レビューメディア「ジグソー」

ヴィンテージワイヤーの王道というべき音

先日掲載したKS-VWS-Frontier.I/Nの上位モデルに相当する、ヴィンテージ・ワイヤー採用シェルリード線です。

 

 

 

 

 

このKS-VWS-REX.II/NはKS-Remasta製のヴィンテージ・ワイヤー採用シェルリード線としてはリファレンスモデルという位置付けだそうで、ヴィンテージ・ワイヤーがどのようなものかをつかむには最も適した製品といえそうです。

 

 

 

 

 

 

 

先日掲載したKS-VWS-Frontier.I/Nは1950年代製造のAWG27という極細線を採用していましたが、こちらのKS-VWS-REX.II/Nは1910~30年代製造のAWG26線材を採用しています。私自身ヴィンテージ・ワイヤーの予備知識が全くなく、この線材がどの程度の価値を持つのかは正直理解していません。KS-VWS-Frontier.I/Nよりは少し太い線を使っていることは見て取ることが出来ます。

 

 

 

 

 

 

こちらの写真は「撮影用」のものですが、実際に試聴したものは「試聴機」と書かれている方です。こちらも破損に備えてこの「撮影用」という名の予備機が用意されていた訳です。

 

 

 

 

 

 

 

細身のヴィンテージ・ワイヤーは簡単に切れてしまいそうで怖いものの、実は取り付け自体は現代的な線材の単線よりは取り付けは簡単かも知れません。ZYX R50 Bloomはターミナルピンからストレートに結線できますので、難易度は低いといえるでしょう。

 

 

 

 

 

 

なお、クロス結線のカートリッジでは線を延ばさなければいけませんので、破損の確率は上がってしまいます。より注意深く扱う必要がありそうです。

 

 

 

 

 

 

更新: 2021/04/12
音質

グイグイと押してくるような力強さ

それでは音を聴いてみましょう。

 

環境はいつも通りTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200に装着した状態です。組み合わせるカートリッジはZYX R50 Bloomです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試聴に使う楽曲はKS-VWS-Frontier.I/Nの時と同じく、

 

 

・「Englishman In New York / Sting」(LP「The Best of 25 Years」収録)

・「Prelude No.2 in C Minor / Jacques Loussier」(LP「The Newest Play Bach Vol.1」収録)

・「Runaway Dancer / Champlin Williams Friestedt」(LP「CWF 2」収録)

「I Need To Be In Love / Carpenters」(LP「Stereo Laboratory Carpenters」収録)

「秋止符 / アリス」(LP「アリス 76/45」収録)

 

 

となります。

 

まず「Englishman In New York」では、基本的な傾向自体はKS-VWS-Frontier.I/Nに近いものがあります。ベースラインの押し出しが強く、冒頭のソプラノサックスが少しだけ遠目に聴こえてきます。殆どの楽器がステージ前方まで出てくるような主張の強さは、いかにもヴィンテージ・ワイヤーの音だなと感じるものです。

 

KS-VWS-Frontier.I/Nとの大きな違いは音場が広がり、その広がった空間の描写が鮮明になることです。高域方向もクリアになり、悪い意味での古さは殆ど感じられなくなります。

 

「Prelude No.2 in C Minor」は、意外なことに単純なベースの太さでは現代的な8N-OFCを採用するKS-Stage101EVO.IIの方が太く感じられます。ドラムのアタックはKS-VWS-REX.II/Nの方が強く、ピアノの音色がややソリッドな方向になります。これは完全に好みの問題であり、甲乙はつけがたいものです。この曲はジャズ・トリオの構成ですので、KS-VWS-REX.II/Nの方がより雰囲気が濃厚に出ているかも知れません。

 

「Runaway Dancer」ではKS-VWS-REX.II/Nの押し出しの良さがより活きてきて、冒頭から勢いの良いロックが展開されます。KS-VWS-Frontier.I/Nよりも間接音が増え、レンジの不足も感じられなくなるため、疾走感と重量感が両立しているKS-VWS-REX.II/Nの魅力が引き出されてきます。この曲ではKS-Stage101EVO.IIよりも好印象でした。

 

「I Need To Be In Love」はカレン・カーペンターの声がKS-VWS-Frontier.I/Nよりも深みを持つようになり、歌唱力を味わえるようになりました。KS-VWS-Frontier.I/Nでは声が硬質かつ細身で、ちょっと歌の表現が浅く感じられていたのです。

 

「秋止符」はKS-VWS-Frontier.I/N、KS-Stage101EVO.II共に少し谷村新司の口が大きすぎると書いたと思いますが、KS-VWS-REX.II/Nはその2モデルよりは小さくまとまるようになりました。KS-VWS-Frontier.I/Nで感じられた声の籠もりもなく、アリスらしいヴォーカルの巧さを味わえるようになっています。

 

KS-VWS-Frontier.I/Nは良くも悪くもヴィンテージ・ワイヤーだったのですが、KS-VWS-REX.II/Nはヴィンテージ・ワイヤーの特徴は一通り備えつつもオーディオ的な次元がずっと高まっていることがわかります。

 

強いて言えば全ての楽器が前へ前へと主張してくる感があり、これが表現としての浅さにつながってしまう場合があるということが弱点でしょうか。今回クラシック系の音源は聴いていませんが、フルオーケストラなどではホールの奥行きが出にくい音かなとは思いました。

 

それでも、この一音ごとのタッチの強い音は現代的な高純度ワイヤーでは得られない独特の世界であり、その点に魅力を感じるようであればKS-VWS-REX.II/Nはとても魅力的な音に仕上がっているといえるでしょう。

  • 購入金額

    27,500円

  • 購入日

    2021年04月04日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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