私のメインPCは昨年末に組み立てたRyzen 7 2700を搭載したPCです。何故型落ちのRyzen 7 2700だったのかといえば、使うマザーボードが旧世代のAMD X370搭載製品だったためです。
ASUS X370-AはPCIスロットを搭載しているという理由だけで使っているもので、チップセットが2世代遅れのX370であるため、最新のRyzen 5000シリーズは動作しません。そのため、最終的なアップグレードパスはRyzen 3000シリーズということになります。
Ryzen 3000シリーズの上位製品といえば、16コア32スレッドの最上位Ryzen 9 3950Xが文句なしに高性能です。しかし、これは事実上水冷機構必須ということで、さすがにそこまで大げさなCPUは使いたくないという思いがありました。
その次というと12コア24スレッドのRyzen 9 3900X/3900XTです。これは一応考えてはいたのですが、マザーボードが当時のベーシックモデルであるという点が問題になっていました。その当時の上位製品であれば、高性能CPUをさらにオーバークロックで使うという前提があり、それに見合った電源回路がきちんと備わっています。
しかし、X370-Aは電源回路も割合簡素であり、高負荷をかけ続けるとマザーボードの寿命が気になります。そこで実際に購入を検討していたのは、OEM専用ながら12コア24スレッドで定格クロックを低く設定することで発熱や消費電力を削減しているという、Ryzen 9 3900です。これはTDPも65W枠で収まっていて、大げさなCPUクーラーも必要ありません。価格だけがネック(つい最近までは5万円台半ばが相場)でした。
それがここ最近一部販売店で値下げが始まり、税別であれば4万円を割り込む販売店が出てきたため、市場在庫が尽きる前にということで購入することにしました。
この製品の正規代理店はCFD販売とADTECがあるらしいですが、この個体はADTECの取り扱いでした。
バルク扱いであるため、添付品はRyzenシールのみです。まあ、今回はRyzen 7 2700からRyzen 9 3900に載せ替えるだけですので、特に何かが必要ということはありません。
写真だけ撮影したら、すぐにX370-Aに載せてしまいましょう。クーラー等はRyzen 7 2700からそのまま流用します。つまり付属品のWraith Spire (with RGB LED)です。欲を言えばもう少し高性能なクーラーを搭載した方が良いのは間違いありませんが、Ryzen 9 3900もTDPが65Wと公称している以上、これで最低限はまかなえるはずです。
コア数が増えたこと以上にシングルスレッドの性能向上が顕著
それでは簡単にですが、ベンチマークテストで傾向を見てみることにしましょう。
まずは以前からの定番である、MAXON CINEBENCH R15です。
ちょっと見づらいかも知れませんので、数値だけ書き出しておきましょう。
■Ryzen 7 2700
OpenGL:99.24 fps
CPU:1480 cb
■Ryzen 9 3900
OpenGL:162.66 fps
CPU:2804 cb
コア・スレッド数は1.5倍の違いがありますので、それなりに大きな違いとなるとは思っていましたが。予想以上でした。CPUのスコアは2倍近くという向上幅ですし、OpenGLのフレームレートにも大きな差が付きました。定格周波数はRyzen 9 3900の方がむしろ100MHz低いのですが…。
続いて最新版のCINEBENCHである、CINEBENCH R23です。
こちらも見づらいかも知れませんので、数値だけ書き出しておきます。
■Ryzen 7 2700
CPU(Multi Core):8336 pts
CPU(Single Core):923 pts
■Ryzen 9 3900
CPU(Multi Core):16080 pts
CPU(Single Core):1273 pts
マルチコアの値はCINEBENCH R15と同傾向ですが、驚きなのはシングルコアの性能差です。僅か1世代の違いで、クロック周波数も近いこの両者でここまで大きな差が付くとは予想していませんでした。現行のRyzen 5000シリーズではさらのシングルスレッド性能が上がっていると評判ですが、Ryzen 3000系でも十分高性能に感じられます。
続いて3DMarkで新旧のテストを実行してみます。
▲3DMark Sky Diver (Ryzen 7 2700)
▲3DMark Time Spy (Ryzen 7 2700)
▲3DMark Sky Diver (Ryzen 9 3900)
▲3DMark Time Spy (Ryzen 9 3900)
Sky Diver (Ryzen 7 2700)だけ旧バージョンの3DMarkですので、こちらは参考程度でご覧ください。
Sky DiverはCPU性能が総合スコアにも極端な差となって表れていることがわかります。これはCPUテストのウェイトがそこそこ高いことが影響しているものと思います。Time Spyの方は総合スコアに極端な差は無いのですが、CPUスコアはコア数に見合った程度の順当な差が見られます。
実アプリケーションでの使用感はまだそこまで貯まっていないのですが、現在プレイしているSteam版の「英雄伝説 閃の軌跡IV ~ THE END OF SAGA」ではプレイ時の引っかかりが明らかに減っていて、それなりに体感レベルでの差は付いているといえます。
消費電力や発熱は増えるが、性能向上に見合ったレベル
一応CPU-Zの情報を確認しておきましょう。
このスクリーンショットを撮った時点では動作周波数が2769.39MHzと表示されていますが、タイミングによっては4.1GHzで動いていることもあるなど、発熱に余裕がある状態であれば結構積極的にクロックを上げてきている印象があります。個人的には負荷を考えればほどほどで良いのですが…。
ついでにCore Tempで発熱も確認しておきましょう。
こちらはコアが7個ほど4.3GHz以上で回っていて、結構アグレッシブに周波数を上げてきている印象ですが、それだけに割合短時間のチェックでも最大63℃を記録しています。Ryzen 7 2700では50℃を超えることがあまりなかったことを考えれば、やはり発熱は相応に増えていることがわかります。
それでも、TDP 95Wまでの対応となるWraith Spireで実用範囲の温度をキープできているのですから、実用度は十分に高いCPUだと思います。
現在の販売価格で比較すれば、Ryzen 5000系の8コアモデルであるRyzen 7 5800Xよりもかなり安価に12コアCPUを買えるというコストパフォーマンスの高さも魅力となるでしょう。
今回のアップグレードでは、普段PCを使っている範囲でも性能の向上を実感できるだけの差がありましたので、載せ替えた価値は十分に合ったと思います。ただ、早くもこのPCはこれでアップグレードパスが尽きてしまったわけで、このCPUに不満が出るようになった後のことを考えておく必要がありそうです。
-
購入金額
43,978円
-
購入日
2021年04月15日
-
購入場所
BUY MORE 秋葉原店
cybercatさん
2021/04/25
またCPUをレビューできる日が来ないかなー...
jive9821さん
2021/04/25
そういえば一時期はIntelの新CPUが毎回プレミアムレビューに出ていましたね…。
私の場合はRyzen 7 1700→Ryzen 7 2700→Ryzen 9 3900と、TDP65W枠の上位モデルを順に使ってきているのですが、Ryzen 7 1700→Ryzen 7 2700が順当なレベルの進化であったのに対して、Ryzen 9 3900は一足飛びといえる進化で驚かされました。
Zen3にするためにはマザーボードごと入れ替える必要がありますので、当面はこの環境で使おうと思っています。