所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。永く活動するアーティストは、時代の要求、自己の嗜好(指向)の変化、機材の進化などが理由で、曲調を変えることがあります。アーティストにとって新しい機材を使い始めた転換点となった作品をご紹介します。
GYARI(ココアシガレットP)。2008年から活動するアーティストだが、当初はボーカロイド鏡音リンを中心としたジャズトリオが、ジャズ風ボカロ曲を演奏する...という設定の世界観で、楽曲とイラストを発表していた。それがそれまでの集大成CD“AURORAYER”
と、その世界観を描いたマンガ・イラストのまとめ本“AURORAYER NOTE”
で一旦小休止し、次の展開を探り始めた。ちょうど時代はボカロ曲の熱狂時期が過ぎ、ジャンル界隈としても「次の展開」を探っていた時期にリリースされたのが本作。
“CMYK BOX”と名付けられているが、これは印刷の3原色+黒である、Cyan、Magenta、Yellow、Key plateを表し、それぞれその色から想起されるボーカロイドが歌う曲が収められている。
つまり、Cyan(シアン:青緑色)=初音ミク、Magenta(マゼンタ:紅紫色)=巡音ルカ、Yellow(黄色)=鏡音リン・レン、Key plate(印刷用語の黒)=結月ゆかりと言う布陣。「GYARIワールド」には、キャラクターとしてはいずれも既出だが、今まで彼が歌わせたのは、ほぼリン・レンのみ。ゆかりは、コンピアルバム参加で使い、このあとお気に入り?になって多用することになるが、ミクとルカは(全くではないが)ほとんど使わなかったボーカロイドであり、彼女たちがガッツリ歌う曲が収められているこの作品は貴重。
ジャケットには「疾走爽やかRock」と紹介されている「Sunny Wave」はミクが歌う。「Rock」というわりには、ロカビリーでもないのにベースがウッドベース調の音だが、ま、そこはバンドではウッドベース担当のミクのアイデンティティーなんで、しゃーない(あと導入したDTM界隈では「最強のベース音源」と評価が高いTrilianを見せびらかしたかった有用に利用したかったのは判る)。
その「GYARIワールド」での立ち位置とは、全く違うムーディで大人な面を魅せるのが、ルカ姐さんの「Night Rose」。いつもは変拍子ラッパーというか、無限ループマシンというかで、歌らしい歌を歌っていないルカ姐だが、この曲ではジャジィでけだるげな深い声が、大人の魅力。...眠たいからじゃないからな??
「民族調ゲーム的音楽」との注釈がある結月ゆかりの「Mine Travel」。これ、まさにロールプレイングゲームの異郷を旅するシーンの音楽にでもありそうな展開の曲なんだけれど、比較的滑舌が良く深いゆかりの声と合っていて、切なさと郷愁を誘う。
企画モノとして、新味を出そうとしたのか、いつもはGYARIが使わないボーカロイドに歌わせたり、収録された4曲全て方向性が違ったりして、とても楽しいアルバム。いままでの「GYARIワールド」での、ジャズトリオ(後期はカルテット)が奏でる「ボカロジャズ」から一歩踏み出して、いろいろな可能性を探っている感じの作品。
GYARIと言えば、最近の長尺3部作や、ボイスロイドに歌わせたシリーズが有名だが、さらにそれ以前のボカロジャズシリーズからの路線変更時期の作品。ここで提示された4つの方向性、結局その後全ての方向性を伸ばしたわけではないけれど、本作は彼の可能性と意外性が詰め込まれた作品で、自分はとても大好きです。
【収録曲】
1. Sunny Wave 初音ミク
2. Night Rose 巡音ルカ
3. Resonance Sounds 鏡音リン & 鏡音レン
4. Mine Travel 結月ゆかり
5. Sunny Wave - off vocal -
6. Night Rose - off vocal -
7. Resonance Sounds - off vocal -
8. Mine Travel - off vocal -
「【クロスフェード】ボーカロイドたちが新曲を色々作るようです」
ここでしか聴けないGYARIがある
今までボカロとして使っていなかったボーカロイドの登場、そして今まであまりなかった曲調の曲。ある意味異質で、GYARIの他の曲とは全く方向性が異なる。しかし良曲ばかり。
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購入金額
1,000円
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購入日
2017年05月29日
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購入場所
メルカリ
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