前の2回でOFC線材を使ったシェルリード線2種類を取り上げました。
今回からは、現代的なオーディオ用素材を使ったシェルリード線を取り上げていきます。まずはPC-Triple Cを採用するKS-LW-5800LTDです。
以前PC-Triple C単線を採用した製品は既に取り上げています。
今回取り上げるKS-LW-5800LTDは、同じPC-Triple Cではありますが、撚線を採用しています。同じ素材の単線と撚線とでどのような差を生じるかが今回の注目点となります。
前回のKS-LW-4500LTDと比べれば少し太く硬いのですが、今回もカートリッジの着脱はせずに済む程度の難易度で取り付けることが出来ています。
音色は明るめだが、アナログらしい中低域の濃厚さも
試聴環境はこれまでと同様で、カートリッジがZYX R50 Bloom、ヘッドシェルがaudio-technica AT-LH18/OCCで、これをTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200の環境に装着します。
試聴ソースもこれまでと同様に「Babylon Sisters / Steely Dan」「10Miles / Champlin Williams Friestedt」「One Last Kiss / 宇多田ヒカル」となります。
まず「10 Miles」から聴いてみましたが、KS-LW-4000MRと比べて音場が明るめで見通しの良い空間となることがわかります。それだけであればKS-LW-4500LTDと同様なのですが、中低域が薄くなりアナログらしい中低域の重厚感が薄まっていたKS-LW-4500LTDとは異なり、ある程度の濃厚さを残しています。
また、KS-LW-4000MR、KS-LW-4500LTDまでのモデルと比較すると、音量感が上がっています。音量はきちんと合わせて聴いている筈なのですが、これまでよりも全体的に音が大きくなったような印象を受けるのです。これは以前、KS-LW-6000などでも見られた現象であり、それだけ密度の濃い描写となったということなのかも知れません。
単線のPC-Triple Cを採用しているKS-LW-1500EVO.Iでもそうだったのですが、PC-Triple Cらしくハイハットのタッチの瞬間などがやや強めに描写される傾向も出ています。このやや強調感が出るという辺りで好き嫌いが分かれる可能性はありますが、耳に付くようなきつさはなく個人的にはむしろ好印象です。
続いて「Babylon Sisters」を聴いてみると、やはり全体的に音色が明るめという印象がありました。この曲に関してはもう少し暗めのトーンでも良いかもしれません。
間接音はKS-LW-4000MRやKS-LW-4500LTDよりも鮮やかにはっきりと描写され、量も増えた感があります。ドナルド・フェイゲンの声はやや若めです。スネアドラムの音がこの曲としてはちょっと軽いかなという印象はありますが、全体的に解像度は高くオーディオ的な基本性能が高いことがうかがえます。
そして「One Last Kiss / 宇多田ヒカル」ですが、これはKS-LW-4500LTDと同じく現代的なトーンが曲調に合致しています。前の2モデルと比べるとリードヴォーカルがきっちりと濃い存在感を持っていますし、バックの演奏よりも前に出てきます。
バスドラムのアタックはきちんと鮮明で、それ以外の音も解像度が高く存在しているので、個々の音がそれぞれ明瞭に聞こえてきます。中低域の厚みはKS-LW-4500LTDよりある一方で、中高域はむしろ明るい音ですので、この曲の構成にはかなり上手く合致してきます。前に聴いた2モデルよりもレコードの録音が良くなったかのような印象を受けるほどでした。
より古い録音の曲を聴くと、少し音が上ずった感が出てくる可能性はありますが、今回聴いた範囲ではボトムラインの製品よりは明らかにグレードが一つ上がった感がありました。わかりやすく「良い音」の方向になりますので、割合使いやすいモデルといえるかも知れません。
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購入金額
7,700円
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購入日
2021年04月24日
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購入場所
KS-Remasta
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