レビューメディア「ジグソー」

芯がありつつも品の良い表現

ここ数日取り上げているシェルリード線は、主に今まで私が聴いたことが無い導体の製品を選んで用意していただいていました。基準となる4N-OFCのKS-LW-4000シリーズは除きますが…。

 

今回は他のケーブルでも使ったことが無い国産の高純度銅導体、7N-Class D.U.C.C.導体を採用するKS-LW-7000EVO.Iです。7N-Class D.U.C.C.は三菱マテリアル製のオーディオ用導体であり、D.U.C.C.という名称は「Dia Ultra Cristallized Copper」の頭文字を取ったものです。

 

それまでのオーディオ用銅線では結晶を成長させて結晶粒界(結晶同士の境目)を減らすという方向で伝送効率を高めるアプローチだったものを、7N-Class D.U.C.C.では結晶の方向性も一方向に揃えるという加工を施してより伝送効率を高めているとのことです。

 

現在では主にACROLINK製のケーブルで採用されている素材であり、この素材で作られたケーブルは市場でも比較的高価なものが多くなっています。今回は、この素材をシェルリード線として用いた場合の音を聴くことが出来るというわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘッドシェル側のリードチップの被膜が赤くなっているという特徴はありますが、導体などの外観は102SSCのKS-LW-4600EVO.Iなどと殆ど差がわかりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り付けの難易度も、これまでの製品とほぼ変わりません。きちんとした工具さえ用意しておけば、技術はさほど必要ないのではないかと思います。私の手先で問題なく出来る程度ですので…。

 

 

 

 

 

更新: 2021/05/03
音質

個人的にはこのクラスの撚線では最も好み

音質の方を確認してみましょう。環境は今回もZYX R50 Bloomとaudio-technica AT-LH18/OCCとn間の結線に利用して、その組み合わせをTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200で聴くというものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試聴楽曲も、前回までと同様に「「Babylon Sisters / Steely Dan」「10 Miles / Champlin Williams Friestedt」「One Last Kiss / 宇多田ヒカル」となります。

 

 

まずは「10 Miles」から聴いてみました。傾向をつかむために、通常の4N-OFCとEVO.Iグレードハンダを組み合わせたKS-LW-4000EVO.Iと比較しながら聴いています。

 

 

 

 

 

 

まず冒頭の部分の表現ですが、低域方向のドラムの厚みはKS-LW-7000EVO.Iが一歩上です。逆に中域の密度は少しだけ薄く感じるのですが、それよりも目立つのは雑味が明らかに減ることです。間接音が澄んでいますし、一音ごとに着目しても付帯音が少なくそれぞれの音色が綺麗なのです。

 

ジョセフ・ウィリアムズのヴォーカルも、他の線材で感じられたいがらっぽさが減っていることに驚きます。KS-Remasta製のシェルリード線としてはなかなか珍しい傾向の音ですが、個人的にはこの純度の高い音はなかなか心地よく感じられます。

 

 

続いて「Babylon Sisters」を聴くと、KS-LW-4000EVO.Iと比べて少し湿度感が出てきたような感覚を覚えます。KS-LW-4000EVO.Iの音の方が勢いが良いのですが、この曲を暗めのしっとりとした空気感で描くという傾向が、思いのほか良い雰囲気の空間を構築してくれます。

 

ドナルド・フェイゲンの声は少し柔らかめですが、張りが損なわれるというほどでは無く、むしろ肉声らしさが強くなった感があります。ヴォーカルやピアノなどの楽器は柔らかめの表現である割に、ドラムのキレなどは丸まってしまうことが無く、きちんと鋭く描かれる辺りも好印象です。

 

 

そして「One Last Kiss」では、宇多田ヒカルの声が近くで歌っているような感覚です。子音が耳に付くようなことは無く、ちょっとしたブレス音などがとてもリアルなのです。打ち込みのバスドラムなどは十分に締まりがありますので、アタックへの反応の良さと音色の柔らかさを上手く両立できている良さがあります。

 

OFC単線のKS-Stage101EVO.IIのような対象を間近で描写するようなリアリティはKS-LW-7000EVO.Iにはありませんが、一つ一つの音を適度な距離感かつ高純度で描き出すこの音は、なかなか他では得がたいのではないかと思います。

 

 

私の環境におけるリファレンスはKS-Stage401EVO.II/VKであることに変わりありませんが、リスニング用としてKS-LW-7000EVO.Iを持っておくのも良さそうだと思いました。王道からは少し外れていますが、この音も十分魅力的です。

  • 購入金額

    12,100円

  • 購入日

    2021年04月24日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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