レビューメディア「ジグソー」

ぶっとびわぁるど♡

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。イメージアルバム、という分野。小説やマンガのケータイ化やWebでの公開の割合が増え、音楽もダウンロード全盛のこの時代にはあまり見られなくなった事ですが、以前は人気のあるマンガや小説に、それからインスパイアされた音楽をつけて、さらにはジャケット(マンガ家の場合)や解説(小説家の場合)に作者本人の書き下ろしを加えて付加価値を上げたLPやCDがたくさん販売されていたものです。そんな時代に出されたカオスなアルバムをご紹介します。

わかつきめぐみ、漫画家。いまなお活動を続けるが、1980~90年代に最も活動した少女マンガ家。作風としてはSFタッチでややナンセンス路線が基調にあり、愛憎劇やドロドロの人間関係ではなく、サラっと中性的な話。画風も細い線とパステル調の着色でライト。同人系でコアな人気を誇っていたが夭折したマンガ家かがみあきら(あぽ)を彷彿とさせるニュートラルなタッチで、少女マンガ雑誌(LaLa)掲載だったが、男が読んでも違和感がないマンガを描いた。
独特の細い線と中性的なパステル調のカラーが特徴
独特の細い線と中性的なパステル調のカラーが特徴
そんな彼女に舞い込んだイメージアルバムの話、彼女はダメ元で好きだったロックバンド、ムーンライダースの鈴木慶一を希望した...ら、快諾された!www

鈴木は一つの話に固執する事なく、「わかつきめぐみわぁるど」をアルバム全体で表現することを選んだので、ボーカリストが各曲で異なり、インストあり、劇!ありと統一感はない。さらにSFちっくなわかつきめぐみの作風を表すために?映画のサントラのように様々な曲調の曲を詰め込んだため、実験的でいろんな側面をもつアルバムに仕上がった。

「So What?」。チョイ昔にあったような、8ビートのB級アイドル曲といった造り。ベースはシンベなんだけど、音色の造りが上手く、アタックのみモロシンベという音で伸ばした音は(たぶん)サンプリング(サンプラーというワケではなくサンプリング音源のシンセ含む)の太い音で、結構ノれる。歌はこのレコーディングのあと一時期塩谷哲

らと活動していたこともある本間哲子。

「ぱすてると〜ん通信」はちょっとファミコンのRPGにでも出てきそうな(それも味方の町のBGMとかで)どことなくホノボノした、でも荘厳な感じのインスト曲。少し音色もチープだしw

「あの日のPhotograph」。ボーカル曲は数曲あるがアルバム通して唯一の男声、ロックバンド“カーネーション”の直枝政太郎(現在は本名の直枝政広で活動)。チョイ古めのニューミュージック風。彼は次の曲「WAKE UP!」では作曲もしており制作にも関わったことが判る。

「宝船船上大宴会」は劇...というかコント....というか宴会の環境雑音というかww
「これおいしーですよ」「あらほんと、作り方きいてこようかしら」「やめてよ はずかしいっ!!」とか
「ちょっと 大丈夫なの」「へーきですう あはははは 地震かな ゆれてるよー♡」などの飲み会にはありがちの?セリフに混じって
「あ、やっとみつけた 原稿ほっぽって なにしてんですかっ」「うああああっ」「できてないもんは できてないんだよ」「印刷所待たせてんですよーっ」という本人出演の切実なw掛け合いもあってとってもカオスw「放送劇MIX」の方は曲がりなりにも音楽の形をとっていた無印の方から音楽をBGMレベルまで下げ、セリフを主体にしたもの。さらにハチャメチャw

ライナーにも書かれているが、鈴木が自身の周辺に集う音楽家に活動と発表の場所を模索していたときに舞い込んだ話であり、わかつきめぐみの騒乱症的人間性を見込んで?ノったもの。「これは人材のカタログです」とは鈴木の弁。

ひっくりかえしたおもちゃ箱のようなカオスな魅力に溢れている作品です。

【収録曲】()内ボーカリスト
1. So What? (本間哲子)
2. 異生物接近
3. ハハハ、カナシ (若林マリコ)
4. だって気にいんないだもん (北田かおる)
5. ぱすてると〜ん通信
6. 梅(プラム)ブラザーズのテーマ
7. あの日のPhotograph (直枝政太郎)
8. WAKE UP!
9. 米犬ワルツ (森谷美月)
10. 宝船船上大宴会
11. 宝船船上大宴会〜放送劇MIX
12. 米犬ワルツ〜オーケストラ・ヴァージョン

  • 購入金額

    3,200円

  • 購入日

    1987年頃

  • 購入場所

25人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • yookano794さん

    2012/12/30

    残念ながら、このアルバムは存じ上げませんが、わかつきめぐみのマンガは大好きでした。舞台はSFチックではありますが、日常の心理描写に長けている方、というのが私の認識です。

    So What?は、特に好きでした。また読みたいですねぇ。
  • cybercatさん

    2012/12/30

    yookano794さん、コメントありがとうございます!
    >舞台はSFチックではありますが、日常の心理描写に長けている方
    そうなんですよね。はちゃめちゃな中ででも心理描写はあって、でもドロドロしていないという独特のタッチでしたね。

    >So What?は、特に好きでした。
    では今やっているシリーズが片付いたら(イツノコト?、「本の蟲」ででも語りましょうか!w

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