベルが返品を受け付ける商業品と違い、同人作品では依頼者（作者）が買い取りになるため、よほど「次も売り切れる」との自信がないと再版／再プレスはされません。一期一会とも言われる同人音楽界で、「ほぼ再プレス」が行われた例をご紹介します。

GYARIことココアシガレットP。2008年から活動しているボカロP、かつその曲のバックボーンや説明を描いた同人誌を創るアーティスト。

彼が一番注目されていたのは2015年～2019年あたり（2020年以降は新型コロナウイルス感染症による同人誌即売イベントの中止や、そもそも彼の活動の中心が、自身で楽曲や同人誌を製作をすることから、Vtuberのプロデュースに移ってしまったので．．．）。その中でも物販が一番熱かったのが、長尺3部作シリーズをリリースした2015年～2016年と、その3部作をゴーインにまとめた超大作1時間超の曲が収められた作品のリリースがあった2017年あたりと思う。

その「大作」が、以前ここでレビューした“RRRepeat!!!”。

それまでの1曲20分超の長尺3部作、“abgm”、“tettey-terettey”、“WAAAA!”の収録曲を繋げ、1曲に仕上げた60分超の曲。“RRRepeat!!!”は、CDとDVD1枚ずつの構成だったが、CDの方には「RRRepeat!!!」1曲が、1トラックチャプターなし！の俠気ある収録のされ方をしていた。

そして、DVDには「RRRepeat!!!」とそのオフヴォーカル版の高音質版音源、ジャケットに使われた集合画とメンバー単体ボカロの切り出し画、元となった長尺3曲の高画質MVが収められ、さらに48ページのブックレットが付属していた。

この長尺3部作まとめ曲とも言える「RRRepeat!!!」を収めたディスクの人気は高く、発売当時委託販売を請け負っていた同人系書店に行ける土地に住んでいたが、朝棚に相当数あったものが、夕方には消滅していたということもあるほどだった。

そしてついに2018年、この“RRRepeat!!!”には「復刻版」が作られることになった。

それが“Re:rrrepeat!!!”。

内容的には、ほぼ完全な「復刻」だったが、形状的には多少簡略化した形での復刻となった。

復刻版ディスク

“RRRepeat!!!”⇒“Re:rrrepeat!!!”への変更点は以下の通り。

＜装丁＞

・A5変形、スリーブジャケット付き⇒紙製見開きDVDサイズケース（ジャケット画変更）

＜CD＞

・CDフォーマット（16Bit-44.1kHz）の「RRRepeat!!!」収録⇒CD省略

<DVD-DATA->

・Movieフォルダ⇒変更なし

・Audioフォルダ⇒変更なし

・Imagesフォルダ⇒“Re:rrrepeat!!!”の新ジャケット画データ収録

・Bookletフォルダ・・・新設。“RRRepeat!!!”のブックレットPDF収録

＜ブックレット＞

・48Pカラーブックレット付属⇒省略、データはDVDへ収録

要するに冊子をデータ化し、新ジャケット画と共に、DVDに収め、CDフォーマット(16Bit-44.1kHz)の1テイクを捨て、元々あった24Bit-48kHz版のみとした、という変更。最近のCDをディスクのまま聴くというニーズの低下でCDを省くのは順当。そして、再版にとって一番コストがかかる冊子をデータ化してDVDに収めることで、再生産コストを抑え、もし在庫ができてしまったときにもコンパクトに収納できるようにしたのだと思われる。その代わり、容量4.7GBとほぼ片面フルに使うことになってしまったけれど。

DVDディスクの大きさの見開きジャケット

．．．結局この復刻版もあっという間に売り切れてしまったが。

曲としては前レビューと全く同じ。

「abgm」⇒「tettey-terettey」⇒「WAAAA」と繋いで、エンディングは完全新録のコーラス、「RRRepeat!!!」。最後は、振出しに戻って「abgm」にループするのはお約束。ただこれだけではなくて、繋ぎの部分は完全新録だし、歌を担当するボカロが変わっていたり、構成がいじられて新たなフレーズが入ったり、あったフレーズが抜かれたりして1曲にまとめられている。3曲のリリース間隔は半年ピッチで、1年半で出し切ったので、曲調もある程度の共通性があってつなげやすかった．．．というのはあるが、やはりアレンジ能力がパない。特に若干静かめの「abgm」から、騒がしい「tettey-terettey」に繋ぐ部分が一番いい感じに仕上がっている。

あとルカ姐さんのラスボス感たるや．．．．

このあと、GYARIは長尺ボカロジャズシリーズを封印して、「ボイスロイドを歌わせる」という無茶斬新なアイデアの方にシフトすることになる。

それはそれで新規性に溢れ、面白い取り組みだったけれど、ジャズっ気はほとんどなくなってしまう。GYARI=ボカロジャズ．．．というイメージが強かったので、そのイメージを残している長尺シリーズまでが、自分としてはGYARIの「本流」という感じがする。

そういう意味では、このあと彼の作品はディスクでの楽曲供給からダウンロード供給に変わったこともあり、ひとつの時代が「終わった」と感じた作品でもあります。

リンちゃん、よだれ．．．ｗ

【収録曲・内容】

Movieフォルダ
・abgm.mp4
・tettey-terettey.mp4
・WAAAA!.mp4
Audioフォルダ
・RRRepeat!!!(24Bit-48kHz).wav
・RRRepeat!!!(320kbps-48kHz).mp3
・RRRepeat!!! – off vocal – (24Bit-48kHz).wav
・RRRepeat!!! – off vocal – (320kbps-48kHz).mp3
Imagesフォルダ

・front-cover.png（新ジャケット画像）
・keyvisual.png（ジャケット画－全体－）
・keyvisual_rin.png（ジャケット画－鏡音リン－）
・keyvisual_len.png（ジャケット画－鏡音レン－）
・keyvisual_miku.png（ジャケット画－初音ミク－）
・keyvisual_luka.png（ジャケット画－巡音ルカ－）
・keyvisual_yukari.png（ジャケット画－結月ゆかり－）
・keyvisual_iroha.png（ジャケット画－猫村いろは－）
・keyvisual_kaito.png（ジャケット画－KAITO－）

Bookletフォルダ

・RRRepeat BOOKLET.pdf（“RRRepeat!!!”のブックレットPDFデータ）

「ボーカロイドたちが2コードくり返してﾃｯﾃｰﾃﾚｯﾃｰとか叫ぶだけ（RRRepeat!!!）」