所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。長い曲。クラシックやプログレのように、異なる曲調をひとつの曲に内包し、「物語」のように語っていく曲があります。その一方、主にジャズ系の楽曲のように、ソロ回しや、曲へのシカケを詰め込んで長くなってしまう場合もあります。一応ジャズの形態をとりつつも、作者のサービス精神も相まって、仕掛けやネタ満載で、とてつもなく長くなってしまった作品を連発したボカロPの、長尺曲連作?の幕開けを告げる楽曲をご紹介します。
GYARI、別名ココアシガレットP。ボーカロイドを使ったジャズ、ボカロジャズを多く手がけたPだが、彼の活動はいくつかの時期に分けられる。まず、歌うのは主に鏡音リンだけで、ピアノトリオ(後にエレピも加えたカルテット)でカバーやオリジナルのジャズ調楽曲を手がけた初期。それに続いて、後に多用することになるボーカロイドとボイスロイドとを兼ねる結月ゆかりを加えて、複数のジャンル・方向性を探った時期。非常に長い曲が特徴になり、ついには1時間超の楽曲をリリースした長尺曲時期。「歌わせる」ためにあるボーカロイドではなく、本来「しゃべらせる」ものであるボイスロイドに歌わせた時期。そして現在は、自身の楽曲発表よりは、自分がデザインしたVTuberのプロデュースに興味の中心が移っている。
そんな活動歴のなか、長尺曲が連発されたのが2015年夏からの2年ほど。そして、その長尺曲一作目が本作、“abgm”。
楽曲名の「abgm」とはA♭とGm、つまり「AフラットとGマイナー」を表す。何のことかというと、動画名の方が中身を表していて、つまり「ボーカロイドたちがただ2コードくりかえすだけ」...要するにA♭⇒Gm⇒A♭⇒Gm⇒A♭⇒Gm⇒...と2つのコード(和音)を繰り返し続ける曲なわけ。20分以上もw
最初、リンがピアノだけでぽつぽつと弾いていたのが、ミクのウッドベースが加わり、のぞきに来たレンのエレピやKAITOのドラムスも加わり、ボサノヴァ調の曲に。そのうち、KAITOがガマンできなくなりサンバ風に熱く。その後、飽きたふたり(レンとKAITO)が華麗に退場し?リンの声(スキャット)とピアノがジブリっぽく響き、ミクのベースが寄り添うスローな展開に。だんだんダイナミックに盛り上がってくると、満を持して?KAITOが再登場(おまたせ)。この後、例によって途中でリンは投げ、帰って来たレンが入ったエレピトリオでキメキメフレーズをひとしきりやって、カルテットに戻って6/8にリズムチェンジ、ピアノソロ⇒エレピソロ⇒癒やしのベースソロとまわしてから4/4に戻し、サンバ調のサビに戻して、さらにピアノソロ⇒リズム崩しのキメを挟んで⇒エレピソロ⇒ベースソロとソロ回しをして、ついにはKAITOがロックに持っていき....
最後の衝撃の展開があるのは、お・約・束。
同梱のイラスト本は、12ページしかないが、この曲ができた由来?が語られ、面白い。
それまでもボカロジャズ界隈では高い人気を誇っていたGYARIだが、一般化したのは、この長尺3部作から。そういう意味では、その出だしを飾る本作は大切。
まだシカケはキョーレツ...という程ではないが、しっかりと長尺3部作の幕開けを飾った曲でした。
【収録内容】
<CD>
1. abgm
<BOOK>
A5ヨコ / 12P / フルカラー / イラスト漫画
pixiv 「ボーカロイドたちがただ2コードくりかえすだけ」スクショ集
「abgm(ボーカロイドたちがただ2コードくりかえすだけ)」
シカケが多く、20分超の曲を飽きさせない
それまでは、マンガに出てくるバンドメンバーの性格などを完全に理解していないと、楽曲を隅々まで味わえなかったが、この曲からはそれを識らなくても味わえる(識っていると200%、動画を観ると300%味わえるが)。
-
購入金額
1,080円
-
購入日
2017年11月23日
-
購入場所
駿河屋
ZIGSOWにログインするとコメントやこのアイテムを持っているユーザー全員に質問できます。