私が最初に聴いたKS-Remasta製のRCAインターコネクトケーブルがKS-RCA-001/STDでした。
これはフォノケーブルとして利用した上での評価だったこと、比較対象が遙かに高価なaudioquest Cheetahであったことで結構辛めの評価となり、その結果KS-Remastaさんからより上位の試聴機が届くということになってしまったものです。
今回はデジタルケーブルを聴くついでではあったのですが、同じKS-RCA-001/STDでも構造面での改良が施されるなど音も変化しているということで、改めて聴くことにしたものです。今回はフォノケーブルとしてとしてではなく、STAX SRM-252Sへの入力ケーブルとして使い、ごく普通のRCAインターコネクトケーブルとしての評価をすることになります。
以前の試聴機と外観上の差はありませんが、ハンダ回りの加工は結構変わっているそうです。
以前の試聴機の端子回りの写真を残していなかったので、比較することが出来ないのは残念ですが…。
以前より濃厚さが出てきた
前回のKS-RCA-001/MR.IIと同様に、STAX SRM-252Sへの入力ケーブルとして使い、SRM-252Sに接続したSR-L300でそのまま聴くことで音質を評価します。
普段この用途で使っている、audio-technica製SUPER PCOCCケーブル、AT6210との比較で聴くことにします。AT6210はもう30年以上も前のケーブルですが、今でも解像度やレンジの広さ、鮮度の良さなどで現役の2~3万円クラスと十分に張り合える性能は有しています。このケーブルについては後日改めて取り上げる予定です。
ソースはデジタルケーブルの時に使った「TOTO IV / TOTO」(Friday Music盤)、「Balluchon / 小川理子」(78rpm)に加え、「Songs About Jane / Maroon5」、「Born For This Moment / Chicago」のLPから起こした楽曲も聴いています。
まず基本的な音調はKS-RCA-001/MR.IIとの共通点がみられます。低域がどっしりとしていて中域にかけて密度の濃い音ですが、高域方向が大人しく解像度も甘めで、また低域、高域共に可聴域の羽島伸びきっている感じではないというものです。
その上でKS-RCA-001/MR.IIとの違いについて言及すると、KS-RCA-001/MR.IIと比べると極端な低域寄りという感じではなくなり、中域から高域にかけてもそれなりに存在感が出てくるようになります。「Born For This Moment / Chicago」のニール・ドネルのヴォーカルはKS-RCA-001/MR.IIやAT6210と比べても実在感が感じられ良好です。ただ高域方向の伸びはやはり少し頭打ち感があり、解像度もやや甘めです。シカゴのホーン・セクションは他のケーブルではなかなか感じられないような生っぽさを出してくれる感があり好印象でした。
「Smile / 小川理子」ではKS-RCA-001/MR.IIと比べると少し低域が大人しく感じられるでしょうか。ピアノのタッチはAT6210よりは甘めで、響板の響きにはKS-RCA-001/MR.IIよりももう少し高い方の和音が加わってきます。ヴォーカルはAT6210で少し声が硬い感じがあったのですが、KS-RCA-001/STDでは適度な柔らかさがあります。
「Afraid Of Love / TOTO」はドラムやハイハットのキレが重要な楽曲ですので、さすがにAT6210の高域方向の解像度の高さや金属の質感には及びません。スティーブ・ルカサーのヴォーカルは結構良いのですが、ギターが少し甘く大人しい気がします。もう少し攻撃的な音の方がイメージに合います。
「This Love / Maroon 5」ではアダム・レヴィーンのヴォーカルはKS-RCA-001/MR.IIに近く独特の魅力があり、ドラムのキレは少し向上していてバランスが良くなります。ただドラムの音だけを拾うとやはりAT6210の方が活きが良く魅力的です。30年以上も前のケーブルであるAT6210の方が、総合的にみて現代的なバランスというのも面白いところです。
KS-RCA-001/MR.IIとの関係でいえば価格なりの順当な向上と考えて良いでしょう。他社製の同クラスとの比較でいえば、聴くソースの問題やどの方向の音を求めているかにより評価が変わることになります。
最後におまけとして、手元に試聴機が沢山並んでいる同軸デジタルケーブルをアナログ接続用に使ったらどうなるかも試してみました。KS-DIGITAL-001/SR-NVKのVer.3とVer.4.1を用意し、Ver.3を左、Ver.4.1を右に使っています。
意外なことに、KS-RCA-001/STDと比べるとまず音量感が上がります。KS-Remasta製ケーブルに共通するアナログ的な音の濃さはある程度感じられるのですが、エネルギーバランスはRCAインターコネクトケーブルよりも中庸で、音色の傾向も少し現代的な方向に感じられます。ただKS-RCA-001シリーズで感じられた「Born For This Moment / Chicago」や「This Love / Maroon 5」における独特のヴォーカルの良さはあまり感じられず、平均的にそこそこ高品質という印象になります。
性能的にはなかなか良好ではありますが、KS-RCA-001シリーズのような明確な個性が出るわけではありませんので、どちらがユーザーに好まれるかはなかなか難しいところです。恐らくKS-RCA-001の音に惚れ込んで買った人に聴いてもらうと何かが物足りないという感想になるのではないでしょうか。逆に他社製の現代的なケーブルのユーザーであれば、純粋に比較して楽しむことが出来そうです。
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購入金額
55,000円
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購入日
2024年07月08日
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購入場所
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